「転掌式」と「交手式」~昔日と近代格闘術を分けるもの

転掌式とは、斜め後方スライドの術理で構成された、転掌スタイルだ。交手式とは、敵と向き合って手を交え、打ち合う近代格闘術スタイルだ。それは明確に分けられて伝承された。

宮女開祖は、交手式になること断じて拒否した。一時でもそのスタイルに染まると、それが他の八卦掌と同じ末路を迎えると判断したからだ。

転掌式は、現代においてほとんど評価されない。護身の世界では必須の身法であるのに、護身術の世界においてもその技法は軽視される。転掌式は、昔日、転掌だけに限定されたスタイルではなかった。庶民用武術は皆、転掌式と採用していたのだ。

なぜなら、打ち合うことができなかったから。甲冑を身に付けることが許されなかった。武器を持つことが許されなかった。ただ、敵から逃げ続け、その中で活路を見いだすしかなかったからだ。その意味で、極めて不利な状況を生き抜く知恵が結晶された、大変シビアで技術的な世界である。

であるのに、敵の力とぶつからないために下がる技術を、「技術なし」と知らない者は判断する。愛好家レベルの者が言うのは仕方ないが、指導者レベルの人間が言っているのを見た時、大変驚いた。それも八卦掌の、である。

私は、交手式も指導者レベルまで修行したが、そのうえで転掌式の技術の奥深さを痛感する。四半世紀以上もずっと練習してきたが、董先師や宮女開祖の示した技法を、未だに超えることはできない。技術がないなど、とんでもないのだ。

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