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教程4:いじめ・暴力に立ち向かう単招式・連招式五型の学び方

(※このページは、2023年9月2日に更新しました。)

八卦掌のような移動遊撃戦の拳法は、小走りかつ、とどまらない歩法(ショウ泥滑歩・しょうでいかっぽ)をもって多人数の敵の中をかっ歩し、後方スライドで撤退しながら攻撃・防御し、振り向きざまに目の前に現れた敵に、スライドしながら離脱攻撃をする。

教程1では歩法を伝授したが、当然それだけではいじめ側の攻撃(特に複数人の攻撃)をかわし続けることはできない。歩法で移動しながら手を出して相手の攻撃をさえぎり、機を見て相手に近づいたり通り過ぎたりして弾き飛ばすことが必要である。そのために「防御→攻撃」の定番スタイルを学ぶことは必須課程となる。

その定番スタイルは、各武術に伝わる「型」のようなもの。ここで伝授する単招式(たんしょうしき)と、単招式を組み合わせた連招式(れんしょうしき)五型は、即戦力を重視するために、種類は少なくシンプルである。

そして、単招式・連招式(回身斧脚のみ少し違う)すべてが、双短棒(そうたんぼう)・鴛鴦鉞(えんおうえつ)・単短棒(たんたんぼう)・八卦刀など何らかの武器術から生まれた。つまり、単招式・連招式五型を学ぶことは、八卦門に伝わる各武器の術理を学ぶことでもあり、護衛力の格段の向上に寄与する。これはいじめを大きく跳ね飛ばす自信につながる。ここでは当然、武器を持たずに練習する。

単招式・連招式五型ともに、純然たる八卦掌である。八卦掌水式門で伝える、受け継がれてきた八卦掌である。勇気を出して立ち上がった君に、深い敬意をこめて伝授する。誇りをもって練習してほしい。きっと強くなる。

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はじめに:最短で「単招式・連招式五型」をマスターするための練習メニュー

一日の練習時間の配分方法

「単招式・連招式五型」は、そのすべてが八卦掌であるため、教程2で示した「走圏」が上達すると、素早い動きで移動できるなどのめまぐるしい効果を期待出来ます。

しかし走圏は、毎日取り組んでも上達を実感しにくい練習方法です。今まさにいじめ等の暴力にさらされている君に、そんなのんびりした方法は不向きです。

そこで、毎日一定時間走圏は練習しつつ、機動力を短期間で確保するための練習をします。それが八卦掌の扣歩・ハイ歩・退歩の連動練習と快歩とコン歩の連動練習、そして点歩です。

一日の練習時間を三分割します。一つ目は走圏にあてます。二つ目は、扣歩・ハイ歩・退歩の連動練習と快歩とコン歩の連動練習、そして点歩にあてます。そして最後の時間を、単招式・連招式五型の反復練習とするのです。

点歩練習法

  まるでスキップするかのように、片足をわずかに動かしたと同時にもう一方の足を今いる場所から大きく離す。その居着かないための歩法であるが、すばやく最初の一手を出す際にも使われる。

  最初はゆっくりでいい。脚を上げて、下ろして、下ろしたらすかさず動きたい方の脚を上げ、スライドさせる・・・という感じで、独りで動作を確認しながら練習してほしい。すぐに(3日もすれば)慣れてくる。

一時間を練習時間に取ることができるなら、20分を走圏(反時計回り10分⇒時計回り10分)、20分を扣歩・ハイ歩・退歩の連動練習・快歩とコン歩の連動練習・点歩の練習、あとの20分を対暴力五型の反復練習、という感じです。

扣歩・ハイ歩・退歩の連動練習・快歩とコン歩の連動練習・点歩の練習で機動力を素早く確保し、走圏の練習で、各歩法や対暴力五型の精度等の総合力を、下から底上げするのです。

走圏は、体幹力の向上に圧倒的な力をもって作用します。時間がかかるだけが問題ですので、扣歩等の練習で、走圏が上達するまでの時間をうまく活用します。

八卦掌の身法・敵への力の伝え方を学ぶ厳選「単招式(たんしょうしき)」技術解説

八卦掌水式門(以下「弊門」)では、護衛護身術の短期速習を目指すコースである「護衛護身科」で、八卦掌の「単招式(たんしょうしき)」をメインに練習している。

「単招式(たんしょうしき)」とは、一つの典型技を、一個づつ練習していく、技の単独練習のこと。たとえば、「進歩穿掌(しんぽせんしょう)」という技があるなら、それだけを繰り返す練習方法のことである。

単招式と連招式
単招式と連招式

単招式には、八卦掌をマスターするうえで大きな使命がある。それは、対多人数を相手にする際遊撃戦戦法で戦うための身体の使い方である 3つの身法(しんぽう) と、敵への力を伝える方法・急速な身体操作を支える方法としての 3つ発力法(はつりょくほう) をマスターするという使命である(よって各単招式に精通すれば、当然実戦でもそのまま使うことができる)。

各単招式同士を組み合わせた八卦掌遊撃戦攻防の一例を示した「連招式(れんしょうしき)」では、武道・武術を全く経験したことのない人には難しい、という欠点を感じていた。

そこでいじめ護身部では、単招式を採り入れることにした。護衛護身科ではおよそ11個の単招式をメインで練習しているのだが、その中でも、この3身法・3発力をより直接に学ぶことができるものをいじめ護身部の履修課程として厳選した。時間がない君への対策でもある。

単招式の内容に関しては、護衛護身科のそれと内容が同じであるため、単招式の解説は、護衛護身科の単招式解説ページと兼用する(必要に応じて、いじめ護身科として作り直すことも現在検討中)。動きの動画と、精細な解説写真をのせてあるので、しっかりと繰り返して欲しい。

繰り返すが、時間が無い場合、単招式だけでも徹底的に繰り返して欲しい。そして常に、3身法と3発力法を意識して練習してほしい。そうすれば、短期といえど、大きな変化と手ごたえを感じるだろう。ファイト。そして今から、取り返すための実技を学ぼう。

単招式・平穿掌|前敵スライド離脱攻撃(順勢掌理)による解説

この動画には解説音声があります

いじめと戦う際の「攻撃」の練習として、最も最初に取り組んで欲しいのが、この「平穿掌」である。基本型を見てわかる通り、動作が大きく思い切り練習ができるため、習い始めの君でも威力を出すことができる。

平穿掌を練習することで、敵の横を通り抜ける身体操作法を学ぶこともできる。いじめと戦う時、ほとんどの場合相手は複数だ。複数相手に、複雑な技などできない。平穿掌・双按連捶・遊歩連捶、そしてこの3つをつなげる翻身拍打で十分対応できるようになる。

この「平穿掌」で、体格の不利な君が、複数の敵に捕まらないで動き回ることができる身体操作法、「前敵スライド離脱攻撃(順勢掌理)対敵身法」を学びはじめよう。

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単招式・双按連捶|前敵スライド離脱攻撃(順勢掌理)による解説

この動画には音声解説があります

二回の按(おさえつける動作)で敵の突き攻撃を抑え込み、その腕の上から側頭部目掛けて捶打しつつ通り抜ける技となります。「おさえつけて防御」というシンプルな動作ゆえ、初学者でも理解しやすい攻防一体型の技となる。

いじめ護身部で指導する実戦基本技の単招式「双按連捶」は、双匕首(八卦掌版ナイフ)の基本攻防がもとになっている徒手基本技。

二回の按(おさえつける動作)で敵の突き攻撃を抑え込み、その腕の上から側頭部目掛けて捶打しつつ通り抜ける技。

「おさえつけて防御」というシンプルな動作ゆえ、初学者でも理解しやすい攻防一体型の技。

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単招式「遊歩連捶(ゆうほれんすい)」解説

八卦掌護衛護科で指導する実戦基本技の単招式「遊歩連捶」は、敵と正面に向きあわず防御として通り過ぎながら横撃して駆け抜ける移動遊撃戦の典型実戦技です。

敵を攻撃する際は、横に進みながら敵に攻撃して力を伝える遊撃戦八卦掌の三大発力「遊歩発力(ゆうほはつりょく)」を用います。

遊撃戦八卦掌における「敵を引き込みつつ斜進しながら打ち抜ける」独特の攻撃方法を学ぶために、「遊歩連捶」は最適の基本技となります。

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単招式「翻身拍打(ほんしんはくだ)」解説

八卦掌護衛護科で指導する実戦基本技の単招式「翻身拍打」は、遊撃戦渦中において側面や斜め後方から迫る敵へ、身をひるがえして攻防対応する際に用いる基本技です。

推磨式走圏で円孤を回り、身を翻す動作を繰り返す単純なものだが、技の動作自体が遊撃戦八卦掌の三大発力の一つ「翻身発力」であり、攻撃方法と身法を学ぶことができる重要基本技となっています。

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単招式「滑歩外転(かっぽがいてん)」解説

滑歩外転

対多人数戦において後方や側面からの敵に追い詰められそうになった時、走るように駆け巡る「滑歩(かっぽ)」を用いて、敵の集団の外を大きく回って攻撃を回避することを主な目的とする単招式。

目の前の敵に見せかけの攻撃をし、大きく回ってから意表を突き攻撃する目的もある。

※護衛護身科のページでも解説ページを作成していないため、動画を参考に真似てほしい(近日作成予定)。手の形は真似なくてもいいので、足の運び方をしっかりとまね、息の上がりやすい滑歩動作に慣れおくこと。

単招式「胸前換手(きょうぜんかんしゅ)」解説

八卦掌護衛護科の単招式「胸前換手」は、子母鴛鴦鉞の代表的防御入身法を徒手で行う防御攻撃一体の基本技です。

対多人数遊撃戦渦中において敵の側面を通り抜ける際、斜めから敵に入り胸前で突き攻撃を避けて(受け流して)、斜進しながら手刀を打って去っていくのが主な使用方法となります。

刀や棒における通り抜け斬り(打ち)にも使用できる使用用途の多い動きとなっているため、武器術練習段階に至っても練習する技です。

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単招式「斜進サイ掌(しゃしんさいしょう)」解説

「斜進サイ掌」は、鴛鴦鉞・八卦双短棒における体側下方斬り(逆袈裟斬り)の軌道で掌底を斜め下外方向へねじりながら打ち下ろす技です。半斜進しながら打つ練習をします。

通り過ぎる際の最後の技として、もしくは、転身動作起動時の扣歩による振り向き動作ついでに放つことができるため、他の敵が迫っていてその場から速やかに離脱移動したい場合に役立ちます。

老八掌・双換掌の「蓋手掌」の変化型であり、敵側面において変化攻撃で畳みかける際の変化攻撃の主役ともなっています。

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実戦における単招式の使い方の一例を学ぶ「連招式」解説(最新版)

単招式を実戦の中でどのように使用するか、どの流れで用いるか、その参考例となるのが「連招式五型」です。

「参考例」であるため、練習しているうちに、君にとってもっとやりやすい方法というものが見えてくるはず。その場合は迷わず、その方法で取り組んでほしい。単招式は、その動き自体がシンプルの極みであるため改変しにくいが、連招式は一つの参考例であるため、他の方法はいくらでもあるからです。

近日中に、より洗練させた連招式に変更します(変更後も、従来版は当ページ下部に掲載いたします)。すでに護衛護身科にて指導し始めているため、そちらに興味があるかたは、以下のリンクを参考にしてください。武器術との一層の同一化・遊撃戦要素の一層の強化が変更の主要点です。

八卦掌護衛護身科・連招式・第一型「胸前換手」徹底解説

子母鴛鴦鉞の側面入り身の身法から生まれた、遊撃戦渦中使用特化の実戦型。

敵の正面からではなく側面から入る癖をつけることで、防御をしやすくしている。

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八卦掌護衛護身科・連招式・第二型「双按連捶」徹底解説

「双按連捶」は、八卦掌の遊撃戦技法の基礎である「半斜翻身」・「外転翻身」の身法を用いたシンプルな実戦技法。

二回の「按」をして敵の攻撃を押さえ、打ちながら一気に通り過ぎ、振り向きざまに平穿掌を打ちながら次の敵へと向かっていく対多人数遊撃戦技法攻防型。

型に慣れたら、入身時に足技防御の技法にも慣れていきたい。

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八卦掌護衛護身科・連招式・第三型「回身斧脚」徹底解説

老三掌の一つ老八掌・順勢掌の身法を用いた電光石火の駆け抜け奇襲型が「回身斧脚」。

「躊躇すること」と「眼の前の敵へこだわること」を徹底的に避け、駆け抜け攻撃を成功させるための「間合い」を取る修練を重視する、対多人数遊撃戦八卦掌の攻防理論の代表的攻防型です。

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八卦掌護衛護身科・連招式・第四型「翻身拍打」徹底解説

八卦掌の代表的発力の一つ「翻身発力(ほんしんはつりょく)」による拍打(はくだ)から、大回りの外転翻身にて敵の集団の外へと周りながら切り込む、遊撃戦時の移動攻防技術を学ぶ型となります。

この型には、遊撃戦時に発生する身体流(しんたいながれ)の慣性による身体操作の難しさを事前に体感し、その状態でも技を繰り出すことができるよう繰り返し練習することで体幹力を鍛える、という狙いもあります。

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八卦掌護衛護身科・連招式・第五型「半斜三穿」徹底解説

八卦掌護衛護身五型・五の型「半斜三穿」は、特定の敵にこだわらない八卦掌の技の中で、眼の前の敵を倒すことにこだわって執拗に穿掌で攻撃し続ける異色の型です。

敵の手の届く位置にとどまりながら攻防するゆえに、シンプルな技で手数を増やし敵に圧力を与え続けることで防御に代える「攻撃は最大の防御」を再現した決め技的型となります。

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「連招式」解説(従来版)

第一型:胸前換手(きょうぜんかんしゅ)

相手の攻撃を外から内に内転させながらねじり、その動きによって相手の攻撃軌道をそらします。すかさず受けた手をそのまま相手の顔面に手刀にして打ち出します。

手刀で打った後、間髪をいれず、後ろ側の手で相手の顔面付近を攻撃。その後連続して、前の手で顔面付近を攻撃。

後方へ向けて拍(はたきながら)しながら、相手の弱いところ(ひざ周り)を斧脚(足裏or足の足腹で蹴る蹴り技)で蹴り上げます。

「胸前換手」ポイント

第1の型:胸前換手(抱式)動作解説

受けた手を引くことなく相手への攻撃に使うのは、中国拳法に特にみられる特徴です。八卦掌ではその特徴が特に強く、てのひらを開いて攻防する点を活かし、相手を攻撃した後に、つかんだり指先で目などを突いたりします。

特に、相手の手をつかんで攻撃することは非常に強力な技術となるので、しっかりと覚えておきましょう。つかまないにしても、受けた手ですかさず攻撃する技術も、相手にとっては避けがたい技術なので、自然と無意識にできるようになるまで反復練習してもらいたいですね。

「双按連捶」における「按(あん)」防御法よりも、胸前換手の受け方の方が、やや遠周りで、かつ日頃し慣れない動きゆえ、最初はやりにくさを感じるでしょう。しかしここで慣れておくと、無意識レベルで実行できる防御⇒攻撃の連動パターンが増えるため、ぜひともやり込んでもらいたい。

「胸前換手」実戦応用

第1の型:胸前換手(抱式)の用法

最初の受け手は、外から内へねじって受ける、だけではなく、受けた瞬間、相手の手をつかみ、引き付け態勢を崩したりする用法も考えられます。

走圏の下搨掌で指先を鍛えた八卦掌家は、すかさず指先で相手の目を攻撃するでしょう。胸前換手で受けた位置というのは、相手の顔面にある急所を狙うには絶好の位置なのです。

目を突くことは非常に危険にしても、顔めがけて指先攻撃をすることは、相手にとって非常に脅威となります。まだ指先の強化がされてなくとも、けん制の意味での顔面指先攻撃は、非常に有効でしょう。

「胸前換手」下腿鍛錬型

胸前換手・下腿鍛錬型

対暴力五型の鍛錬型について説明していきます。

通常の型に比べて若干の中腰姿勢で練習することで、下腿に対する負荷を強くし、筋力の強化を図ります。

筋力強化と技術の上達を同時に目指す型であるため、鍛錬型を練習して負荷をかけ筋肉痛が発生した場合は、その痛みが和らぐまで鍛錬型を練習するのは控えます。

筋力の強化が目的のため、筋肉の超回復を計算に入れて練習しないと、短期間で筋力を強化することができません。

あと、筋肉に対する強くするためにも、上半身・下半身の各動作は、しっかりと大きく行います。胸前換手には、敵の攻撃を払ってその手で手刀を打ち込む動作を行いながら横に大きく移動します。

この際の横移動の動作は、できる限り横移動の距離をとることにします。低い姿勢で大きく横に移動することは、脚の筋肉を激しく使う動作となるため、筋肉を鍛えたい人には充実した練習となるでしょう。

そのほかの注意点として、横払~手刀に続く掌底突きでの2連続攻撃では、掌底突きの軌道はなるべく自身の正中線上を通らせることです。

正中線上から大きく外れて打ち出す掌底突きでは、攻撃に際して感じうる「軸」を意識することができません。

胸前換手・力を伝える練習

胸前換手・力を伝える練習

基本型・力伝えの練習・鍛錬型では、移動歩幅を小さくし、じっくり行うことで、横方向への移動をしながら打つことを慣らします。

胸前換手では、最も強く打つのは、一発目の平穿(手刀)です。狙う場所は、相手の両眼球、人中(鼻下)、鼻、頸部人容(頸動脈付近)を、破壊するつもりで思い切り、相手の打ってきた腕の上を滑るようにして打ち付けます。

よって胸前換手で決める時は、一瞬で決まります。平穿に続く二発の掌底打ちは、一対一で、かつ相手に畳みかける際に行うものであるため、やや強引に押し打つつもりで行います。

第二型:双按連捶(そうあんれんすい)

「双按連捶」の型の内容

双按・一人練習型

双按は、こちらの二本の腕を使い、相手の攻撃を上から抑えて封じ、そのうえで相手の顔面部を攻撃する型です。

なぜ相手の攻撃を抑え込む動作が2回も入っているのでしょうか。それは、敵の腕を完全に封じ込めたうえで攻撃することで、(1)確実に当てること(2)相手の戦意を奪うこと(3)まれに存在するワンツー攻撃をしてくる相手への対策、の3点が理由があるからです。

上から敵の攻撃を抑え込む動作は、本能に直結した動きやすい方法であります。八卦掌の「老僧托鉢式」が、下から半円を描いて防御する技巧的な方法であり慣れるまでとっさにできないのに対し、双按の動作は、初心者でも行いやすい動作となっています。

「双按連捶」の動作説明

双按・動作解説

まず構え無くてもよいので、半身の状態となります。

敵に近い方の手で、敵の攻撃を上から下へ抑え込みます。

次に、もう片方の手で、抑え込んだ腕をさらに上から抑え、あわよくばつかんでしまいます。つかむことに成功した場合は、軽く左右前後に引っ張ります。

すかさず、最初に抑え込んだ腕を使って、顔面部もしくは頸部を掌底にて攻撃します。走圏で指先をある程度鍛えている人は、穿掌で顔面部の急所を攻撃します。

連続攻撃として2発目を、2番目の抑え込みに使った腕で実行します。

すかさず、後方から迫ってくる敵への撩陰掌攻撃。これはけん制の意味合いが強い攻撃です。ここでは、転身撩陰掌の動作練習の意味合いで撩陰掌を採用していますが、臨機応変に、拍打でも、穿掌でも、斧脚でも構いません。

「双按連捶」の実戦用法

双按・用法解説

双按の用法を説明しましょう。双按(敵の攻撃に対して2回の抑え込み防御をすること)の目的には、(1)確実に当てること(2)相手の戦意を奪うこと(3)まれに存在するワンツー攻撃をしてくる相手への対策、の3点があると言いました。

(1)については分かると思います。(2)の狙いについて詳しく述べましょう。

実際に組み手や散手(あとケンカ)をしたことがある人は分かると思いますが、攻撃できない状態で攻撃されることは、とてつもない恐怖感を植え付けられます。相手がとてつもなく強大な敵に感じるのですね。封じられた瞬間「うわっ、動けん」とパニックになり全身が焦りと恐怖で固まることを、私は何度も何度も経験しました。

この恐怖は、以後のやり取りに大きく影響します。その場だけの相手であれば、封じられた状態で攻撃されたショックに戸惑っている間に、即効で畳みかけることができます。

双按によるワンツー攻撃防御

(3)のワンツー攻撃対策は、双按の練習を徹底的に反復したうえで、実際に相手と向き合った場合に相手を全体像の状態で見ることで実現可能です。

ワンを双按一発目で防ぎ、ツーに対し、その起点となる相手の肩付近(写真の青い〇で囲ったあたり)に手を推し出すことで、綺麗によけられなくとも防御することができるのです。

格闘まんがのごとく鮮やかにさばくことなど必要ありません。そもそも、なかなかできないのです。攻撃軌道さえさえぎってしまえば、少なくとも痛恨の一撃を受けることはさけられます。攻撃軌道をさえぎられることは、今まさに攻撃しようとしている人間にとっては、極めて嫌なものです。

「双按連捶」下腿鍛錬型

双按・下腿鍛錬型

「双按」の鍛錬型を説明していきます。

双按はおそらく、対暴力五型を練習する人にとって最も取り組みやすい型であるため、早々に動作に慣れたら、双按だけを鍛錬型で練習し、脚力を鍛えていくのもいいでしょう。

中腰で行うため、双按の後の撩陰掌+弾腿の動作は、若干やりにくいかもしれません。

より低い位置で蹴りだすため、軸足となっている脚の膝の向きに注意をしてください。曲げる足より内側に膝を入れ込まないようにします。

膝は横方向からの力に弱いため、脚が開いている方向と膝の向きは同じにします。

連続掌打を伴う型では、掌打ちの射程距離を短くしないため、必ず前足に付随する後ろ足を、極力寄せるようにします。

型では二発打った後、転身して撩陰掌につなげていますが、相手がひとりの場合は三発・四発と、敵の後退する方向に追撃していく場合もあるからです。

「双按連捶」・力を伝える練習

双按・力を伝える練習

五型中、最も取り組みやすい「双按」ですが、やりやすい反面、練習において「いい加減」に行いがちです。

私自身、スポンジ支柱相手に双按を練習して、無意識レベルまでやり込んだのですが、いざ組手になると、按の抑え込みが弱すぎて、敵の突きを遮ることができませんでした。

双按の防御対象は、相手の蹴り技も対象です。突き技をよけることができない双按に、蹴り技を遮ることができるはずがありません。

よって、力を伝える練習においては、掌底突きと同じかそれ以上に、抑え込む動作に力を込めましょう。走圏における下搨掌の姿勢をある程度リラックスしてできるようになった人であれば、双按動作自体に重みが加わっているので、防御としての双按が成り立ちます。

双按においては、まず前方からの敵の攻撃を上部分から斜め前下方に抑え込むことで敵の攻撃を防ぎます。

先ほども申しましたが、この時の双按の圧力は、こちらが双按後に攻撃をする場合のことも考えて、渾身の力で行いましょう。

第三型:回身斧脚(かいしんふきゃく)

「回身斧脚」型の内容

「回身斧脚」通し演武

攻撃しながら敵の斜め前を通り過ぎていきます。通り過ぎる際、2発の掌底突きと、敵に背中を向けながら転身しつつの斧脚の、計3発の攻撃をします。

この型は、八卦掌の老八掌の型の一つである 「順勢掌」 が原型となっています。順勢掌は、敵と密接した間合いで変化攻撃をする型であり、「回身斧脚」も同じく、敵と極めて近い場所を通り過ぎながら攻撃をする型だと思って下さい。

最初の2発の掌底突きは、敵に上半身への注意を引きつけるための布石攻撃と思ってください。3発目の斧脚で、注意が散漫になってスキが出た膝付近(もしくはくるぶし付近)を、ななめ上から足裏で蹴り押して膝関節部分を破壊します。

「回身斧脚」の動作説明

回身斧脚・動作解説

最初は、何かしらの目標物(柱・木など)の前で練習するとイメージしやすいため、練習に集中できるでしょう。

目標物の前から目標物へ近づきながら、通り抜ける方向の手で一発目の掌底突きを放ち、すかさずもう片方の手で二発目の掌底突きを放ちます。

二発目の掌底突きを放ちながら、目標物に背中を向けながら回身します。

回身の動作をしながら目標物に振り向きつつ、最初に目標物に近づく方の脚で、目標物根元から50センチくらいのあたりを、蹴り押します。蹴り押す時は、足裏で膝をへし折るイメージでしっかりと蹴ります。

「回身斧脚」の実戦用法

回身斧脚・用法解説

計三発の攻撃をしますが、最初の二発は、当てることよりも、敵の意識を上半身の防御に集中させるための布石攻撃だと割り切って行うようにします。当たったら儲けものだ、くらいの考えでいいでしょう。

しかし全く力のこもっていないような攻撃では、敵は上半身へ防御の意識を集中させないでしょう。しっかりと敵にプレッシャーを与えるつもりで力を伝えていきます。

そして2発目の掌底突きを放ちながら素早く背中を見せながら転身しつつ、敵に最初に近づく方の脚で、敵の膝周辺を、斜め上方向から蹴り押します。

スネ周辺への攻撃は、敵に対して痛みを与えることはできますが、よほど強い力で蹴り押さない限り動きを止めることができません。膝周辺を、側面から斜め下へ蹴り押すことで、容易に敵の膝関節を破壊することができます。そうなると、敵は移動ができなくなります。捻挫・脱臼・骨折など大きな損傷結果を伴う危険な技となりますので、みだりに使用することを控える技となります。

蹴り押す場所としては他に、くるぶし付近や脚の付け根付近が考えられます。

くるぶし付近は膝関節あたりと同じく攻撃されると痛めやすい箇所であるため、攻撃対象として有効でしょう。膝周辺と同じく攻撃しやすい高さにあるため、臨機応変に攻撃対象を変えていきます。

脚の付け根部分、鼠径部の外側部分は、うまく蹴り押すことができると、敵自体を後方へ押し倒すことができる攻撃対象箇所です。しかし腰付近は敵も防御がしやすい場所であるため、例え上半身に防御の意識が集まっていてもすぐに反応されて防がれてしまう(身構えられてしまうため押し倒すことができなくなる)という欠点があります。

「回身斧脚」下腿鍛錬型

梁派八卦掌の老八掌・順勢掌の身法をもとにした型です。

よって敵からほんの少しだけ離れた位置を通り過ぎながら流れるように攻撃をして去っていきます。鍛錬型では、ほんの少しだけ腰を低くし、最後に蹴り押す場所も、通常型より低くします。

回身斧脚・下腿鍛錬型

実際の戦い(もつれあい)では、低い位置から敵眼前に入り込むこともあり、その場合、蹴る動作が小さくなったり、蹴る場所が低くなったりします。

五型の用法解説でも触れましたが、回身斧脚で蹴る場所として望ましい箇所は、膝関節を横からと、足首関節を横から、です。

腰を低くすれば、足首周りが若干蹴りやすくなるでしょう。しかし通常型であろうが鍛錬型であろうが、どちらの箇所も自在に蹴ることができるのがよいため、低い姿勢でも膝周りを蹴る練習もします。

腰を低くして練習することは、脚に対する負荷が高まることを意味しますが、安定もします。よって、蹴る動作について、フォームも安定させるよう意識します。

蹴り終わったあとは、すぐ次の攻撃(例えば進歩穿掌など)に移ることができるよう、後ろ足を完全に居着かせないようにします。実際に、低い姿勢から進歩穿掌などの連続攻撃をしてみると、より一層脚力強化につながります。

「回身斧脚」力を伝える練習

回身斧脚・力を伝える練習

斧脚をする前の掌底二連続突きが防御の意識を上半身向けさせるため布石攻撃であっても、力を伝える練習ではしっかりと打ち込みます。「フェイク」攻撃ではあるが、攻撃の本気度が掌底突きを通じて相手に伝わらないと、敵の防御意識を上半身に向けさせることができないからです。

掌底二連続突きを打ち込んだ流れと勢いを利用して、回身しながら蹴りを膝周辺めがけて思い切り蹴り込みます。とにかく躊躇しないことです。

外れてもいい、防御されてもいい、そう思いながら、練習時には繰り返して行います。つまり途切れることなく一連の流れで行うのです。最初の掌底突きを行った以上、最後の蹴り込みまでやり切るのです。

蹴る動作のイメージは、ここでも「押し込む」というイメージで蹴ります。パーン、と乾いた感じで小突くのではなく、蹴りながら押し込み、膝関節あたりをへし折る感じで蹴り込みます。

その蹴り方であれば、相手が腕や脚で何らかの防御をしていても、腕や脚そのものにダメージを与えることができます。防御された場合の保険になるのですね。防御の壁をぶち抜く感じでイメージします。

掌底の後、躊躇せず蹴りに移行できたならば、ほとんどの敵は反応できないか、もしくはしっかりとした防御態勢を取ることができません。

仮に蹴り技を失敗しても、上下コンビネーション攻撃の衝撃を与えることができ、多大な脅威を感じさせることができます。中途半端になぞるように技を繰り出しても、その結果は得られません。

思い切り行うためには、なるべく早い段階で動作を覚え、細かいことを気にすることなく、どんどんダイナミックな動作で練習をしていくことです。でないと、いつまでたっても相手の上っ面をなぞるような練習しかできません。

第四型:翻身拍打(ほんしんはくだ)

「翻身拍打」の型

翻身拍打:一人練習型

「翻身拍打」基本型

多人数を相手に戦っている時、どうしても前の敵を処理しなければならない、しかし後ろにも敵がいる。その場合、前の敵に対しながら、後方の敵へも対処せざるを得ない。

映画やまんがでもないし、そのようなことは現実的ではない。その状況の中で、眼前の敵にプレッシャーを与え、すばやく後方への敵に本格攻撃を加える。その時に使用すると有効なのが、この「翻身拍打」です。

眼前の敵に掌底なり穿掌での攻撃後、身を入れ替えることなく、斧脚にて敵のひざから下を攻撃します。身を入れ替えないのは、翻身拍打が想定している状況では、身を入れ替えている時間がないからです(※入り身をしている余裕がある場合はしてもよい)。

翻身拍打・別法:一人練習型

「翻身拍打」別法

手返しのよさを求められる「翻身拍打」。眼前の敵の攻撃が下方から来た場合の別法を示します。

基本的に翻身拍打は、敵の攻撃を横払し斧脚攻撃するが、下方からの敵の攻撃を上から抑えて防ぐ場合、斧脚よりも足背足裏蹴りの方が素早く攻撃できます。

緊急事態における型である翻身拍打は速さが命であるため、横払い翻身拍打とあわせて、是非何度も練習して下さい。

「翻身拍打」基本型動作解説

翻身拍打・動作解説

翻身拍打は、移動戦(遊撃戦)の真っただ中で眼前の敵と後方の敵の両方になんらかの対処が必要な場合に繰り出すことを想定した技です。よって「構え」から繰り出すことを考えていません。

敵の攻撃(主に手技攻撃)に対し、横払い、もしくは上から下への押さえつけ(按)で攻撃軌道をそらし、そらされて態勢が崩れた相手の膝頭付近に斧脚(脚を外転させて足腹で蹴る蹴り技)を思い切りくらわせ、間髪を入れず相手の顔面付近に掌底にて打撃を加えます。

※敵の攻撃に対し、上から下への押さえつけて防ぐ場合は、蹴り方は、足背から足裏を使って、上から下へ抑えつけるように攻撃します。

その後、一気に身体をひるがえし、後方から来る敵の方向めがけて、手の甲で、翻身する勢いを利用して「はたき攻撃(拍打)」を行います。

「翻身拍打」基本型・別法 用法解説

翻身拍打:用法解説

翻身拍打は、動作解説からも推測できるように、「出会い頭攻撃・不意打ち・けん制」の三要素で成り立っています。

敵に囲まれつつある圧倒的不利な状況から、その身を避難させるために、出会い頭・不意打ち・けん制の三大奇襲攻撃を利用します。眼前の敵の攻撃を近付きざまに払ってためらわず蹴り上げ、掌底攻撃で畳みかけ、後ろも確認しないままに振り向きながら手の甲で叩く。

大事なことは、着実堅実な攻撃を、この型に求めないこと。一動作づつしっかり、後方確認、相手の虚を突き・・・などの計画的攻撃スタイルでは、この状況では痛撃をくらってしまいます。

翻身拍打・別法:用法解説

眼前の敵への斧脚攻撃・掌底攻撃は、当たらなくてもいいのです。とりあえず流れの中で出し切ってしまいます。後方の敵への拍打も、後方敵の動きを止めることができればいいのです。

翻身拍打は、五型の中で、対多人数遊撃戦八卦掌の考えである「眼前の敵にこだわらない。固執しない。駄目なら次へ。」の戦闘理論の影響を最も受けた型でしょう。

「翻身拍打」下腿鍛錬型

対多人数戦時において、前方と後方敵への対処が必要な緊急事態時の「咄嗟(とっさ)」に出る技から編み出された型なのですが、鍛錬型では、どっしりと気持ちカクカクと行います。

翻身拍打・下腿鍛錬型

最初の、横方向へと敵の攻撃を思い切り払う動作は普通の腰に高さで行う練習の時の払いよりも、気持ちダイナミックに行うこと。腰を低くしていて身体のバランスは安定しているので、かなり大げさに行ってもバランスを崩しくい状態になっています。よって、出来る限り大きく横に払うことにチャレンジしてみましょう。

実際に敵の攻撃を払う時は、相手も格闘の最中に湧き上がるアドレナリン大放出による興奮状態のため、手脚はガチガチに固まっています(特に、顔前に出されている相手の手・腕は、ガチガチに固まっている)。

相手が腕力が強いわけではなく、ただ興奮状態により力んでいるだけなのですが、なだらかに滑らかに優しく払う動作を行っていたのでは、無駄に力んでいる手腕ですら、払うことはできません。

「脱力の中に、意識の通った強さ・固さで、敵の力とぶつからずに・・・」という状態は、多くの時間を費やしたうえでないと達することができない熟練境地の状況であるため、対暴力五型を習い始めたばかりの皆さんでは難しい。よってここでは、物理的に力強く行うことで敵の攻撃を払う、という意識の練習をするのです。

安心してください。通常型・鍛錬型を何度も練習することで、余分な力だけが抜けていくものです。

そうなると自然とスピードも上がっていくため、ここでは(1)横に払う(2)足裏で相手の膝を蹴り押す(3)順歩で掌底突きをする(4)翻身して拍打する・・・の一連の動作は、ゆっくり、低く、かちっかちっ、と確かめるように行うこと。

各動作にそれぞれ時間がかかることで、より一層下腿に負荷をかけることができます。

翻身拍打・力を伝える練習

翻身拍打・力を伝える練習

翻身拍打は、対多人数戦における緊急対象の技であるが、最初の蹴り技が最も重要のメイン技であって相手の膝を壊すような勢いで激しく蹴る、という狙いもあるため、ここは力強く蹴り上げると割り切って練習します。

一人で型を練習する場合には「力強く膝回り関節を壊すつもりで・・」と言われてもなかなかイメージはできませんが、壁や木を相手にすれば、力強く蹴る際の加減や距離感等を実感できます。蹴り技で壁を蹴る際は、特に角度に注意します。しっかり足裏でハンコを推すつもりで蹴り押します。

蹴り技に続く掌底は、実戦ではさほど強く打つことがない(じっくり強く打ってる暇がない)ため、けん制の意味合いを込めた掌底突きとなります。

しかしただ手を出すだけの攻撃では、相手の動きを止めることができません。そのため、力を伝える練習においては掌底突きも「虚」ではなく「実」の勢いをもって練習してほしいと思います。

回身老僧托鉢式においても同じことです。「とりあえず反対に向きながら打つ」と言ってるが、それは適当に格好だけでも打つ、よりも、それなりに力や攻撃意思が伴っていた方が、相手にとって脅威となります。

翻身拍打は、囲まれた時の遊撃戦の様相を呈すため、攻撃時の後ろ足の足寄せは、しっかり行いましょう。でないと、その場に居着くことになります。力伝えの練習の際は、しっかり打つことを意識するため、脚を踏ん張り居着きやすいので注意します。

第五型:半斜三捶(はんしゃさんすい)

「半斜三捶」型の内容

「半斜三捶」通し演武

敵の攻撃を、八卦掌の老八掌「単換掌」の「老僧托鉢」という受け手で受けます。

受け手を上げるのにほんの少しタイムラグを持たせて足裏で相手の膝を蹴飛ばし、間髪入れず三連打の掌底突きをくらわします。

連弾攻撃は他の型(胸前換手・双按)でもありますが、この型では、連弾がメインとなっています。連弾で倒す予定のため、珍しく眼前の敵にこだわって攻撃をし続けます。

「半斜三捶」の動作説明

半斜三捶・動作解説

敵からの攻撃を、八卦掌の「老僧托鉢」の受け手で受けます。受けるために手を上げるのに付随して脚を引き上げ、受けた直後にその脚で膝を蹴ります。足裏部分で、膝を蹴り押すイメージです。

脚を地面に下ろしつつ、まず一発目の掌底突きを行います。一発目は、老僧托鉢を行った手と反対側の手で行います。独立歩の状態で打つため若干不安定ですが、当型の練習の際はなるべく安定するように心掛け練習します。

二発目を打つ時には、すでに蹴った脚は地面についているので、今度はしっかりとした二発目の掌底を、相手の顔部周辺に打ち込みます。

そして、二発目を引くと同時に三発目の掌底突きを行います。この時も、執拗に顔部周辺を狙っていきます。

「半斜三捶」の実戦用法

三推弾腿・用法解説

半斜三捶は、眼前の敵に固執しない遊撃戦八卦掌の原則から外れています。しかし八卦掌にも、老八掌の「三穿掌」のように連打攻撃で眼前の敵にこだわって攻撃をする型があります。つまり、その時の状況に応じて、連打する、しないを決定するのです。

敵が一人しかいない場合で、かつ力や体格に大きな差がない相手ならば、多少敵前で攻防しても、不利になることは少ないでしょう。組手や散手では、一発目・二発目は頻繁に防御されてしまいますが、三発目まで放つと高い確率で攻撃に成功します。

足蹴りを一発目とすると、半斜三捶では、四発の攻撃を一気に行うことになります。「三連打必当ての法則」からすると、四連打はかなり有効だと分かります。

しかし一人の敵に四連打の攻撃をすることは、後方や側面からの敵を受ける可能性を高めます。よって、半斜三捶で追い詰める時は、倒す(戦闘不能にする)という強い意志をもって打ち続けましょう。

なぜなら「半斜三捶」には、手に武器を持った相手の手を掴み、その手を決して離さない状態で、倒れるまで渾身(こんしん)の力を込めて頭部を打ち続ける、という用法の意味があります。この用法が想定する情況とは「倒さなければ相手の持っている武器で反撃されてしまう」状態なのです。よって三推弾腿では、「倒すか倒されるか」の気構えで打ち付けます。

「半斜三捶」下腿鍛錬型

「半斜三捶」は、独立歩の状態で蹴りを入れ、すかさず掌底突き三連打をする型のため、姿勢を低くする練習としては難易度が上がります。

半斜三捶・下腿鍛錬型

両脚で立つ際に腰を低くする場合は動作の安定化へとつながるのですが、片足立ちの状態では、筋力に対する負荷がかかるため、脚全体の筋力に乏しい場合不安定な状態となります。しかしこの状態を逆手に取りましょう。

低い状態で、蹴り+掌底三連突きの最中、なるべく上体をフラフラさせないようにします。ここで重要となるのが、下丹田周辺(へそのすぐ下まわり)の安定化です。

八卦掌の基本練習「走圏」でもっとも重要となる「基本姿勢」の要求。その要求をマスターするのには時間がかかりますが、以下の点はなんとなくでもいいので頭に入れておきましょう。

  • 肩をリラックスさせる。肩をいからせない。
  • 肘を楽にする。「肘を上方向に釣りあげて腕に余分な力が入る」という状態を避ける
  • 腰をそらない。
  • 胸~下腹部の前は見えない空気のかたまりを抱いているかのような感覚で、くぼませる

「半斜三捶」・力を伝える練習

半斜三捶・力を伝える練習

半斜三捶は、全攻撃が「実」であるため、力を伝える練習でも、全攻撃(蹴りも突きも)同じくらいの強さで打ちます。

片足の状態での「実」打ちであるが、攻撃動作に入っているため、動作は安定して打ちやすい。片足・・・という先行イメージに反して練習しやすいです。

他の三推弾腿練習でも説明したが、執拗な連続攻撃、という、型の狙いを理解してほしいです。つまり、最初の一発目が相手に当たっても、ダメージを受けてサンドバック状態になった相手にとどめをさすつもりで、続く連弾を力を込めて打ち込み練習すること。

残酷な説明ですが、例えば刃物を持った相手に首尾よく攻撃を加えることに成功した場合に、その機を逃さないために、引き続く攻撃で確実に倒す練習をしておく必要があります。

とどめをさす練習というのは、日ごろからしていないとできないものです(緊張状態でできる動きは、日ごろから練習している動作のみ。それであってもできない場合もある)。

半斜三捶は、各連続攻撃にとどめの意味合いが含まれているため、力を伝える練習で各弾を力を込めて行えば、二つの練習効果を得られます。

とどめ・・・という狙いもあるため、攻撃対象は、顔面から頸部周辺となります。しかし学校や日常生活中の護身として使用する場合、特に頸部の急所を力を込めて攻撃することは、相手の生命・健康な身体を奪う重篤な結果につながります。

よって腹部周辺を打ち込む練習もしておくと、良いでしょう。腹部を掌底で力強く打つ場合は、掌の指を立てて打つことは手首を痛める結果につながりますので、指を寝かせて打ち込みます。

腹部周辺の攻撃対象として最も効果的なのが、いわゆる「みぞおち」でありますが、敵の正中線上への攻撃は、本能に基づく無意識の防御のため(対象が素人であっても)ほとんど当たりません。よって、脇腹を狙います。だらんと腕を垂らした時の肘が接する当たりを狙います。

弱者生存の護衛護身武術を極めたい方へ~清王朝末期頃の昔日の八卦掌を国内で唯一伝える水野先生の道場「八卦掌水式門」入門方法

1.弱者生存第一の「単換掌の術理」に貫かれた成立当初(清王朝末期頃)のままの八卦掌を国内で唯一追求し指導する、稀代の八卦掌家

八卦掌水式門代表・水野の写真
八卦掌水式門代表・水野義人先生

八卦掌水式門で八卦掌第7代を掌継させていただいた遠隔地門下生のsと申します(先生の指示で仮称とさせていただきます)。代継弟子の一人として、八卦掌水式門の紹介をしたいと思います。

石川県・遠隔地門下生

八卦掌水式門は、成立当初(清王朝末期頃)の「単換掌の術理(単換掌理)」に貫かれた「生存第一スタイル」の八卦掌を指導する、国内で極めて数の少ない八卦掌伝統門です。

八卦掌第6代の水野先生の伝える八卦掌は、敵前変化攻防の近代スタイル八卦掌が主流となっている現代において、対多人数移動遊撃戦による弱者使用前提撤退戦を貫いた異色の存在となっています。

先生の伝える八卦掌の最大の特徴は、やっぱり、「単換掌の術理(水式門で先生は、「単換掌理」と呼んで指導しています)」に徹している点。

「単換掌理」とは、敵と接触を極力さけ、敵の力とぶつからない方向へ移動しながら対敵対応をする術理です。間合いを取り、逃げることを正当な戦法とし、力がぶつからないため、女性やお子さん・お年を召した方にとって最も現実的な護身術となっています(※よって水式門では、私を含め、女性の修了者さんが多いです)。

単換掌理を理解するには、修行の初期段階に、掌理に熟練した指導者による対面での練習を通して対敵イメージをしっかりと構築することが必要不可欠、だと先生は言います。

「単換掌理系の技は、対人走圏で養った移動による間合い取りと、敵の引きつけ引き込み技術、転身技術とで実行する技。現実的で明確な敵のイメージを持って練習しないと、実戦でとまどうことになる」は先生の口癖ですね。

相手の侵入してくる角度や強度、そして敵動作に対する自分の身体の使い方を、先生の技を受け、または先生に試し打ち(!)をしながら自ら身体を動かして学んでいく必要があります。それは初心者には果たせない役割。水式門では、先生がいつも相手をしてくれるし、新しい技を始動するとき、使い方もしっかりと見せてくれるから、一人の練習の時でも、イメージが残るんです。

よって最初から全く一人で行うことは、リアルな敵のイメージが分からない点から、大変難しいものとなります。この問題は、私がこの場で、先生の指導を受けたほうがといいと強くすすめる理由となっています。

私も遠隔地門下生。先生が富山に来たときは、集中的に相手になってもらいました。石川県という遠くであっても、先生の教え方のおかげで、ブレずにここまで来ることができました。

単換掌理に基づいた弱者生存第一の八卦掌を指導する八卦掌の教室は、全国にほとんどありません(それか、公にしていません)。弱者使用前提がゆえの現実的方法で自分を守る武術に興味がある方。力任せの攻撃にも負けない八卦掌を極めたいと思う方は、水式門の扉を叩いてください。水式門なら確実に、弱気が生き残るための技術を学ぶことができます

2.八卦掌水式門は、入門審査を通った者が門下生となることができる純然たる「伝統門」道場

八卦掌水式門代表・水野の写真
八卦掌水式門代表・水野義人先生

八卦掌水式門は、代表である水野先生が、八卦掌第5代(梁派八卦掌第4代伝人)である師より指導許可を受けて門を開いた、純然たる「伝統門」です。それゆえ、入門資格を満たしているかを判断する入門審査(問いあわせ~体験までの態度を見ての総合判断)を、入門希望者すべての方に例外なく行っております。もちろん私も受けたうえで入りました。

水野先生が指導する八卦掌は、護身術であれど、一部に当然殺傷技法が伝えられ、昔の中国拳法と同じく実戦色が強い八卦掌。誰それ構わず指導することはいたしません。

特に先生は、拳法を始めた動機も真剣。自分を律することができない人間に伝えてしまい、それで人が傷つけられてしまう事態を招くことを、心から心配しています。

よって、以下で掲げてある「入門資格」を満たした人間だと判断した場合にのみ、先生は受け継いだ技法をお伝えしています。「八卦掌の伝統門として、門が負うべき当然の義務と配慮」。これも先生が常に話す口癖ですね。

水式門には『弱者生存の理で貫かれた護衛護身術「八卦掌」を日本全国各所に広め、誰もが、大切な人・自分を守る技術を学ぶことができる環境を創る』という揺るぎない理念があります。

先ほども触れたように、己を律することのできない人間に伝えてしまうことは、技法が濫用され第三者が傷つく事態を招き、理念実現に真っ向から反する結果を生んでしまいます。

水野先生は、門入口を無条件に開放して指導し門を大きくすることより、たとえ審査を設けて応募を敬遠されたとしても、少なからずいる暴力的・非常識な人間に伝わってしまう事態を避けることを重視しています。

ここまで書くと、なかなか入ることのできない難しい道場だと思うかもしれませんが、そんなことはありません。審査はありますが、一般的な常識と礼節、思いやりがあれば、心配する必要は全くありません

指導を受けてみれば分かるのですが、先生はいつも、門下生のことを考え、熱心に指導してくれ、怒鳴ったりもなく、笑顔です。安心してください(無礼な態度や乱暴なふるまいには、ベテラン・初心者関係なく厳しいですが)。

審査を通過した正式門下生には、「誰もが大切な人、自分を守ることができる八卦掌」の全てを、丁寧に、熱心に。真剣に教えてくれます

迷ってるあなた。水式門には、積み重ねるならば、弱者と言われる者でも高みに達することができる技術体系があります。先生の温かく熱心な指導で、「守る」強さを手にしてみませんか。

3.入門手続き

八卦掌水式門の正式門下生となるためには、個別指導科における近代八卦掌コースを除いたすべての科において、仮入門期間(体験入門日から一カ月経過もしくは体験入門を含めた3回の練習参加)を経る必要があります(指導内容が他人を傷つける技術を含むため)。この期間を経過した後、入門を希望する方は、以下の手続きに従い、入門申請をしてください。

手順1 申込フォーム記載申請と体験入門参加

各科とも以下の問い合わせフォームに必要事項を記載のうえ体験入門を申請する。

手順2 本入門希望者は、「本入門申請フォーム」より、本入門申請をする

体験入門を含めた仮入門期間経過後、本入門を希望する方は、各科共通の 本入門申請フォーム より、本入門申請をしてください。本入門を認めるかどうかの判断をさせていただきます。

「入門資格・入門時誓約事項・入門時特記事項」については、こちら にて必ず目を通し、理解したうえで本入門申請をすること。

「入門資格・入門時誓約事項・入門時特記事項」

本入門申請意思受領後、本入門審査を経て、結果のメールを送信します。本入門許可者には、入門案内のメ―ルを送信しますので、メール文中に記載されている弊門指定の銀行口座に初月指導料を振り込んでください。

※入門許可メール送信後、送信日を含めて14日以内に入金がない場合は、入門の意思がなくなったと判断し、申請はなかったものとさせていただきます。

※本入門が許可されなかった場合についてのクレーム・理由開示要求には、例外なく対応いたしませんのでご了承ください。

手順3 「入門誓約書」のダウンロード

下のリンクにて「入門誓約書」をダウンロードし、内容を確認。誓約書の内容に同意するならば、同書類を印刷し、必要事項を記載の上、本入門後の初回練習時に持参する。

「入門誓約書」のダウンロード

※ダウンロードができない方は、shiroikukmoajisai@gmail.com 宛にご連絡ください。

手順4 練習会に初参加

上記「入門誓約書」を持参の上、グーグルカレンダー記載の希望各科の練習会に参加する。

※「入門誓約書」を必ず持参すること。持参し忘れ2回目の者には例外なく指導しない。ダウンロードができなかった理由で持参出来なかった者は、必ずそのむねを告げること。

※カレンダーが、参加する科のカレンダーであるかどうかを、しっかりと確認すること。

※各科とも、参加希望日の前日の24時までに、に、参加メール「例文:○○です。○○日参加します」とメールを入れること(場所変更の可能性があるため)。

八卦掌水式門富山本科イメージ