「息抜きだって強くなるために必要よ」の言葉を胸に

強くなるために、前に進む。とても大事なことは、ひたむきな姿勢。

しかし、やりすぎは時としてゼロにしかねない。燃え尽き症候群というのがいい例である。

燃え尽きなくとも、身体が悲鳴を上げることがある。十代だから、まだ無理もきくだろうが、君には、他にすることもあるだろう。取り返すために進むことで、今だからこそ味わうことができることを、犠牲にしなくてもいい。

私は、実感でこのことを言える。私自身、手を抜くことはなく、「強くなる」と言い聞かせ、ひたすらに進んできた。

途中から、「強くなるため」が、「どんなことがあっても立ち続けてやる」に変わった。目的が変わっても、ひたすら練習をし続けてきたのは変わらなかった。

練習は、ほぼ休むことが無かった。堂々と言えるくらい、ずっと練習し続けてきた。強迫観念に縛られているのもある。「オンオフをうまくわけなきゃ」とか、「休息も必要」と一番言う資格のない自分かもしれない。

清朝末式八卦掌を極めたら、二人であらかじめ決めていた全国拠点で目的を達成しながら周るつもりだった。生徒を集め、人を育て、門を大きくし、日本各地で誰もが、弱者生存第一の護衛武術を学ぶことができる環境を作ろう、そう約束していた。

私にとっては、同級生、あの人にとっては妹との約束である。たがいに真剣だった。互いにもう、若くないため、身体の動くうちにと思い、ひたすらに練習をし続けてきたのだが、私の技術向上が遅く、間に合わなかった。

あの人を失ってから、「ひたすら」の練習がエスカレートし、何度も身体各所を壊した。よく一番弟子の子供に叱られる。それでも、なんとか、ごまかしながらも今日まで進んできた。

きっと今の自分を見たら、あの時、あの頃みたいに顔をしかめて、叱ってくれるのだろうか。

「休んでもいいんじゃないの?」と心配がる顔に、「練習せずして何の水野義人ぞ」と笑って取り合わなかったあの頃の自分を心から叱ってやりたい

島尾や氷見漁港で、何度も、一緒に絵を描いた記憶がある。釣れない釣りをした記憶がある。

その都度、拳法の動きをして試す自分に、笑いながら、なかば冗談まじりに、遅咲きの達人をたしなめながら言っていた。

「釣りの時は釣りでしょう?」その言葉は、しっかりと受け継がれたようだ

北陸富山本科の前日は、あの場所にいって海を眺めるのが常となってしまった。いまは能登地震の影響による経済的事情で、富山高岡に拠点を失ってしまったため、とても遠く感じるようになってしまったから、いくと感慨深さがわき、ぼんやりとしてしまうのだ。

一人じっと考える時間が増えて、改めて思うのだが、この時間がとても大切だと思った。

心が休まる時間。富山に来たら、誰も居ない海で、なにか飲み物でも飲みながら、ぼんやりする。

前出の一番弟子の子どもが、ぼんやり時間が好きである。「たそがれ」るというようだ。彼女は、練習時は熱血闘士だが、平素はのんびりしている。オンオフを切り替える天才である。

鬼のような顔が、この時間は、とても穏やかになる。きっと私よりはるかに短い期間で、ここまで到達したのは、休息をしっかりととっていたからだろうか。

今回の富山本科前日、講習会の開催はなかったから、時間が空いた。「であるならば」ということで、三人で、浜辺を散策する。

「練習は、もうしたんだから、ここでは無しだからね」とくぎを刺される

休む時は、休め、ということである。

前に進む意欲が強いと、そこがあいまいになり、練習が重荷になってくる。休む自分を責めるようになる。

二番弟子たる筆頭門弟も、ここが大変下手である。私と同じである。強迫観念で練習をする悪いクセがある。

浜辺で、筆頭門弟と打ち合い約束組手を思わずし始めた時、「ほら、また始まった」と一番弟子。言ってるはなから、休み下手の二人はたしなめられる。

やりすぎは、治しにくい悪習慣ともいえる。疲れが蓄積される。そして、最も恐ろしい、燃え尽き症候群に陥る。強迫観念での練習へとつながる。

何が言いたいかというと、勇気を振り絞って練習をし始めた君なのに、そんな苦しい気持ちまで持たなくていい、といことだ。

行動し始めた、それだけで大変すばらしいこと。

周りは強さうんぬんで君のことを判断するかもしれない。しかしそんなものいい加減なものだ。強さの尺度なんて、それぞれある。その人が勝手に決めたその人なりの尺度だ、君はそんなもので判断されるつまらない存在などでは決してないのだ。

少しでも前に進んでいれば、周りの人間が君のことを忘れてぼんやりと過ごしている間に、君はどんどんと上に昇っていく。

「いつの間にこんなに」と、言われるだろう。その日は必ず来る。だから焦らなくていいんだよ。

日々の積み重ねこそ、最強だ。これこそが最強だ。だからもう君は最強なのである。日々自分のペースで少しづづ積み重ねることができている君は、最強なんだよ。時間の流れを味方につけているから。人が気づかないうちに、圧倒的な積み重ねをすることができるから。

私に休むことの大切さを説き続けてくれた人も、その人の子の一番弟子も、言う。

「意志の強さこそ、最強。意志の強さは達人のあかし。あなたは鉄の意志だからね、それだけで大丈夫」

きみにもその言葉がふさわしい。

『いじめ護身部|取り返すための技術解説』読んで練習してくれていること、わかってるよ。

しっかりと届いている。そのまま、君のペースでいいから、進むといい。きっと知らないうちに気づく。

「ここまで来たんだ」と。

その時を楽しみにしていよう。そこまで行ったら、誰も君に近づくこともできない。振り回し、振り切ってしまえばいい。やり続けた君だけができる戦い方となる。

それこそが、君にとっての八卦掌である。君にとっての中国拳法である。一緒に、達人になる道を進んでいこうじゃないか。これからも、動画とホームぺージの解説を見続けて欲しい。解説に出し惜しみは一切ないから。

すべては、いじめという、受け入れられないものに「NO」を突きつけ、取り返すために。私自身、まだ取り返すための旅の真っ只中であるから。一緒に進んでいこう。

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