私は常に、「いかにして練習を、一人で、実戦に近い形で、毎日行うか」を考えてきた。それを実現させるための練習法は、実にたくさんある。私の動画によく出てくる、スポンジ支柱を使った対人想定練習は、多くの一人実戦模擬練習のうちの一つに過ぎない。
対人想定練習は、常に考え続けている。そしてそれを、常に弟子らと共にシェアしている。
その中で、弟子受けがよかったのが、海の中で、80cmくらいの棒を使い、振り回すことだ。当然、刀裏背走理を意識した練習とする。そのため、背身刀が多くなる。
コツは、ゆっくりと大きく行うことだ。海の外では、振り回す速度が速すぎて実感しにくいが、海の中で棒を振ると、水の抵抗で、振り回す速度が遅く、かつ重くなる。筋トレではないので、負荷をかけるつもりでは行わないこと。あくまで、刀裏背走状態になっていることを確認しながら行うことだ。
具体的に言うと、振る際、肩甲骨後ろ部分が収縮している状態になっていることである。
この練習は、刀の使い手である、弊館筆頭門弟が、こよなく気に入っていた。海辺に住んでいた夏は、よく皆で、海に入って素振りをし、空手道場の練習か何かと思った、と言われたものである(そんな言い分は、半分嘘だろうが)。

海水浴場で皆がいる時に、振り回すのは、いくら刀がほとんど海の中に入った状態とはいえ、気が引ける。練習が終わった後の、まだ誰も居ない海水浴場の、はしっこで行っていた。
私たちは、島尾海浜公園前の、松田江海水浴場~氷見窪海岸周辺で行っていた。水式館の聖地である。人もいなく、砂浜もしっかりとあり、練習がしやすかった。今は車の跡があったり、ゴミだらけ、である。前に比べて、散歩の人が増え、やりにくくなった感はある。
練習もひたすら工夫である。海の中で、八卦掌の練習をしています、という文を見たことがない。各人、それぞれ、やり込んだ人間であればあるほど、変わった練習法を持っている。しかし、その一線を越えない人間は、練習ですらも、常識にとらわれている。
型の練習で、美しく演じる、というのは、一つの典型だろう。カッコよくなければ、人前で恥ずかしくて練習できない、という。しかし美しさで拳法の実力を評価する人間の方がおかしいのだ。美しくないから実力が大したこと無い、と言っている人間は、未熟であることを自ら宣言しているようなものだ。
どうどうと、門で教えられた型を、練習し抜けばよい。見栄えなど、実戦では何ら意味を持たない。型通りに打ったことがあるのは、イノシシ相手に、透把式単換刀で、吹っ飛ばした(実際には吹っ飛んでない、重くて硬くて横にずらしただけ)時だけである。
確信と革新は、練習段階から始まる。あなたが思いついた練習方法は、とりあえず試してみるがいい。技を試すのと同じである。そこから達人への近道が始まるのだ。
