双身槍術。槍は使わない。使うのは2m長棒のみ。

転掌の最大の利点は、武器術を通して、あらゆる身のまわりの物をもって、戦う概念が創られることだ。

もっとも代表的な武器術は、転掌刀術である。刀術とあるが、刀を用いて練習しない。転掌マスターらは、棒を利用して練習するのである。120cmくらいの、やや長めの棒を利用して、「斬る」よりも「ぶつける」練習をする。

その思想を受け継いだのが、双身槍術である。そしてここでも、両方に槍の刃がついていない、2m程度の長棒を利用して練習する。2mの長棒の中心点を持ち、按槍という基本技を用いて、移動しながら両端をぶつけて身を守る。

両端をぶつける、といっても、敵の塊に斬りかかるような、積極的な攻撃をしない。ただひたすら、集団の外に出ながら、先端をぶつけていくのである。

そして双身槍術を有効なものにするために、遊身大刀術を併せて学習する。長棒の片側先端を持ってしまえば、双身槍は遊身大刀に早変わりである。それが、単なる長棒で練習するメリットなのである。

これは、演武化・見栄え重視化・派手さが進んだ現代格闘術において、大きな波紋を投げかけるものである。実用重視と言っておきながら、派手でかっこいいものを潜在的に求めているのが現状である。映画「〇滅の刃」では、その内容よりも、派手な戦闘シーンがもてはやされており、映画(フィクション)と実際の区別もつかないド素人たちが、本当の武術家の動きを見て、「地味」とバカにする。

弊館三番弟子・双身槍術の使い手である彼女は、遊身大刀と、脇下のベルトに収めた鏢術(短いナイフ)の使い手でもある。その技法は驚くほどシンプルである。双身槍で緒戦を過ごし、移動推進力が棒に乗り移ったら、遊身大刀術でアウトレンジ攻撃を仕掛ける。敵が詰めて来たら、長棒を振りまわしながら鏢を取り出し、脇下に突き立てる。長棒を振りまわすための持久力が必要であり、誰よりも単換掌・双換掌を利用した持久走を長くこなす。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です