◆トップページ>◆ブログ「対多人数遊撃戦八卦掌という護衛護身法を求めて」トップページ>◆カテゴリー「八卦掌水式門の「強くなる動画」速報」トップページ>◇八卦掌基本歩法2「扣歩(こうほ)」:人・自分を守るための第一歩。護衛護身武術「八卦掌」基本講座
扣歩について
擺步(ハイ歩)とともに八卦掌の遊撃戦性を支える筆頭格の歩法が、「扣歩(こうほ)」となります。
八卦掌水式門では、擺步と扣歩は、歩法という枠を飛び越えて、水式門入門後一番最初に指導する最重要基本です。
その役割は、以下に挙げる通り、多岐に及びます。
- 敵の脚を引っかける
- 敵の脚を蹴飛ばす
- 敵の蹴り技を防ぐ
- どんな態勢からでも打つ。その時間合いを詰めるための基本歩法として用いる
- 鋭い転身動作を可能にするための、起動歩法にする
八卦掌水式門の八卦掌は、対多人数戦時において、どのような状況下であっても、一つの場所にとどまらない徹底した移動遊撃戦と敵に対するプレッシャーを保って攻撃させない、が大きな戦闘スタイルとなっています。
そのスタイルを実現するために。
まず、こちらの出す蹴り技は移動を妨げるものであってはなりません。
そして、敵が蹴りを出して応戦してくるのは、こちらの動きを止めるため。よって、動きを止めない防御をしなければなりません。
加えて(これが最も重要)、敵がそもそもこちらに自由に攻撃することができないようにするために、どんな態勢からでも、接近している(わずかな)時間中は、手を出して相手になんらかの防御をさせ、攻撃をやめさせる必要があります。
後ろや側面から迫ってくる、眼前の敵以外の敵に対して、臨機応変に転身動作をしてけん制する必要もあります。
これらの必要事項を前提に、扣歩の役割と用い方を説明していきます。動画の中では、それらの点について触れていますが、ここで当ブログを読んでくださる方に、もっと詳しく説明をしたいと思います。
動作解説
「扣(こう)」には、中国語で(ボタンなどを)かける・留める・はめる、という意味を持っています。その意味の通り、扣歩の第一の用法は、相手の脚を引っかけること。
この用法は、私が説明する前から、八卦掌に興味のある人であれば知っている可能性が高いくらい、有名な扣歩の代表的用法となります。
もしあなたが、八卦掌を遊撃戦武術として捉え、実行したいのであれば、扣歩で相手の脚を引っかけるためにわざわざワンモーション用意するのは止めておきましょう。
相手は、動作の止まった眼前敵からの下腿蹴り(ローキック)など、いくらでも対応できます。足を少し前に出せば、こちらの扣歩蹴りの攻撃軌道などいとも簡単にふさがれてしまいます。
よって、半斜翻身で相手の眼前で急速に逸れたり、鋭く伸びる穿掌などの射程距離の長い突き技で動きつつ、気持ちを下腿周辺からそらして扣歩でひっかけます。
移動による慣性が脚にかかっているため、引っかけることに成功すると、相手は思い切り態勢を崩すか、足を激しく痛めることになります。
この場合、発勁や、螺旋など、難しい意識など考えなくても大丈夫です(移動遊撃戦がある程度できるようになっているころは、八卦掌の勁放出や螺旋意識などは、考えなくてもできるようになっている。そもそもこれらは難しくないから、心配しなくていい)。
実は「扣」には、中国語で、かぶせる・当てはめる・レッテルを貼る・(罪を)かぶせる・拘留する・差し押さえる・(物を物理的に)押さえる、という意味があります。
私が八卦掌で遊撃戦スタイルを確立したのは、この中国語の意味を知ったことが大きかったと思います。それまでは、「ひっかける」という用法しか知りませんでした。
遊撃戦では、敵は我の移動を止めるため、ある程度戦いの時間が押してくると、蹴り技を出してくる。対多人数で不利な状況下では、相手の蹴り技術が未熟であろうとなかろうと、大変な脅威となります。
「扣」の意味を知り、「足で相手による下腿部への蹴りをかぶせて、もしくは押さえてしまえば、移動を止めてブロックせずとも防ぐことできるのでは」と思い付き、実行したら、十分対応できることが分かりました。
相手の蹴り技に対する「かぶせ方・押さえ方」は、扣歩で押さえるだけではありません。半斜して擺步で防ぐ方法もあるし、トウ脚で蹴り返す方法もあります。
しかし、扣歩によるかぶせ防御は、流れを一層妨げない自然の防御として、最も習得しやすいものでした。遊撃戦における蹴り技防御に興味のある方は、是非とも練習してもらいたい。動画中で少し触れています
遊撃戦では、単独で入り身の練習をしている時よりもはるかに激しい移動慣性が働きます。これを当門では「身体流(からだながれ)」と呼んでいます。
遊撃戦スタイルを会得するためには、この身体流を克服しないといけません。しかし身体流が生じることは、悪いことばかりではない。身体流が我に生じるということは、遊撃戦をする我を追いかける敵にも、身体流が生じています。
私たちは、事前に身体流がかかることを知っている。よって平素から、身体流が生じた状態で敵に移動しながら攻撃を当てる練習をしている。相手は身体流に対応できてない以上、こちらが対応する技術を持っているならば、身体流が生じる現実は、逆に有利となります。
身体流が生じていても、敵から大きくそれず、技が届く距離にしっかりとコントロール可能な状態を保って移動し続けるには、よりストレートな内転動作が基本の「扣歩」が大きな力となってくれます。
攻撃や防御で、敵から身体が逸れた際、その位置から攻撃するためには、扣歩で移動を内転方向へ導き、穿掌などで斜打します。この技術は何度も練習する必要がありますが、ある程度マスターできたならば、どんな態勢からでも手を相手に伸ばしてプレッシャーを与えることができ、相手に自由に攻撃させない状態を作り出すことができます。
扣歩の用い方
最後に。扣歩を、転身動作の起動動作に用いることについて。
八卦掌には、「扣歩せずして転身するなかれ」という拳訣があるくらい、扣歩を用いた転身動作の有効性が説かれています。
もちろん、扣歩なしで(例えば擺步のみで)転身することもあるし、その動作を用いた技もあります。しかし八卦掌で力を伝えるためには、この「扣歩→擺步」の動作が最もやりやすい動作であり、練習する機会も多いのです。
例)単換掌・回身老僧托鉢式・翻身拍打・回身斧脚など
また、走圏の功力が得られていない初学時における起動力向上の強い味方である「点歩」も、八卦掌に流用するならば、扣歩の変化型と言っても過言でなくなります。
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