梅雨が明け、いよいよ夏が本番となってきた。各地で、夜空を彩る花火が上がり始める
この時期になると、思い出すことがある。始めて、「護衛官」になった夏のことだ。
岡崎観光花火大会。全国的に有名な一大イベントに、遠隔地からも人がくる。その中で、子どもらを守ることになった。
八卦掌の達人だから人を守るのは任せておいてよ!と言い続けていたあの頃。「そうならば・・・」と、護衛の任務を授かった。
女の子三人の護衛。ずっと随行するのは、あまりに無粋。私は、少し離れた場所からずっと見ていた。
すごい人。会場の熱気と混雑ぶりは想像以上だった。
素晴らしい花火が次から次へと打ち上げられていく中で、大会もいよいよ佳境へと入っていく。
そうなると、がぜん不安となるのが、帰りに一斉混雑だ。始まりは、皆バラバラに来るため、混雑はさほどでもないが、帰りは一斉に、最寄りの岡崎公園駅方面に向かう道に殺到するため、戦場となる。
そのことを心配し、そわそわしている私に、あの人が穏やかに話す。いつものとおり、「大丈夫だよ」と言って。
「とうかいせん?だったっけ?護衛官の拳法なんでしょ、だから・・・式人は護衛官なんだ。大丈夫だよ、大丈夫」
ハッキリと今でも思い出す、花火に浮き上がる穏やかな顔。
護衛の任務を授かり、奮闘する護衛官に対する、高嶺の女性王族からの、いたわりの言葉。きっといにしえより、多くの護衛官が胸と目がしらを熱くしたことだろう。確信する。
なぜなら、私の胸と目頭が、湧き上がるようにと熱くなったことを今でもしっかりと覚えているから。
8月頭、富山氷見で、花火大会がある。あの時の少女らは大きくなり、技術を修め、護衛もいらない。しかし、再び任務を拝命した。
今度は、少女らからの拝命。8月5日、かけがえない存在からのかけがえのない任務を拝命したことを報告して、命にかけて。大げさ?そんなことない。
いつでも応戦できる。いつでも守ることができる。そのようになるように、ずっと準備してきた。
心はいつでも護衛官。お墨付きは、十年以上前にすでに得た。大丈夫。