単招式・双按連捶|前敵スライド離脱攻撃(順勢掌理)による解説・はじめに
単招式「双按連捶」は、以下の技を、敵前をスライド離脱しながらおこなうことで型が構成されている。
- 1.双按(そうあん)
- 2.連捶(れんすい)
移動遊撃戦の八卦掌で多用される、「遊歩発力」を用いた「通り抜け攻撃」の代表技となる。
移動遊撃戦渦中においてトップスピードになった際多用する、按・捶共に、一回しかおこなわない応用技「一按一穿(捶)」の原型技となっている。清王朝末期頃スタイル八卦掌の昔日の達人は、これ(一按一穿)が百発百中で出来た。通り抜ける際、敵は突然急所を突かれ、卒倒することになる。
「捶」には、敵に攻撃を当てる可能性を高めるために、打つ順番に決まりがある。何気なく、順番を決めているわけじゃない。 全て、実戦において敵に当たりやすいことを考えて型が出きている。昔は、この技術の上手い下手で、命を守ることができるか否かが決した訳だから、当然そこまで考えられている。
「順番どおり」を無意識におこなうことができるまでが、双按連捶の最初の目標となる。
難しいことや、未来の不安など考える必要はない。まず、この順序を、無意識レベルで実行できるまで、やり込んでみることだ。
単招式・双按連捶|前敵スライド離脱攻撃(順勢掌理)による解説・基本型による練習
動作の流れ
押し広げながら敵を打って去る、八卦掌独特の攻撃身法と発力法が、「斜進翻身法」と「遊歩発力」となる。
双按連捶では、敵横を斜めスライドしつつ通り過ぎる身体操作法「斜進翻身法」と、押し広げ敵に力を伝える方法たる「遊歩発力」を意識して練習していく。型を通して練習した方が、実戦でのイメージを持ちやすく、実際の実戦に直面した際、とまどうことも少なくなる。
移動遊撃戦という、当たりにくい戦い方の中で、少しでも「捶」が当たる可能性を高めるため、基本型練習の段階から打つ順序を守って練習していく。この順序は、水式門代表が、膨大な時間と経験のなかでたどり着いた信念そのものである。安心して身につけるとよい。
順序が逆だと、どういった不具合が生じるのか?打つ順序が逆だと、一発目は敵の正面から打つことになるため当たらず、二発目は、自分が通りすぎてしまっているため届かない。
打つ順序を守ると、敵から「捶」の軌道が見えにくくなり、当たる可能性が上がる。
分解写真による動作解説
双按
手を下げた自然の状態から、右手をほんの少し挙げ斜め前方へと身体を移動させ始める。慣れてきたら挙げないで抱式の状態からそのまま下げることもある。進行方向は、平穿掌・撩陰掌・半斜三穿と同じ方向である。
予備動作を極力行わず(反動を利用せず)始動させること。そしてなるべく大きく斜め前に移動していく。
遠目で敵全体を見据え、動いたと同時に、とにかく前に按を出していく。この動作は無意識で出ないと間に合わない。そして、綺麗に敵の攻撃手を抑えこもうとすると、外された時のショックも大きい。
挙げた手を、少しも止めることなく、そのまま下へ下ろし敵攻撃の一発目を上からおさえつける(小按)。
小按をしつつ、右足を大きく斜進させること。小按だけで攻撃をかわすのではなく、身体も斜進させ、身体ごと敵の攻撃照準から積極的にズレていき(敵に、照準を定めにくくして)自分を防御するんだ。
二回目の按始動。左手を挙げつつ身体を前足側に寄せながら身体も移動させていく。
二回目の按は、挙げた手を楕円の半円の孤を描いて下ろすイメージとなる(劈按・へきあん)。形意拳(けいいけん)という拳法を知っているだろうか?形意拳を練ったことのある人は、五行拳(ごぎょうけん)の劈拳(へきけん)の繰り出し軌道をイメージして練習すること。習ったことがなければ、「挙げた手を楕円の半円の孤を描いて下ろすイメージ」を持つこと。
劈按をしながら足を擺歩(はいほ)にて前進させていく。
この時、前足にクロスしてかぶせるように出すことで、股間がいたずらに開いてしまうのを防ぐ。
※股間が開けば、敵のなりゆきの攻撃が不意に我の股間に当たってしまう、という危険が生じる。
劈按を推し出す際の目標点は、一発目の攻撃がされた腕と反対側の腕の肩(腕の付け根付近)となる。
敵のワン・ツー攻撃の「ツー」まで初心者が鮮やかに受けることは難しすぎる。よって、、ツーが繰り出される腕の起動点である肩に劈按をとにかく出すことでプレッシャーを与え(打ちにくさを感じさせ)、ツーの威力や精度を落としてしまうんだ。
連捶
一発目の捶(掌底突き)始動。おさえつけた敵の腕の上から連続して捶掌を側頭部目掛けて放つ。
その際、その場にとどまって打つことはNGとなる。その場にとどまれば、体格等に勝る敵に捕捉され、力任せの攻撃による反撃を喰らうことになる。また、後方から接近してくる敵に捕捉されるという、最悪の結果を引き起こす。
一発目の捶掌。敵に当たらなくても構わず打ち続け完結させる。
打つ際は、前進しつづけ、とにかく歩みを止めない。足を引き上げることのない角度の浅い擺歩にて、斜め前へと移動しながら敵の側面を通過しつつ捶を連打していく。
二発目の捶掌始動。一発目と二発目の間は動きは一切止まらない。電撃戦である。
二発目の捶掌で打ち抜く。二発打って当たらなくとも、構わず次の攻撃へと移っていくことは忘れないで欲しい。
当たらなくても捶を連打しておけば、その敵に対するプレッシャーは十分かけたことになる。二発以上打つことにこだわると、後方からの敵に捕捉される危険性が高くなる。
基本型練習の段階では、打ち切った際は、三尖相照を意識する。しかし形意拳のようなしっかりした「三体式」を取る必要もない。
移動遊撃戦の際は、当然この後も絶え間なく移動攻防が続いていく。ここで必要以上に定式姿勢をとることにこだわると、ここでその場に居着く癖が付いてしまう。
単招式・双按連捶|前敵スライド離脱攻撃(順勢掌理)による解説・歩きながら打つ練習
歩きながら打つ練習は、通り過ぎる際に素早く打ちづづける技術の土台を得るために練習する。移動しながら打つ技術は、特殊技術である。練習しないとできる技術ではない。
通り抜けの時間はほんのわずかであるため、「按」も「捶」も畳みかけるようにおこなう必要がある。先ほどもいった、「電撃戦」なのだ。
移動しながら目標を正確に射抜く命中率をここで高めよう。
歩き打つ練習の次は、ショウ泥滑歩の速さで移動しながら打つ練習となる。より速い通過速度での命中率を高める。双按連捶では、ショウ泥滑歩での移動のみである。
ショウ泥滑歩における練習では、按をする相手と、捶を打つ相手が違っている場合があることも頭に入れておくこと。むしろ、打つ相手が、按・捶ともに違うことの方が圧倒的に多い。
単招式・双按連捶|前敵スライド離脱攻撃(順勢掌理)による解説・目標物を使った対人想定練習
対人想定練習は、「自分の攻撃は届くが、敵の攻撃は届かない」間合いでの攻防を実行し得る技術を得るため練習となる。
捶打では、双按連穿における穿打に比べ、射程距離は大きく縮まってしまうのが現実である。同級生を穿による指先で突くのは、重大な結果を招きかねないため、ここでは捶にて練習していくこと。
捶にも、メリットがある。それは、届きづらくなる反面、しっかりと力を伝えることができるメリットである。よって、当てるために、とにかく目標物を使って反復練習していこう。私も、この練習方法で、独りで練習している時間が圧倒的に多いにもかかわらず、実行してきた。
空打ち練習であれば、(その物を打たないため)目標物は何でも使える。間合い構築練習がどこでもできるようになる。
慣れたら、速い速度で通り抜け打ち、間合いと命中率を同時に養う。慣れることこそが、間合いの感覚習得の最大の手段となる。
弱者生存の護衛護身武術を極めたい方へ~清王朝末期頃のままの八卦掌「清朝末式八卦掌」を国内で唯一伝える水野先生の道場「八卦掌水式門」入門方法
1.八卦掌水式門~清朝末期成立当時の原初スタイル八卦掌「清朝末式八卦掌」を国内で唯一指導する稀代の八卦掌家・水野先生の道場
八卦掌水式門で八卦掌第7世を掌継させていただいた、掌継人のsと申します(先生の指示で仮称とさせていただきます)。掌継門人の一人として、八卦掌水式門の紹介をしたいと思います。
八卦掌水式門は、清朝末期成立当時のままの原初スタイルの八卦掌「清朝末式八卦掌」を国内で唯一伝える八卦掌専門道場です。「単換掌の術理(単換掌理)」による「弱者使用前提」・「生存第一」の技術体系からぶれず、成立当時の目的を一心に貫く伝統門です。
八卦掌第6世の水野先生の伝える八卦掌は、強者使用前提・対一人・対試合想定の近代格闘術的八卦掌が主流となっている現代において、対多人数移動遊撃戦による弱者使用前提の撤退戦を貫いた極めて異色の存在となっています。
先生の伝える八卦掌の最大の特徴は、「単換掌の術理(水式門で先生は、「単換掌理・たんかんしょうり」と略して指導しています)」に徹している点です。
「単換掌の術理」とは、敵と接触を極力さけ、敵の力とぶつからない斜め後方へスライド移動しながら対敵対応をする、「相手次第」を排し「自分次第」にシフトした術理です。
間合いを取り、敵と力がぶつからない場所へ移動しながら「去り打ち」することを正当な戦法としているため、女性やお子さん・お年を召した方にとって極めて現実的な護身術となっています(※よって水式門では、私を含め、女性の修了者さんが多いです)。
単換掌の術理を理解するには、修行の初期段階に、術理に熟練した指導者による対面での練習を通して対敵イメージをしっかりと構築することが必要不可欠、だと先生は言います。
『八卦掌は「勢(せい)」が命の武術。前に向かってひたすら進み続けることで勢を維持せよ。後ろ敵は勢があれば追いつけない。横敵には単換掌の術理・斜め後方スライドで対応せよ。電撃奇襲をすることで、守るべき人に手を出させない、囮(おとり)護衛による中国産護衛護身武術なんだ』は先生の「口癖」化した説明ですね。
相手の侵入してくる角度や強度、そして敵動作に対する自分の身体の使い方を、先生の技を受け、または先生を試し打ちをしながら自ら身体を動かして学んでいきます。 先生は、「私の技を受けるのが最も上達する近道となる。しっかりと見てイメージを作り、独り練習の際、そのイメージを真似するんだぞ。」と語り、常に相手になってくれます。 それは初心者には果たせない役割。水式門では、先生はいつでも技を示してくれます。相手もしてくれるし、新しい技を指導するとき、使い方もしっかりと見せてくれるから、一人の練習の時でも、イメージが残るのです。
よって最初から全く一人で行うことは、リアルな敵のイメージが分からない点から、大変難しいものとなります。この問題は、私がこの場で、先生の指導を受けたほうがといいと強くすすめる理由となっています。
私も石川県在住時は遠隔地門下生でした。先生が富山に来たときは、集中的に相手になってもらいました。石川県という遠くであっても、先生の教え方のおかげで、ブレずにここまで来ることができました。
単換掌の術理に基づいた弱者生存第一の八卦掌を指導する八卦掌の教室は、日本国内では水式門だけです(それか、公にしていません)。
弱者使用前提がゆえの現実的方法で自分を守る武術に興味がある方。力任せの攻撃にも負けない護身術や八卦掌を極めたいと思う方は、水式門の扉を叩いてください。水式門なら、弱者が生き残る可能性を生じさせる八卦掌中核技術を、明快に学ぶことができます。
2.八卦掌水式門は、仮入門制の有る純然たる「伝統門」道場
八卦掌水式門は、代表である水野先生が、八卦掌第5世(梁派八卦掌第4世伝人)である師より指導許可を受けて門を開いた、純然たる「伝統門」です。それゆえ、入門資格を満たしているかを判断する仮入門制(仮入門期間中の人柄・態度を見て本入門を判断する制度)を、入門希望者すべての方に例外なく適用しています。もちろん私も仮入門期間を経て本入門しました。
水野先生が指導する八卦掌は、綺麗ごとのない護衛護身武術。一部に当然殺傷技法が伝えられ、昔の中国拳法と同じく実戦色が強い八卦掌。誰それ構わず指導することはいたしません。
特に先生は、拳法を始めた動機も真剣。他者への思いやりに欠ける人間に伝えてしまい、それで人が傷つけられてしまう事態を招くことを、心から心配しています。
よって各科に掲載された「入門資格」を満たした人間だと判断した場合にのみ、先生は本入門を認め、受け継いだ技法をお伝えしています。「八卦掌の伝統門として、門が負うべき当然の義務と配慮」。これも先生が常に話す口癖ですね。
水式門には『弱者生存の理で貫かれた護衛護身術「八卦掌」を日本全国各所に広め、誰もが、大切な人・自分を守る技術を学ぶことができる環境を創る』という揺るぎない理念があります。
先ほども触れたように、他者への思いやりに欠ける人間に伝えてしまうことは、技法が濫用され第三者が傷つく事態を招き、理念実現に真っ向から反する結果を生んでしまいます。
水野先生は、門入口を無条件に開放して指導し門を大きくすることより、たとえ仮入門制を設けて応募を敬遠されたとしても、他者への思いやりに欠ける人間に伝えてしまう事態を避けることを重視しています。
ここまで書くと、なかなか入ることのできない難しい道場だと思うかもしれませんが、そんなことはありません。仮入門制はありますが、一般的な常識と礼節、思いやりがあれば、心配する必要は全くありません。
指導を受けてみれば分かるのですが、先生はいつも、門下生のことを考え、熱心に指導してくれ、怒鳴ったりもなく、笑顔です。安心してください(無礼な態度や乱暴なふるまいには、ベテラン・初心者関係なく厳しいですが)。
仮入門期間を経て本入門となった正式門下生には、「誰もが大切な人、自分を守ることができる清朝末式八卦掌」の全てを、丁寧に、熱心に、真剣に教えてくれます。
迷ってるあなた。水式門には、積み重ねるならば、弱者と言われる者でも高みに達することができるシンプルで明快な技術体系があります。先生の温かく熱心な指導で、「守る」強さを手にしてみませんか。