私は、本当の強さって、向かってきた瞬間、問答無用で打ちのめすことだと思っていたの
でもそんなこと、状況1つで、達成できないこともあるの
私はそれに気付いた時、本当に悔しくて辛かった。相手を倒す、それだけが、目に見える、私が見ることができる強さだと思っていた。もちろん、敵に向き合って、敵の力とぶつかって、それで倒す、というくっだらない次元の中の話じゃないのよ
私は、そんな、「最強」「必倒」とか言ってる脳筋連中ばかりの世界なんて、小学校の頃から反吐が出ていたから。そんなんじゃない。私は小さい頃から、すでに転掌の世界にはまっていた。でも私は、その中でも、後ろに下がりながら、いかに相手を破壊するかを考えて練習してきたの
だから、父のいう、「当てなくていい、当たらなければいい」を認めなかった。そこまで達したら、それはもう、武術じゃないって、ことあるごとに反抗して、反抗して。そして組手では、常に父を倒しにいった。
でもね、そんな私だったけど、実際の場で私の身を守ることがあった時、何もできなかった。ただ、当たらなければいい、を何とか実現できただけだった。私は何もできないと判断した瞬間、走って、2キロ近くある店まで行き、そこで助けを呼んだ。いつも強いこと言っていたけど、何もできなかったことの恐怖で、震えが止まらず、父が駆け付けた時には、恐怖から安心に変わって、泣いた
しかし実は、悔しさの方が上だった。父の胸を叩きながら、日頃この人が言っていたことの方が正しかったのだと分かり、敗北感で泣いたわ。私をかすめ取ろうなどと考えたバカサラリーマンなんて、この気持ちもわかるまい
本当の強さって、やり続けること、信じて続けること。誰も味方がいなかったとしても、野に立ち、続けることなの。
正しいやり方、とか、どうでもいいから。続けることなの。これって、いうほど簡単じゃない。
この人は、配偶者を失った時も、誰にも称賛すらされない夜も、とにかくやり続けた。私はそれをふと思い出した・。ああ、この人、真に強い人、私はそれに気づいてから、ずっと超えたい壁であり、追い続ける存在と分かった
