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八卦掌の最重要練習「走圏」をマスターするためのヒント

八卦掌は、一見すると、まるで踊りのようです。とても中国拳法とは思えません。しかし見た目を鮮やかに裏切って、実際はとても実用的な拳法なのです。八卦掌が、基本たる「走圏」という練習によって、最初に徹底的に歩法と身法を身に着ける体系を現在も保っていることが、その証明のようなものです。

当ページでは、長年の練習で気づいたことをもとに、皆さんが八卦掌の基本練習「走圏」をマスターするためのヒントとなるような気づきを書いていきます。他流派の方や、八卦掌を始めたばかりの方、もしくは八卦掌に取り組もうかどうか迷っている方にも、参考にしていただきたいと思います。

このページを見て、八卦掌を始めたいと思った人は、まずは始めてみましょう。難しく考える必要はありません。誰でもできる心の広い拳法なので、始めるだけでいいと思います。さっそく「走圏」をしてみましょう。

神秘的だと言われ、とかく難しいイメージのある八卦掌ですが、始めてみると、「走圏」をベース技術としたシンプルな技術体系に引き込まれることでしょう。

なぜ「走圏」が最も重要なのか?

 「走圏」とは、みなさんも御存じのとおり、円周上を回り続ける練習です。八卦掌において、最重要にして、昔日は秘伝であった練習法です。ちょうど、昔日における、形意拳の三体式站椿のような位置あいのものです。

 秘伝は隠されないとだんだんありがたみが薄れて皆あまり練習しなくなりますが、走圏はどうしても外すことができない練習です。技を打つにしても必ず歩きながら打つ八卦掌において、それを実現させるためには、走圏で歩きぬいて俊敏で軽快な足さばきを得ること必要となってくるからです。

 歩きぬいて、足が勝手に動くいているような感覚を得るまでに至らなければ、歩きながら技を連続して繰り出すことはできません。つまり走圏に習熟してなければ、技を繰り出す時に足が邪魔をしてしまい、流れるように技を繰り出せなくなるのです。

「走圏」で練るものとは?

八卦掌が求める姿勢

 「走圏」を練習しはじめたばかりのころは、八卦掌が求める姿勢を無理にでも保って、ゆっくり円周上を歩きます。八卦掌が求める姿勢は、主に以下のものです。

  • 尻をすぼめる
  • 頭を上げる
  • 頭を円の中心に向ける
  • 足は泥の中を進むようにし、スッ、スッ、と出し、つま先をずらない
  • 膝を開かない
  • 背中を丸める
  • 胸を空にする
  • 指を均等に開き、全指を伸ばしきる

 八卦掌が求めるこれらの姿勢は、普段の生活ではなじみの薄い姿勢であるためうまく行うことができず、この練習をし続けることは多大なもどかしさを感じてしまいます。特に、上半身や指先の要求は実に辛く、最初のうちは肩・腕・首筋がパンパンに張ってしまうほど苦労します。

 しかし、意識をしながら、できないなりにも続けていくと、徐々に要求された姿勢が力まないでできるようになってくるのです。必要なところにだけ意識の通った適度な力が通るようになるのです。

 意識の通った、力んでない自然な力強さ、張り。そうなると、動作の最中、いつでも相手の出方に反応できるようになってきます。どの部分に触れられても、その部分で力を発したりすることができるようになります。

足腰の強さ

 足腰の強さは、中盤・下盤の走圏に取り組むことで養っていきます。

 下盤とは、大腿部が地面と平行くらいまで下げる姿勢です。しかし実際に地面と水平まで下げると、姿勢は崩れ、鍛える筋肉が膝回りだけの筋肉になってしまうので、少し腰を高くします。実は、この高さの姿勢こそが、最もつらいのです。

動体視力

 八卦掌は、遊撃戦を基本とします。正面を打ちながら相手の横へ駆け抜けつつ横撃しながらすれ違い、回り込みながら相手を、一気に崩し抵抗を奪う・・・そんなときに目がついていかないのでは、目標に攻撃を加えることができません。ふらついてしまったり、攻撃目標から遠く離れてしまいます。

 走圏では、円の上を、高速で回る練習もします。その時、顔を円の中心方向に向け続けて歩くことで、動体視力が徐々に養われていきます。最初は目が回ってしまうが、そのうち回らなくなってきます。そして、流れる景色の中でも、攻撃目標をとらえ、それに向かって手を出すことができるようになります。

 ある程度習熟すると、一点を起点に景色がひたすら横に流れていく感じとなります。黙々と歩いても目が回ることはなくなり、心地いい感覚にすらなります。ウォーカーズ・ハイでしょうか。

「張り」

 初学のうちは、八卦掌が求める上半身の姿勢をとり続けることは、大変な苦労を要します。

 この姿勢をとり続けつつ、「張り」も意識していきます。最初は、そのような意識をする余裕などありません。とにかく上半身の姿勢の要求を満たすことだけで、きっと精一杯のはずだからです。

 上半身の姿勢をとることに少し余裕が出てきた辺りから、チャレンジしていきます。イメージ的には、走圏姿勢(下沈掌)で、胸の前にボールを抱えているような感じです。そしてそのボールは、中心から全方向に膨張していこうとしてるので、それを腕、頭で抑え、膨張しないように現状維持を保っている感じです。

 このような感覚を会得することで、遊撃戦のどの過程で敵に触れても、その時その都度、敵に威力を伝えることができるようになるのです。

 この「張り」、実は、八卦掌において特に重要な感覚なのです。

指の功

 走圏をするときは、両手指を、目いっぱい伸ばします。均等に、指を上下もさせることなく、です。

 直近の、「張り」を練る時の上半身の姿勢に加え、両手指をしっかり均等に伸ばすことを実践すると、慣れないうちは上半身がパンパンになり、疲労がたまってきます。

 指を目いっぱい伸ばし続けることも、やはり慣れによって克服できるようになります。できないなりにその都度挑戦することで、徐々に指が伸びてきて、かつ、全指先に意思の通った力が伝わるようになります。

 「穿掌」は指先を伸ばして相手を打つ技(ほんの少し、掌底側に曲げる)であり、八卦掌における中核技となっていますが、ここで述べた指の功が無ければ、相手を打つときにこちらの指が打撃の衝撃に負けてしまいます。

 指の功が備われば、指は鉄のごとく丈夫な棒となり、その固い棒で相手を攻撃することができるのです。

軽快で自在な足運び

 走圏は、円周上を回る練習方法です。上盤姿勢での高速走圏では、動体視力を練ると書きましたが、当然、軽快で自在な足の運びも練習目的となります。

 中盤姿勢の走圏で練った姿勢を維持しつつ、腰を少し高くし(ピンピンに脚を伸びきらない)、一定時間回り続けます。

 この練習をし続けると、徐々に足の運びが軽快になっていきます。でたらめに足を速く運ぶのではなく、平起平落(足を平らに上げ、平らに着地させる)を意識し、内側の足をなるべくまっすぐに進めることで膝がガバッと開かないようにします(内側の足がある程度開いて出てしまうのは致し方ない)。

 高速走圏に習熟すると、上半身が円周上をなぞるのに合わせて足が自然と動いている、というような感覚を得ることができます。スッ、スッ、スッ(もしくは、小さい音で、タッ、タッ、タッ)という感じで足が運ばれ、まるでレールか何かの上に上半身が乗っかって、円周上を回っている感覚に至ります。

 高速、ということで、最初からとにかく速く回ることにこだわる人もいますが、練習のプロセスはそうではありません。中盤からの延長練習であることを意識して、姿勢を守りつつ、知らないうちに速くなっていた、という状態を目指します。

「走圏」の練習の仕方

走圏だけ練習することに固執して、走圏の達人を目指さない。八卦掌の達人を目指す。

 走圏を練ることがなぜ重要なのか?なぜ走圏が八卦掌において最も重要な基礎練習となっているのかを知り、その後、走圏で何を練るのを知っておけば、そのことを意識しながら歩を進めることができます。

 最初は当然にうまくできません。上で述べた姿勢の要求を守ろうとすれば、常に不安定となり、上半身はガチガチに固まり、下半身には乳酸がたまり筋肉が疲労してきます。苦しくとも、せめて難しく考えるのは止めて、とにかく続けていきましょう。

 練習の流れとしては、最初に下盤両回り、その次に中盤両回り、最後に上盤両回りを練ります。この流れは人それぞれであるので、あなたの好みに沿った順序を作るとよいでしょう。

 昔日の達人は、走圏だけを一日6時間以上も練った、とも伝えられていますが、忙しい現代人にそれは真似できません。例えば一日4時間練習時間を取ることができるならば、4時間すべてを走圏にするのはもったいないです。2時間30分を走圏に充て、その後は定式八掌・単繰手・老八掌を練って、八卦掌の総合的な体使いを練習した方が、走圏上達へも役立ちます。

 走圏だけをやっていても、走圏の達人になってしまいます。私たちは八卦掌をマスターするために練習するのですから、八卦掌に伝わる基本練習(八卦掌動作を行うための基本練習・単繰手・定式八掌・老八掌)は、定期的に行っていく必要があります。

 昔日の達人には、「基本の○○の技だけをもって相手を倒した」というような逸話が残っています。しかしその達人は、基本の○○の技だけを入門時から練習していたのではなく、一通り学びそれらに習熟した後、基本の○○に己が悟ったものを凝縮させ、まとめ、完成に至ったのだと考えられます。

 基本の○○の技をもって相手を制する時でも、攻防過程では他の受け技等を利用して相手を崩したりしているので、厳密にいえば○○の技だけで勝負がついたわけではありません(もちろん○○の技だけで勝負を制した逸話も存在していますが・・・)。

 最強を目指すならば、偏った練習(例:一つの技だけ徹底的に行う・片側だけ練習する・きつい練習を常に自分に課し続けるetc)をすることも時に有効かもしれません。しかし現代の私たちは、最強などという、実現することがとてつもなく難しい目標を目指さなければならないわけではありません。健康にも気を付け、末長く取り組み続けることで、着実に拳法の神髄に近づいていくことならば、誰でも達成可能です。

 最強は、極論では一人しかなることができませんが、優秀な拳法であればその練習体系とエッセンスには合理性があり、多くの人が体得できるはずでしょう。ですから優秀な拳法だと言われるのですから。

中盤走圏である程度姿勢ができるようなり、かつ脚力がついたら、下盤走圏・上盤高速走圏にもチャレンジする

 最初は中盤姿勢で、姿勢の要求を満たすことを目指します。併せて、中盤姿勢を取り続けることで脚の筋肉を鍛えます。いずれ下盤姿勢を取るための下準備をするのですね。

 中盤が慣れたら、より一層姿勢を低くします。下盤です。上半身の姿勢要求が満たせる高さまで下げます。あまりに下げると、上半身の姿勢が崩れてしまうため、そこまで下げる必要はありません。下盤に慣れてくると、知らぬ間に姿勢が低くできるようになります。

 下盤で低姿勢での下半身鍛錬を重ねつつ、上盤姿勢での高速走圏にも取り組み始めます。

 最終的には、各姿勢で均等な時間を行えるようにします。そこまでできるようになっても、走圏をしなくてもよくなるわけではありません。八卦掌を練習していく限りは、常に走圏には取り組み続けていきます。

上盤高速走圏で、上半身、下半身の姿勢が守り続けることができ、浮くような感覚で歩くことができたら、ハイブリット走圏に挑戦

 上盤高速走圏で上半身と下半身が安定し、かつ、レールの上を滑るような感覚で歩くことができるようになったら、さまざまな走圏に取り組んでみます。ハイブリット走圏とは、以下のものが挙げられます。

  • 武器を持っての走圏
  • 定式八掌の各ポーズでの走圏
  • 八の字を描く形での走圏(八の字歩)
  • 九宮図をトレースする走圏(九宮歩)

武器を持っての走圏

 武器として考えられるのは、八卦大刀・大槍が考えられます。大きくて重たいものを持っての走圏では、より一層、身体の安定が求められるので、負荷をかけるのですね。もちろん、武器を使ううえでの基礎ともなるので、武器を使って八卦掌を活用したい人には、魅力的な練習と言えるでしょう。

八の字を描く形での走圏(八の字歩)

 走圏で使う円を二つ接して横に並べ、その上を回ります。互いの円の接点で一瞬まっすぐとなり、顔の向きを変えます。

八の字歩
八の字歩

 八の字歩は、主に定式八掌の推磨掌にて行い、円の中心あたりのまっすぐになったところで穿掌を突き出し、頭と手の向きを変えて行います。

 また、定式八掌の他のポーズ(托天掌・下搨掌・陰陽魚掌・叉子掌)でも行いやすいです。

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