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対多人数遊撃戦八卦掌を上達させるための練習段階

(このページは、2021年9月16日に更新しました。)

遊撃戦を展開する代表・水野

対多人数遊撃戦を体得するためには、段階を踏んだ練習が不可欠です。相手が複数、というだけでこちら側にとっては極めて不利であるのに、何の準備もしない状態で対多人数を相手に戦うことは難しいでしょう。

たまたまうまく立ち回ることができても、次にうまくいくことなどほとんどありません。それは非常に危険なことです。たまたまうまくいった成功体験が、後に軽率な行動につながる危険性が生まれます。

対多人数遊撃戦を細かく見てみると、いくつかの要素に分かれていることが分かります。よって各要素をしっかりと練習し、後に各要素を連動させ、一体化させることで、対多人数遊撃戦を戦い切ることができる「可能性」が生まれます。このページで、段階的な練習の内容を見ていきましょう。

そこまで練習しても「必ず勝てる」状態にはならないと思います。しかし練習をしなければ、可能性すら生じません。私は「できない」と決めつけず、「練習し続けていけば、護ることをできる可能性が高まる」と信じて練習していきます。

対多人数遊撃戦八卦掌をマスターするための5つの練習段階

複数人相手と遊撃戦で戦うためには、しっかりとした準備が必要です。その準備とは、対多人数を想定した練習を段階を経て学んでいく、という準備です。

大きく分けると5つの段階があります。

  • 練習段階(1):相手の懐に入り込むための、直線的攻撃を練習する
  • 練習段階(2):相手に極めて接近した状態で、自由に変化しながら攻防する練習を重ねる
  • 練習段階(3):相手へ高速で接近し攻撃し、すかさず変化することを練習する
  • 練習段階(4):(1)~(3)を一連の流れでスムーズにこなす練習を重ねる
  • 練習段階(5):混戦の中にあっても(1)・(2)・(3)の流れを心に留めつつ、動き回りながら攻防する

これらの段階の練習をするためには、それぞれ適した練習があります。特に多人数戦が視野に入っている古伝武術には、この段階のごとにその目的を実現するための練習法が存在しているのです。そしてそれらは多くの場合、秘伝として伝承されています。

例)合気道の多人数取りなど

八卦掌修行者の多くは、(2)と(3)については熱心に練習しますが、(1)・(5)については、あまり練習しません。

(1)については、まっさき重視したい内容となっています。この段階がしっかりとできてないと、相手に近づくことすらできないままに勝負がついてしまいます。

(5)の練習段階までくると、決まった型というものがないため、人によっては練習を嫌がるかもしれません。臨機応変に動くということは、多くの場合、脚の各部位に大きな負担がかかるものです。この段階を通り抜けるためには、低い姿勢での走圏や、修行初期段階から習っている基礎技の練習の反復が、一層重要さを増すのです。

人間は必ず年を取り、体力・筋力は衰えていきます。そんな状況でも多人数戦を生き延びるためには、小さい動きと無駄のない所作が必須です。無駄のない多人数戦は、実にカッコよさに欠ける、見ていて迫力に欠けるものです。

 人を使った多人数約束組手、目標物を使っての縦横無尽練習が有効です。練習をしているうちに、どのような目線、どのような動きが最もロスが少ないのか、身体で分かってくるのです。ヒントは、走圏における基本姿勢です。

人を使った多人数遊撃戦組手では、相手に穿掌や蹴りを実際に入れることができないため、きっとすぐにつかまってしまうでしょう。それくらい、穿掌で急所を狙いうつ先制攻撃は重要なのです。

つかまっても落ち込む必要はありません。自分の中で「ここで入れる」と確認しながら練習していきます。

練習段階(1):相手の懐に入り込むための、直線的攻撃を練習する

対多人数遊撃戦では、いきなり大勢の人間を相手にさばくような練習をしません。

いきなりそのような練習をしても、再現性がありません。時と場合によってはうまくいくかもしれませんが、やはり対多人数遊撃戦下で顕著にみられるワンシーンごとの練習を、コツコツと積み重ねていく必要があります。

対多人数遊撃戦では、一人の敵に対し、その眼前でじっくりと攻防することなどできませんので、すばやく入って素早く変化攻撃をし、そして後方や横方向の敵が来る前に去って、次の敵に先制攻撃をする、というパターンが存在します。

ですから、まず眼前の敵の懐に一気に入り込む練習を行うことになります。一気に入り込む、と書きましたが、入り込むのは、無駄なくスッと入り込む感じがいいでしょう。

動画を見ていただけるとわかると思いますが、入り込む際、必ずどちらかの足で敵の下段蹴りにけん制しています。入り込む際の蹴りは、日ごろから練習しておかないと、実戦の場面でこちらの動きが止まる原因となるため、日ごろから練習しておきます。

コツは、足でキレイに防御しようなどと考えないことです。対多人数遊撃戦では、敵の攻撃をキレイに避け続けることなどほぼできません。ましてや混戦が長引けば長引くほど、動作の切れは下がっていきます。

上手く避けたいがための体力消耗は、極力避けたいのです。

練習段階(2):相手に極めて接近した状態で、自由に変化しながら攻防する練習を重ねる

対多人数遊撃戦の八卦掌へとつなげる各段階について説明しています。第一段階では、敵の懐に一気に入り込む練習方法を説明しました。

次の段階では、敵の横でひたすら変化し続け、その流れの中でさばき、かつ隙あらば手や足をだして敵をつつく(攻撃する)練習をします。

この段階は、敵の横でひたすら変化し続けることに慣れる段階であります。  

一体どのくらい近い位置で変化するのでしょうか?それは、肘を少し外に張ったら、肘先がしっかり届くくらい近い距離です。先生によっては、相手と接吻(キス)ができるくらい近づけと、気持ちの悪い?指導をすることもあります。

変化練習の際は、とにかく手や足を出し続けて敵に圧力を加えながら変化することを心掛けます。そうすることで、身体を翻る時でも敵から後方攻撃を受けにくくなる状況を作り出すことができるのです。

とても重要なことを伝えます。身を翻す方向は、必ず、左右同じ量を練習すること。それを心掛けていても、大方自分の得意な方向へと翻ることに偏ります。しかし、苦手な方向を作ってしまったら、八卦掌の変化攻撃に制限ができてしまいます。

対策として、特定方向へ一定時間、ひたすら翻り攻撃を続け、そののち、反対方向へ同じ時間翻り攻撃を続ける、という練習をしていきます。  

近い距離で打つ場合は、寸勁。少し離れた時に打つ場合は、穿掌などで放長勁を放つ。どちらを打つ場合も、渾身の力でうったりしないこと。流れの中でさりげなく打ちましょう。実戦では他にも敵がいるため、同一敵への熱心な攻撃は後方からの攻撃を可能にさせてしまいます。

ここでもしっかり、線による攻撃を意識してください。とどまると、その瞬間から面になるのです。面になると、相手は攻撃をしやすくなります。

練習段階(3):相手へ高速で接近し攻撃し、すかさず変化することを練習する

練習段階(1)でまっすぐ敵の懐に入る練習をし、(2)で敵のすぐ横で変化し続けながらさばきつつ攻撃する、という練習をしてきました。

次は、この二つの段階をつなげる練習段階となります。

動画の変化は、梁派老八掌の順勢掌をもとにした応用攻撃です。攻撃しつつまっすぐ近づき、すかさず敵の肩をおしのけながら、その押しのける反動を利用してななめ後ろに転身しつつ回り込みます。

回り込むと相手は必ず顔を後方へと向けてくるので、すかさずその顔に穿掌を打ち込みます。

大事なことは、流れを意識することであります。とどまらない。とどまってそこで繰り返して攻撃しない。

あくまで面ではなく一本の線になったかのように動き、その線のまわりをらせんや張りの意識で包みながら攻撃していく、というイメージを持ってください。

らせんとハリの衣に守られ、滑らかな歩法で速度を増した線は、敵の攻撃を受けにくくなります。受けても、痛撃には到らないでしょう。

打ち込む時の穿掌には、転身してから敵に向かって前進するときの推進力もうまく手に伝えましょう。顔を向けた瞬間に敵は重たい穿を受けることになります。

練習段階(4):(1)~(3)を一連の流れでスムーズにこなす練習を重ねる

対多人数遊撃戦八卦掌をマスターするための練習段階の4番目について説明していきます。

まっすぐ入って敵に接近し、敵がとまどっている間に先制して変化攻撃し、すかさずその場から離脱する練習です。

すかさず離脱・・・敵が嫌がっているならもったいないのでは?と思うかもしれませんが、固執すると、その場にたくさんの敵が寄ってきて、集中砲火を浴びる危険があります。

その場にとどまることは、たとえ入り込んだ敵との関係で優位に立っていたとしても、その他の敵との優位性が確保されてない以上危険なのです。

対多人数遊撃戦では、状況は刻一刻と変化していきます。様々な要素が、一気に状況を悪化させる。大前提として、戦う前からこちらが圧倒的に不利である、ということを忘れてはいけません。

不利な状況を打開するために、最初の段階から自ら摩擦を生じさせているのです。

※「摩擦」・・・プロイセンの兵学者・クラウゼヴィッツが言及した、戦場における予測不能のイレギュラー要素。天候・相手指揮官の異常なまでの戦術的才能(ナポレオンを例に挙げている)・相手の常識を逸した不意の戦術行動、などを例に挙げた。

こちらが生じさせる「摩擦」とは、不意をついて、一気に懐に入ること、そして距離が縮まった状態で八卦の歩法を使ってイレギュラー攻撃で翻弄すること、そして最後に、躊躇なく去りながら、去り際の一撃を見舞うこと、です。

去り際の一撃は、理想であります。できるならば是非ともしてほしい、しかし去り際の一撃について、ワンテンポの時間が必要となるならば、それはしなくてもいい。

去り際の一撃は、流れの中で行われるからこそ、敵の警戒心を生じさせる。敵が警戒心を持てば、次から敵はうかつに攻撃をしてこなくなります。

つまり、予想不能の反転攻撃の最大の効果は、敵に心理的な警戒心を生じさせることです。

これは私も幾度と経験があります。以前にも話しましたが、多人数戦練習で私が多人数側の一人として襲う役をしていたとき、不意の蹴り技(喰らってない)を何度もされたことで、相手がほかの一人と戦っている時に、無意識に相手の出方をうかがってしまっていた経験があります。極端に言えば、攻撃していない以上その瞬間は一対一であることにかわりありません。

躊躇なく去ることの、もう一つの利点は、横に控えている敵に、いきなり攻撃をできること。対多人数戦においては、もう一人の敵がすぐ近くまで接近していることが多い。それをぼんやりでもいいので確認しておき、去る位置から最短距離で、そのぼんやりした対象物に向かって一撃を放つ。当たらなくてもいい。射程距離の長い、穿掌が効果的です。この攻撃がまた、相手に対する警戒心を与えるのです。

去り際にワンテンポ置いてしまうと、この横にいる敵への不意の攻撃の効果が弱まるのです。だからワンテンポ置くならば、去り際攻撃などしなくてもいいのです。

・・・次の敵への不意打ち先制攻撃の練習は、また別の練習となりますが、すでに私たちは、回身老僧托鉢式や転身穿掌で、その動きを身体に覚えさせているので、意外とスムーズにできるようになります。安心してください。

回身老僧托鉢式をやったことのない人は、是非とも このページ を参考に、練習しておいてください。

練習段階(5):混戦の中にあっても(1)・(2)・(3)の流れを心に留めつつ、動き回りながら攻防する

動き回りついでに倒す

対多人数遊撃戦八卦掌を体得するため、物を仮想敵にした練習段階の5ステップ目です。

ここでは、各ステップにとらわれない自由な動きで練習することになります。敵を打つ・敵を倒すことよりも、敵の合間を縦横無尽に動きながら、その流れの中で「動きついでに倒す」ことを意識します。

「そんな軽い気持ちで、敵を倒せるのか?」と思われるかもしれないが、敵を倒すことを強く意識すると、敵の眼前で居着くことにつながる。居着く=敵の眼前で攻防を繰り広げる練習が必要。その練習をしていない私たちは、勝ち目が薄くなります。

この練習は、対物でもかなりの体力を要します。これが複数人相手となると、体力の消耗はもっともっと激しくなります。緊張感も比べ物になりません。

では、このような対物練習は意味がないのでは?と思いますが、対物で練習をしてなければ、対物相手ですら動きまわることができません。敵のプレッシャーが低いことは、自分なりのスタイルを築く良き練習の場となります。

プレッシャーが厳しすぎる対人相手練習では、自分の動きをしっかりと確認できます。動画中でも、考えながら練習していることが分かります。時間とともに敵の間で攻防をする傾向に陥りますが、修正し、なるべく敵の外側に回り込むように修正しているのがわかります。

上盤高速走圏時のトップスピード時の景色の中での攻防をイメージ

精神的なことはこれまでにして、技術的なことを。

まず目線を上下しないこと。目線は一定の高さで動き続けます。これに伴い、敵を流れる景色の中で見続けることになります。上盤高速走圏の景色の中に敵がいる感じです。

あと、急激な方向転換は、ほぼ不可能となります。この場合やはり流れに中で身を処することになります。技を出す時も、動く流れの中での攻撃となります。

急激な方向の転換は、敵に接近し、接触し、敵をつかむことができた時です。敵をつかんで、いきたい方向に反射的に向かいながら、敵を押します。敵を押す方向は自由です。というか、敵を押す方向など意識してる時間はありません。多人数遊撃戦が進めば進むほど、敵を他の敵にぶつける、ということは難しくなります。

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