水式門の筆頭格門下生であり、刀術の達人的弟子に、護身用として特殊警棒をプレゼントすることになった。
もう十数年、私の八卦掌(の刀術)を信じ、いちずに習い続けてくれた子。中国では、師弟関係は親子も同然というが、まさに親子同然。
昔、私の兄弟子から、不要となってもらった無メーカーの特殊警棒(おそらく海外メーカー品)を、女性ゆえの護身用道具としてその子にあげたことがあった。
地方在住で、かつ人通りも少ない場所を夜歩くこともあったため、護身用として、防犯上の懸念がある状況下では、かばんに入れ、大切に使ってくれていた。
譲ったその警棒は、長さも短く、(きっと)安物ゆえ、振り出した後も、頼りなくぐらぐらしていた。これでは、この子自身や、大切な人を守る状況下にあって、命を預けることなどできない。
いくらこの子が八卦刀術をこれほどまで極めていても、道具の性能が追いついてない。これほどまでに技を修め、棒操術も長けているのに、腕に全く釣り合っていない、と感じていた。
この子のように、私にも負けないくらいひたむきに練習しぬいた門弟は、ほとんどいない。私の練習量は、自分で言うのもなんだが相当のものである。しかしこの子は、そんな私にも負けないくらい練習する。
指導中に、皆が雑談をしている時でも、黙々と、基本の斜めスライドを繰り返す。一緒に練習するときでも、とにかく基本を繰り返す。
模造刀やイベント用カンフー用品にもほとんど興味をしめさず、練習するときはホームセンターで販売している棒のみ(彼女の練習量では、木製の中国柳葉刀でもすぐ壊れてしまう)。
あと、他の流派・門派・格闘技の知っても知らなくてもいい知識なんかには目もくれなかった。ひたすら基本を繰り返してくれた。そして気づいたら・・・その刀さばきは、私をも上回るほどになった。
まるで、修行時代の私を見ているようだった。そんな誇りの筆頭門弟に、「そろそろ、新しいものに換えてもいいと思うぞ」と尋ねてみた。
予想通り、「これがあるからまだいい」と言ったので、「それは記念?にとっておき、品質と強度も高いものを」と説得したら、納得して、喜んでくれた。気を遣ってくれていたのだろう。
富山にいるので、最近名古屋にオープンしたばかりの防犯・護身専門店の「ボディーガード名古屋伏見店」にて購入し、門で保有していた数本の特殊警棒を、富山本科に行った際持っていき、試してもらった。
結果、31インチカスタムスチールの、対武器想定・男性使用前提の特殊警棒がいい、ということなった。
上のつば付き警棒が、私が仕事で対野生動物想定につかっている26インチカスタムスチール特殊警棒。下が、この子が選んだ、31インチのつば無しの特殊警棒である。
31インチでカスタムスチール。重量600グラム。まさに男性用。しかしこの子にとっては、何ら問題のない重さだった。案の定、その棒さばきは、初めてこの製品を使うとは思えないほど、立派で恐ろしさすら感じるものだった。
さすが。刀術の技術が圧倒的なので、男性用の警棒であっても、八卦掌の身体操作で、いとも簡単に操り、スポンジ支柱をあらゆる角度から、激しく打ちのめしていた。
これが人間だったらと思うと・・・・ぞっとする勢いだった。これほどまでに実力が上がっていたのか・・と、心から嬉しく思った。
夜道での帰宅など、危険な状況が日常生活の中に存在する女性にとって、特殊警棒は、いざという時、我が身と大切は人を守る切り札となる。
ライトで気軽に・・・などと言わず、徹底的にこだわった方がいい。それは護身術と同じである。
こだわる点。それは、値段ではなく、操りやすさ、握りやすさ、そして長さ。グリップの形状だったりする。この中で重要なのは、操りやすさと、長さ。「重さ」については、軽すぎると護身の観点から弱みが出てしまうため、慣れて克服したい要素だ。
この子の戦法は、ジェダイ剣術のごとく、30センチの柄の世界を頻繁に自在に握り替え、間合いをコロコロ変えつつ、身体移動と併せて三次元攻撃をしてくるもの。よってツバが無くて柄の長い、シンプルな形状の特殊警棒であることが、この子にふさわしい警棒となる。
※ジェダイ剣術でも、プロペラのように回転させるのではなく、身法にて身体移動で斬っていく、という箇所がジェダイ剣術っぽい。
数本降った後、「(私の)動きを妨げないのは、これかな」と言って選んだのが、31インチカスタムスチールの柄のない特殊警棒だった。
柄の先端部分を持ち、手をだらんと下げると、ちょうど棒先が地面につくかつかない高さに落ち着く。
この子の構えは、両手を下げ、棒の先端をもって自然に立ちながら背中越しに敵を置く。下方からの撩陰刀にて、敵の動きを止め、すかさず急所に斬りつける(たたきつける)というもの。
よって、31インチ警棒のように、女性にとって少し長いかな?と思うくらいがちょうどいいようだ。
これで少し安心した。きっとこの子は、何かあっても、磨きぬいた技術で、人のため自分のために、素早く対処できるだろう。
この道具は、この子が人を、そして自分を助けるうえでの、サポーター。
よろしく頼む!