はじめに｜対多人数遊撃戦を意識した水式門指導の進歩穿掌とは

対多人数遊撃戦渦中における穿掌では、歩きながら打ちます。

初学時単式練習の時のように、三体式の姿勢を取る時間的余裕はないため、水式門でははじめから進歩穿掌において「歩きながら打ち」を練習するのです。

歩きながら打つ練習方法と合わせて、転身しながら半歩斜めに移動する4つの転身式を磨くことで、敵の攻撃照準から身をそらすクセをつけ、進歩穿掌を実戦ですぐ使うことができるように仕上げていきます。

4つの転身式とは

• 撩陰掌（りょういんしょう）
• 翻身拍掌（ほんしんはくしょう）
• 平穿掌（へいせんしょう）
• 翻身劈掌（ほんしんへきしょう）

です。以下で歩きながら打つ方法と4つの転身式について、詳しく説明をしていきましょう。

進歩穿掌「歩きながら打つ」方法と理由の解説

水式門が「歩きながら打つ練習方法」で最初から指導する理由

当門では、形意拳の基本功として著名な「三体式」の姿勢で動きを一瞬止める穿掌練習方法を採りません。最初から、歩きながら穿掌を打つ練習方法を採ります。

理由の一つ目は、歩きながら打つ練習方法の方が、初心者でも拳訣（けんけつ）の求める「手と足の同時着地による技の完了」を体現しやすいからです。

そしても最も大きな理由は、対多人数遊撃戦の渦中では、激しい身体流（しんたいながれ）の慣性も相まって、三体式を取る間も余裕もないからです。遊撃戦をメインで考えてる以上、その渦中で用いることのできない技を練習することは、護衛護身の理念からずれてしまいます。

また、三体式を挟む打ち方に慣れた後、歩きながら打つ打ち方に慣れるのは思った以上に大変だという現実も、理由の一つとなります。

※三体式を挟む練習方法は、拳訣の要求する「三尖相照」の要訣を確認しながら練習できる優れた練習法であるため、歩きながら打つ方法に慣れた後、別法で練習をするとよいでしょう。

歩きながら打つ方法

（１）最初は三体式の姿勢を取り、そこから手と足を大きく前に出します。

（２）手と足は同時に動きを完了させます。明日着地してから穿掌手が最前に到達することのないように注意します。

（３）手足の同時着地・完了と同時に、後ろ足をすかさず前に大きく出し、前に進みます。

（４）以後、大また歩きを意識しつつ連続して打っていきます。

進歩穿掌の転身式を学ぶ前に知っておきたいこと

進歩穿掌における転身式を説明します。進歩穿掌では、必ず半歩斜め後ろに移動しながら振り返ります。その理由は以下の2点です。

• 敵の攻撃照準から己の身体をずらすことで、敵に攻撃を受けても痛恨の一撃を避けることができるから
• 半歩斜めに移動することで、振り向きざまに敵に向かう際の攻撃目標が斜め前になり、内転筋・殿筋など八卦掌の練習で日ごろ鍛えている大きな下半身の筋肉をフル稼働して身体を前に進め始めることができるから

半斜は八卦掌における攻撃と防御の基本

八卦四十八法の　半圏手法　を参考にしてもらいたいのですが、八卦掌における攻防の基本は、「半歩斜めに移動すること」です。

半歩斜めに移動することで、体力的・戦況的優位な敵に、まっすぐ正面で攻防する際と違った「やりにくさ」を与えます。クラウゼヴィッツのいう「摩擦」を積極的に作りだす（予測不能の予期せぬ要素を作りだす）のです。

振り向きざまの半斜転身によって、敵が考えていた場所と違った場所に我を置くことになり、敵は一瞬、予想外の戸惑いを感じます。それにより、ほんの少し動作が止まったり、突きや蹴りが外れたり、不発な攻撃となったりします。

個々の戦史を見ると、勝敗を決した要素は、ささやかなズレによる不測の事態の連続により生じることが多いのです。圧倒的に優位な敵が、様々な「偶発的要素」によって態勢を崩し、そこから予想と違った結果が生じる（例：ミッドウェー海戦・関ケ原の戦い・ロイテンの戦いetc）。そして偶発的要素を利用するには、日頃からの準備が必要となります。偶発的要素だけでの大逆転は難しいためです。

日頃より不測の事態を生じさせる準備（八卦掌における半斜転身身法を練習しておくetc）をしておくことで初めて、フィジカルに勝る敵から勝利を得ることができます。

半斜動作により、日頃鍛えている下半身の大きな筋肉（内転筋等）を最大限に活用できる

2番目の理由は、手返しよく敵に攻撃を仕掛ける際に大変重要な要素となっています。

八卦掌は転身の際、手足を流れるように出し続けることで、敵にプレッシャーを与え、攻撃と防御を実現しています。敵の横をすりぬけ方向を変える際は、予想以上の慣性が働いてしまい、方向転換をするのに大きな力が必要となりその場から動くことが難しくなります。

半歩斜めに移動して振り返り、敵を我の斜め前に置くことで、内転筋・殿筋など、日頃鍛えている、大きな力を出すことができる下半身の筋肉をフル稼働できます。

敵を真正面に置いてしまうと、まっすぐ前に進むしかなく、内転筋等は使うことができません。まっすぐに動き始めるのは難しいのです。

転身式1.撩陰掌による転身

撩陰掌による転身は、腕を振り上げる必要もなく、初学段階でも自然に、かつ素早く手を出すことが可能なため、遊撃戦時のすり抜け様攻撃で多用されます。

撩陰掌は、金的を打つ技というイメージが強いのですが、実際には、顔や脇腹・脇下を積極的に攻撃する技です。よって転身時に腕をすくい上げる際は、顔の高さまでしっかりと上げましょう。

穿掌を打ち終わると同時に、肘下にある手を顔の高さまですくい上げながら転身します。

転身の際は、大きく横に移動します。移動することで我が身を敵の攻撃照準からずらします。

転身式2.翻身拍掌による転身

翻身拍掌による転身式は、大きく上から手の甲ではたく動作となるため、慣れないうちは若干転身速度が遅くなります。

その際、股間の防御が薄くなるため、すばやく、後ろ足をを前足の後ろに移動させます。

しかし「拍」掌自体は、初動動作が小さく相手には分かりにくい攻撃であるため、慣れてしまえばけん制攻撃など様々な場面で流用できるでしょう。

穿掌を打ち終わると同時に、肘下から斜め後ろ上方向へ半円を描きながら、手の甲で後ろの敵の顔や頭部側面をはたくつもりで打ちます。

打つ動作とともに、大きく斜め後ろに横移動しながら転身します。

打つ同時に、素早く、後ろ足となった足を、前足の後ろに寄せ、金的を前足の後ろに納めます。

転身式3.平穿掌による転身

平穿掌で転身する際は、棒を前に出して打ちつけるイメージで、手のひらを下にして、手刀部分を思い切り前に出します。

体の反転力を手刀にのせる威力のある転身式のため、メイン攻撃としても利用できます。

穿掌を打ち終わると同時に、肘下にある手を、手のひらを下にした状態で、手刀部分で斜め後ろ方向に水平に打ちます。

平穿掌は動作が最も大きい転身式のため、敵に接近しすぎている際は、推磨式翻身功の「平穿」の要領で、股関節をたたみながらコンパクトに転身します。

実戦では、手刀で斬りつけ（叩きつけ）ながら通過する連続攻撃の最初の動きとしても利用できます。

転身式4.翻身劈掌による転身

翻身劈掌による転身式は、上から振り下ろす攻撃で威力があるため、こちらが身長のフィジカル的要素で優位な敵に用いると効果的です。

けん制として転身時劈掌を打つと、その勢いが次の攻撃動作の助走として利用できる（内転翻身時に実感できる）ため、乱打戦でも使いやすいでしょう。

穿掌を打ち終わると同時に、、肘下にある手を、大きく上へ半円を描いてふりかぶって一気に振り下ろします。

敵に防がれても構わずに下に降りぬくつもりで、力強く振り下ろすのがコツです。

上方へ腕を上げるため、転身の際股間の防御に不安が生じるため、翻身拍掌の際と同じく、すばやく前足後ろに、後ろ足を移動させて金的を納めます。

弱者生存の護衛護身武術を極めたい方へ～清王朝末期頃のままの八卦掌「清朝末式八卦掌」を国内で唯一伝える水野先生の道場「八卦掌水式門」入門方法

１．八卦掌水式門～清朝末期成立当時の原初スタイル八卦掌「清朝末式八卦掌」を国内で唯一指導する稀代の八卦掌家・水野先生の道場

八卦掌水式門で八卦掌第7世を掌継させていただいた、掌継人のｓと申します（先生の指示で仮称とさせていただきます）。掌継門人の一人として、八卦掌水式門の紹介をしたいと思います。

八卦掌水式門は、清朝末期成立当時のままの原初スタイルの八卦掌「清朝末式八卦掌」を国内で唯一伝える八卦掌専門道場です。「単換掌の術理（単換掌理）」による「弱者使用前提」・「生存第一」の技術体系からぶれず、成立当時の目的を一心に貫く伝統門です。

八卦掌第6世の水野先生の伝える八卦掌は、強者使用前提・対一人・対試合想定の近代格闘術的八卦掌が主流となっている現代において、対多人数移動遊撃戦による弱者使用前提の撤退戦を貫いた極めて異色の存在となっています。

先生の伝える八卦掌の最大の特徴は、「単換掌の術理（水式門で先生は、「単換掌理・たんかんしょうり」と略して指導しています）」に徹している点です。

「単換掌の術理」とは、敵と接触を極力さけ、敵の力とぶつからない斜め後方へスライド移動しながら対敵対応をする、「相手次第」を排し「自分次第」にシフトした術理です。

間合いを取り、敵と力がぶつからない場所へ移動しながら「去り打ち」することを正当な戦法としているため、女性やお子さん・お年を召した方にとって極めて現実的な護身術となっています（※よって水式門では、私を含め、女性の修了者さんが多いです）。

単換掌の術理を理解するには、修行の初期段階に、術理に熟練した指導者による対面での練習を通して対敵イメージをしっかりと構築することが必要不可欠、だと先生は言います。

『八卦掌は「勢（せい）」が命の武術。前に向かってひたすら進み続けることで勢を維持せよ。後ろ敵は勢があれば追いつけない。横敵には単換掌の術理・斜め後方スライドで対応せよ。電撃奇襲をすることで、守るべき人に手を出させない、囮（おとり）護衛による中国産護衛護身武術なんだ』は先生の「口癖」化した説明ですね。

相手の侵入してくる角度や強度、そして敵動作に対する自分の身体の使い方を、先生の技を受け、または先生を試し打ちをしながら自ら身体を動かして学んでいきます。 先生は、「私の技を受けるのが最も上達する近道となる。しっかりと見てイメージを作り、独り練習の際、そのイメージを真似するんだぞ。」と語り、常に相手になってくれます。 それは初心者には果たせない役割。水式門では、先生はいつでも技を示してくれます。相手もしてくれるし、新しい技を指導するとき、使い方もしっかりと見せてくれるから、一人の練習の時でも、イメージが残るのです。

よって最初から全く一人で行うことは、リアルな敵のイメージが分からない点から、大変難しいものとなります。この問題は、私がこの場で、先生の指導を受けたほうがといいと強くすすめる理由となっています。

私も石川県在住時は遠隔地門下生でした。先生が富山に来たときは、集中的に相手になってもらいました。石川県という遠くであっても、先生の教え方のおかげで、ブレずにここまで来ることができました。

単換掌の術理に基づいた弱者生存第一の八卦掌を指導する八卦掌の教室は、日本国内では水式門だけです（それか、公にしていません）。

弱者使用前提がゆえの現実的方法で自分を守る武術に興味がある方。力任せの攻撃にも負けない護身術や八卦掌を極めたいと思う方は、水式門の扉を叩いてください。水式門なら、弱者が生き残る可能性を生じさせる八卦掌中核技術を、明快に学ぶことができます。

２．八卦掌水式門は、仮入門制の有る純然たる「伝統門」道場

八卦掌水式門は、代表である水野先生が、八卦掌第5世（梁派八卦掌第4世伝人）である師より指導許可を受けて門を開いた、純然たる「伝統門」です。それゆえ、入門資格を満たしているかを判断する仮入門制（仮入門期間中の人柄・態度を見て本入門を判断する制度）を、入門希望者すべての方に例外なく適用しています。もちろん私も仮入門期間を経て本入門しました。

水野先生が指導する八卦掌は、綺麗ごとのない護衛護身武術。一部に当然殺傷技法が伝えられ、昔の中国拳法と同じく実戦色が強い八卦掌。誰それ構わず指導することはいたしません。

特に先生は、拳法を始めた動機も真剣。他者への思いやりに欠ける人間に伝えてしまい、それで人が傷つけられてしまう事態を招くことを、心から心配しています。

よって各科に掲載された「入門資格」を満たした人間だと判断した場合にのみ、先生は本入門を認め、受け継いだ技法をお伝えしています。「八卦掌の伝統門として、門が負うべき当然の義務と配慮」。これも先生が常に話す口癖ですね。

水式門には『弱者生存の理で貫かれた護衛護身術「八卦掌」を日本全国各所に広め、誰もが、大切な人・自分を守る技術を学ぶことができる環境を創る』という揺るぎない理念があります。

先ほども触れたように、他者への思いやりに欠ける人間に伝えてしまうことは、技法が濫用され第三者が傷つく事態を招き、理念実現に真っ向から反する結果を生んでしまいます。

水野先生は、門入口を無条件に開放して指導し門を大きくすることより、たとえ仮入門制を設けて応募を敬遠されたとしても、他者への思いやりに欠ける人間に伝えてしまう事態を避けることを重視しています。

ここまで書くと、なかなか入ることのできない難しい道場だと思うかもしれませんが、そんなことはありません。仮入門制はありますが、一般的な常識と礼節、思いやりがあれば、心配する必要は全くありません。

指導を受けてみれば分かるのですが、先生はいつも、門下生のことを考え、熱心に指導してくれ、怒鳴ったりもなく、笑顔です。安心してください（無礼な態度や乱暴なふるまいには、ベテラン・初心者関係なく厳しいですが）。

仮入門期間を経て本入門となった正式門下生には、「誰もが大切な人、自分を守ることができる清朝末式八卦掌」の全てを、丁寧に、熱心に、真剣に教えてくれます。

迷ってるあなた。水式門には、積み重ねるならば、弱者と言われる者でも高みに達することができるシンプルで明快な技術体系があります。先生の温かく熱心な指導で、「守る」強さを手にしてみませんか。