2024年10月5日(土)、愛知本部愛知教室に続き、北陸本部においても、富山教室として、女性護身術科を開催します。
本日は、八卦掌第7世の一人、修行を一通り終えた者の一人として、女性護身術科について触れたいと思います。
※弊門では、女性護身術科に関する一切の名称をすべて仮称とし、術科生の写真・動画も例外なく掲載せず、個人を特定できないイラストとします。インターネット上に画像・名称が流出することを、大きな危険と捉えているからです。ご了承ください。
富山において女性護身術科に対する需要があるか否かは、正直、開催してみないと分かりません。近代八卦全盛の時代です。それ以外は、亜流などと揶揄されるのを肌で感じてきました。
よって、水式門では、10月5日(土)・11月2日(土)・11月30日(土)において、試験的な意味もこめて女性護身術科を開催していきます。
女性護身術科について、一人でも有志が駆け付けるならば、弊門代表・水野は、転掌式八卦掌の清末囮護衛の技術をお伝えします。師は昔より、利で動く人ではありません。私は指導を受けることで、それを強く感じてきました。
そして、今から以下で触れますが、弊門女性護身術科では、指導者が現在の格闘技に合わせた「護身術化のカスタマイズ」はしていません。
代表・水野が、清朝末期護衛武術であった転掌式八卦掌を、伝えられたままに、伝承する場です。よって女性護身術科は、護身教室ではなく、れっきとした中国拳法伝統門教場となります。ご理解ください。私自身も、小さい頃からずっと、そのように言われて習ってきたものです。
題名でも触れましたが、転掌式八卦掌は、護身術ではなく、清朝末期の宦官(かんがん)が使用した護衛術となります。
宦官とは、清朝後宮内で王族や王族寵姫らの身の回りの世話をするために、後宮内にとどまることを許された男性官吏です。血統に疑義を生じさせる一大事を避けるため、彼らはすべて、去勢されていました。術後の処理が不完全な時代です。身体はホルモンバランスが崩れ、排泄機能の低下も相まって、身体が貧弱となる傾向にあったのです。去勢手術による感染症等で、命を落とす者もいたほどです。
彼らは、通常の、武術を修めた男性に比べると明らかに身体的資源不利者(以下「弱者」と呼ぶ)でありました。
創始者が宦官であり、かつ彼が宮中内拳法として採用されることをもくろんで創始した武術であるため、強者の力とぶつからない、弱者使用前提の、徹底した移動遊撃戦の武術となりました。
弊門女性護身術科では、伝承の内容を「護身術化」するなどのカスタマイズ指導はしません。すでに弱者使用前提の武術として成立したものであるため、カスタマイズする必要が無いのです。清朝末期当時の、囮護衛の技術をそのままに伝えることができるのです。
通常の護衛術と違う点は、直接倒すことを主としないことです。攻防は、自分の身体を後ろに下げ、常に我の身体(肩)を入れながら、我に伸びてくる敵の攻撃手を、後ろに下がって外(もしくば内)に払いながら、いなして防いでいきます。
いなし防ぐ過程で、敵の横を通り過ぎる「機会」に、スッと手を出し、頸部急所を打ち抜きます。ここで注意してもらいたいのは、「機会」という言葉です。
積極的に自分から近づいて攻撃するのではありません。移動遊撃戦の過程の中で、転身や揺身行動の中で敵の近くを通る際、間合いがあった時にのみ、手を出すのです。これは、何度も者を打つ練習をしたり、師自身に襲ってもらう中でつかむ感覚です。
移動遊撃戦の渦中では、敵が多人数である場合も想定されるので、振り向き様に敵が現れる状況も八卦掌は想定しています。そこで移動しながらの電撃攻撃を加え、敵を殺傷します。
繰り返しますが、転掌式八卦掌は、護衛術であるため、斜め後方スライドによる対敵行動ばかりをしていると、敵に「攻撃の意図はない」と見抜かれ、敵はその攻撃を、襲うべき要人に向けることになります。これでは、護衛術が求められていた宮中内では、御用武術として採用されませんね。
よって、私たちは後方スライドしてかわしながら、振り向き様に、その場にいる敵に対し、威力のある攻撃をする必要があるのです。そうすることで、敵は要人を安心して攻撃することができなくなるのです。
「(この邪魔な宦官を)片付けてから襲おう」と考え、要人が襲われるまでの時間を引き延ばすことにつながるのです。
この「片付けてから襲おう」の段階で、鍛えぬいた移動遊撃戦を展開し、出来る限りの長き時間自分に攻撃の目を向けさせるのです。ここで囮になるのです。この囮としての護衛行動が時間稼ぎとなり、味方の救援まで持ちこたえ、王族を守ります。
しかしこの護衛法では、(相手が有利である点からも)衛者は命を落とすことも考えられます。しかし当時の、満州民族支配社会の中では、落命も名誉につながったです。
女性は、将来誰か(我が子や家族など)を愛しいつくしむ立場になりやすく、かつ、男性よりも相対的に、強者の暴力にさらされやすい立場にあります。
水式門における女性護身術科では、この「移動遊撃戦」をしっかりと伝承させていきます。私は女性の中では割と身体が大きい方でしたが、高校にあがるにつれ、男性と女性の体格差・筋力差を実感し、一層、転掌技法・術理の合理性を知ったものです。
もしあなたが、護身というものを真剣に考えるならば、映画やアニメのフィクションにとらわれず、現実的目線で進路を決してください。北陸の女性有志は、2024年10月5日(土)に、ふるってご参加くださいませ。