あなたは「護身術」と聞いた時、どのようなイメージを頭に浮かべますか?
・つかまれた手を巧みに払いのけて逃げるもの
・強烈な男性襲撃者の攻撃を、両手で防いで我が身を守るもの
・捕まえてきた、もしくは手をつかんできた男性に、関節技のような巧妙な技で外して、もしくは、身体各部位を使った奇襲攻撃で先制攻撃してひるませ、逃げるもの
このようなものを頭に思い描くでしょう。そしてこれらの技法と共に必ずと言っていいほど書いてあるのが、「力のいらない」「力のぶつからない」「誰でもできる」というフレーズです。
そしていつもこのように結ばれます。「本当に使える護身術」と。あなたは、これらの技術を、襲撃者相手に成功させることができますか。
「力がいらない」「誰でもできる」「力がぶつからない」なら、今この記事を読んでるあなたでも、その後ろにいる運動不足の御家族にも、練習次第でできるはずです。
しかし私は、これらの護身術を見ても成功させる自信がありません。わたしよりも体格のいい男性襲撃者が、理性を失った状態で私の手をつかんできたら、振り払うことはできません。私は何度も、練習をしました。練習すればできるかもしれないと思って。でもできませんでした。成功するときもあります。しかし成功の数よりも多くの失敗をします。これでは、いざという時の備えになりません。
私のように、何十年も一日何時間も、上を目指して練習してきた者でも、成功するかしないかはその時次第なのです。言い方を変えれば、その時襲ってくる「相手次第」なのです。もう一度聞きます。あなたは襲撃者相手に成功させることができますか。
できない、難しそうだ、と思ったあなたへ。ご安心ください。
「つかまれない」技術を磨くことで、「力のいらない」「誰でもできる」護身術にすることができます。私がずっと習ってきた拳法にして、八卦掌原型の「転掌」という王宮護衛官武術です。
先に言っておきます。私はこの拳法に偶然に出会ったのではありません。ここで示す護身術は、たまたまやっていた拳法を、弱者護身術にカスタマイズしたものではありません。弱者護身の道が無いか?と心の中で求め続けたからこそ、転掌のなかに弱者護身の術理を見い出し、かつそれをし続けることで、失伝寸前の転掌の技術体系を復活させることができたのです。
転掌は、王族をも守った護衛武術です。その担い手は、武術素人で身体的不利者の、宦官(去勢され蔑視対象の身分であった男性官吏)・宮女(下級漢族八旗の娘)でした。
転掌には、護衛技術に二つの段階があります。
一つは、スライド移動距離を長く取り、移動の長さで敵を離し離して、「つかまれない」で一定時間生存し、時に電撃奇襲を仕掛け気を引きつけ、囮(おとり)となって、おとり護衛する段階。この段階は、転掌経験の浅い者が行う段階です。
もう一つは、主に一人の敵にたいし、自分の攻撃は当たるが、敵の攻撃は届かない入身法によって保たれた距離を武器に並走スライドし、変則的な撤退戦で東から西から攻撃し、倒し護衛する段階。この段階は、転掌の達人レベルの段階です。
「力のいらない」「誰でもできる」護身術は、移動遊撃戦によって一定時間生存し続ける「つかまれない」技術を磨く「一定時間生存術」によって実現可能となるのです。
日本の護身術教室は、「危険を避ける」「危険に近づけさせない」啓蒙を行いながら、その技術はまったく違うものです。
そこで行われる多くの技法が、すでに敵に手をつかまれていたり、身体をはがいじめにされている状態から始まるものばかりです。つかまれないための技法を教える教室はぼほありません。あってもついでに教える程度。それがメインではありません。
転掌では、逃げ方(※本当は移動戦の仕方)、敵の足を止めるけん制攻撃の打ち方、けん制攻撃を打ったあとの移動方法、目の前に立ちふさがった敵への電撃攻撃方法までが、シンプルで明快な説明で展開されます。
とにかく「つかまらない」ことにこだわって、つかまる直前まで、なんとか回避するための技術が、堂々と正規に、伝わっているのです。
ここで一般の護身術の流れを見てみましょう。
1.つかまれた時に、つかんで拘束してきた相手に、身体の各部位で、先制攻撃する
2.一発目を打たれてひるんだ敵に、連続攻撃として、再度攻撃
3.完全にひるんだ敵に目もくれず、ひたすら人にいるとこまで離脱回避する。
その技法の担い手が「弱者」であった転掌は、「つかまられる」「捕まる」状態を最悪な状態と位置づけました。弱者にとってつかまれることによって生じる「相手次第」の状況は、「死」を意味すると考えたからです。
とにかく「生存」することを目指すために、攻撃を当てることを犠牲にしても敵につかまれない技術を開発・確立し、「自分次第」の護身術にしたのです。
ここで最もシンプルな転掌の技法をお教えしましょう。
敵が接近してきたらすぐ敵の反対側へ移動し、両者の間に物理的な間隔を作ります(これは、相手にとって感覚的なものではなく、実際に課間隔を作りだす、ということ。相手の主観による間隔は、相手次第であるため)。
頭をまっすぐにして敵に背をほぼ向けて移動します。接近してきたら、手を出して敵の攻撃軌道上に手を出し(当てる必要はない)敵の攻撃をさえぎり、すかさず身体を入れ、肩が入った瞬間に手を出し、その入り身で身体向きが変わった方向へ移動方向を変えます。この一連の動きで敵との距離は、一段と離れるので、それを繰り返し、敵の足が止まったら、ここで初めて離脱するのです(㎞単位で)。
この一連の流れこそ、転掌の単換掌であり、八卦掌でもっとも有名な型「単換掌」に相当する型です。
追撃してくる強者たる敵が、急接近し実際に攻撃してきた・・・転掌における戦いの中で最も危機的な状況をやり過ごすための、最もシンプルで最も省エネ的な方法だからこそ、「単換掌」は「転掌」「八卦掌」の基本技となり、一番早く理解すべき型となっているのです。
ここで近代格闘術的護身術を知る人などは、思うでしょう。
「でも、敵がつかんできたらどうする?」
そこでどうしても「つかまれた」状態からスタートするのは、あなたの頭の中が、その状態から離れられてない証です。つかまれた後のことが心配なら、つかまれた後の対処法を習いに行けばよいのです
しかしつかまれた後の対処法をマスターするよりも、つかまれない方法をマスターするほうのが、圧倒的に時間は短縮でき、かつ成功率も高いのです。転掌のつかまれない技術は、本当につかまれる直前、まで、回避可能な技法となっています。頭の中で、どんなことがあってもつかまれない、決意をして、その技法に精通すれば、おおよそつかまれることはなくなります。
つかまれないための具体的な方法をお教えしましょう。
つかまれないために。まず常に視野を広く保ち、自分の直感を信じることです。視界の端から自分に接近してくる不穏な人間がいたら、即座に、その接近人物と反対側へ移動します。移動方向へ追随してきたら、それは危険の明確なサインであるため、すぐさま離脱行動に入ります。「Go!」です。かなり広い間隔から行動することで、敵の思惑である「スッと」近づく意図をくじきます。これは先制攻撃ではありませんね。だれも傷つけることもない、100%合法的で、あとくされの無い先制行動なのです。
それでも「つかまれた」後の技法を知りたいあなた。ご安心ください。
日本には、たくさんの優秀なレベルの高い護身術教室があり、それらはすべて「つかまれた」後の対処法専門教室です。多くの選択肢の中から、あなたの納得できる教室を選んでください。あなたに合った教室で、「つかまれた」後の行動をしっかいと磨いて、その不安を解消しててしまえばいいのです。
「つかまれたらどうするんだ」と言う暇を利用して、そのスマホで優秀な「つかまれた」時の対処法を教えてくれる道場を探し、想いを遂げてください。
ここで近代格闘術式護身術道場を選ぶ際の、アドバイスをふたつ。
まずひとつめです。筋トレをプログラムに入れているところは、時間のない人はやめておきましょう。時間がない人、とは、すぐさま護身術が必要な人のことです。筋トレで筋骨を鍛え敵への対抗力を増すアプローチは、強者になるためのプログラムです。弱者が強者に変わるためには、非常に多くの時間を要します。今すぐ必要な方は、有事に成果を間に合わせることができません。
ふたつめ。先生が、常に相手をしてくれる道場を選びましょう。先生の模範は、技術上達において欠かすことができません。一番良いのは、自分自身が敵となって襲い掛かり、先生がそれに対応する際の動きを見続けること。それはあなたの頭の中に鮮明なイメージとなって残り、そのイメージをしながら練習することで、あなたの動きはそれに近づくのです。これは、横から先生の動きを見るのとは決定的に違います。入る角度、両者の距離感、入身法使用時の急速転身さなどを体感することで、あなたの頭が次からあなたの動きに模範の動きをさせるようにしてくれます。近代格闘術的護身術では、これに加え、自ら人の力任せの攻撃の中で技をかける練習をすることです。独りよがりを避けるためにこれは欠かせません。同時に、先生が力任せの攻撃に、どのように対処しているかを何度も見せてもらいましょう。見せたがらない先生の道場は、即止めておきましょう。できない可能性があるからです。
自信がない。行動が大変そう。そんなあなたへ。
ご安心ください。
転掌は、その技法が敵との一定の距離を保って、離れて行う技術体系であるため、要点を押させた一人練習による技術練習である程度のレベルを確保することが可能となります。独習に最適なのはこの点です。
一人練習の良い点は、人の協力を必要としないことです。自分さえやる気があれば、いつでもどこでも、気の済むまで、繰り返すことができます。おおよそ、護身術を練習する人は、一人である場合が多いものです。人を使って練習することできないから役に立たない、と決めつけるのではなく、その欠点を、膨大なくり返しで跳ね返してやればいいのです。私はずっとそのようにして、転掌を再興させる境地にまで達したのです。
下の動画で、私の単換掌の動きを、敵目線から何度も見てください。師の実際の動きを、自分が技をかけられて体験することが、最も早く上手くなる方法なのです。手を出す瞬間、実際に敵が接近する際に合わせた動き、頭の向き、姿勢。すべてがあなたにとって参考となる材料です。
やる気のあるあなたであれば、一人練習でも、本当に使える護身術をマスターできます。マスターした後の世界を考えたことがありますか。理不尽な要求に屈する必要のない世界です。大切な自分とあの人を守ることができる世界です。やる気のあるあなたには、是非この世界を味わってもらいたいと思います。
転掌はシンプルです。しかし「シンプル=簡単」ではありません。転掌の自分護衛術をマスターする際は、膨大なくり返しを要します。そうではあっても、「自分次第」の技術体系は、修行期間を大幅に短縮させることに役立っています。
昔の武術は、まともな学校教育を受けたことのない「学識レベル」の低い者が、「すぐに使える」技術体系を備えてないと、相手にされなかったのです。転掌も例外ではありません。特に転掌は、想定使用者が、武術素人の身体柔弱者に限定されていました。より一層、短期で無理のない、一切の華やかさもない、実用直結の技術体系を求められました。
理屈が複雑だったら理解できません。技法習得が難しかったら、誰も使うことができるようになりません。習得に時間がかかったら、いつ来るか分からない「いざという時」に間に合いません。
転掌のシンプル・即効性のある技術体系を信じ、そのシンプルさに飽きることなく信じ続け練習を重ねる者は、いずれ来る「いざという時」に実用レベルへの昇華が間に合い、大切な自分・大切な人を守る「必然の結果」を生じさせることでしょう。
そしてそれは、誰にでも可能なのです。あなたにも。自分を守る、大切な人を守る、その決意を抱いて行動した者に、女神は微笑むことでしょう。転掌が求める「すべきこと」は、誰にもできることだけだからです。
これこそが、すべての人に希望を与える、「本当に使える」護身術なのです。