中盤整体走圏と上盤等速走圏:「基本姿勢」習得のための走圏練習方法
基本姿勢習得に向けた走圏は、「下搨掌(かとうしょう)」で行うのが最も効率的
八卦掌の練習過程において、最も重要視されているものが「走圏」である。時計回り・反時計回りで、同じ時間づつ歩き続ける練習である。特定の八卦門の中では、「百聞は一見に如かず」を「百練は一走に如かず」に言い変えるくらい重要視されている練習法である。
ほとんどの八卦掌の門派が、この「下搨掌」の姿勢で走圏を行わせる。初心者にとって、下搨掌が筋肉的に最も楽な姿勢なので、この姿勢で要求を満たすように練習をするのである。
必ず両方向で回る時間を同じにする
走圏はまず最初に、反時計回りの方向で回り始める。そして、一定時間、例えば15分歩いたならば、今度は時計周りでまた15分歩く。動画では時間の関係上、反時計回り方向で約24歩歩いた後に方向を変え、今度は時計回りで再び約24歩歩いて終わっている。
このように、走圏では、両回りそれぞれ同じ時間(又は同じ歩数)で歩くようにすることが大事である。なぜなら、実戦の場では、どちらの方向に歩を進めることになるかが分からず、仮にどちらかの方向に移動することが苦手となっていたら、スムーズな足の運用がそこで阻害されるからである。
つまり、歩を進めるにあたって、苦手な方向を作らないようにする、ということなのである。意識せずとも、どの方向にも同じスピードで移動できるようにしておくことが、遊撃戦を成功させるうえで大事なことである。
頭・腕・手を含めた上半身の姿勢にはすべて意味があるため、姿勢の要求を守ること
走圏時の上半身の姿勢に注目をしていただきたい。君が練習をするときは、動画中の上半身の姿勢を守っていただきたい。
両手の指は、目いっぱいに伸ばす
両手は、てのひらを下に、手の甲を上にし、両手指は全指を目いっぱい伸ばし開き、反り返るくらいまで伸ばす。そして両手指を向き合うようにする。
両手指のこの要求を維持し続けることは、大変きつい。指先もきついが、肩周辺もきつくなる。おそらく最初は、5分ですら耐えることができないであろう。しかしトライと休息を繰り返しながら維持する時間を延ばしていこう。5分できるようになると、時間はどんどん伸びていく。20分維持することができるようになる辺りから、効果が現れはじめる。
なぜこのようなことをするのか?その効果と併せて、説明しよう。
熱心に姿勢の維持に努め続けると、指先だけに疲労感が残るだけで、肩は疲労を感じなくなるであろう。姿勢維持のためだけの力だけが残り、それ以外の無駄な力みは消えていくからである。
その状態になると、繰り出す技に変化が生じてくる。腕を振る時に、指先だけに力(充実感)が残り、力まずとも腕を効率よく振ることができる。糸の先に重たいモノを結んで回すのと同じである。根本部分には力はなく、先だけが重たいので、早く、威力のある状態で振ることができるようになる。
八卦掌では、指先を開いた状態での手刀や掌打ち、腕つかみを頻繁に行う。指先周辺にだけ力が込められていると、その手刀は相手の腕を麻痺させ、掌打ちは相手をふっとばし、腕をつかめば一瞬で相手の姿勢を崩すことになる。
対敵イメージ走圏:引き込み旋回戦法単換掌理の「引き込み旋回戦法」の始まりとなる
対敵イメージ走圏はなぜ重要なのか?
どんな態勢からでも打ち、逃げることができるために「基本姿勢」が大事であることは分かった。では、集団でかかってくるいじめ連中に対し、捕まらないためにはどうしたらよいか。弊門で提唱する「逃げて、逃げて、逃げまくれ」はどのように実現するのか。
実現させるためには、八卦掌のエッセンス的技術である「単換掌理(たんかんしょうり)」にもとづく「斜め後方スライド技術」によっていじめ連中のアタックをかわし続ける必要がある。
斜め後方スライドには、敵との間合いが必要となる。ピッタリと貼りついてしまっていては、斜め後方スライド技術をもってしても捕まる可能性が高まる。
いじめ側集団中で最も近い敵を斜め後方に置くことで、攻撃するために急接近してきたとき、引き込みながら向きを変えて攻撃し、離脱することが可能となる。
この「斜め後方に置く」技術こそが、離脱しながら攻撃をスムーズに行うための重要点となる。この技術は、対敵イメージ走圏によって養われるのだ。
よって「対敵イメージ走圏」は、よって、単換掌理の戦闘理に基づく技を実行し、成功させるための、基本練習となる。だから重要なのである。
対敵イメージ走圏における身体操作方法(身法と発力法)
斜め後方から迫りくる敵を近づけず、敵と等間隔で歩き続ける3つの身体操作方法(三身法)
対敵イメージ走圏の練習では「回っている円の斜め後方から迫り来る敵と等間隔で歩き続けている」イメージを持って練習する。
弊門では、門下生が私と円上を同時に回り、まず私が追いかけられる役を演じ、その中で、等間隔を保つ模範演技を見せる。
次に、私が門下生の斜め後方から追いかける役を演じ、門下生に等間隔を保って歩かせる練習をする。時に私が速く歩くと、門下生も速く歩いて一瞬縮んだ距離を戻し、回る円を大きく回らせたり、小さく回らせたりする。
つまり追いかけられる側であることを意識し、逃げるために回る円孤を大きくしたり、小さくしたりして、敵を振り切るが、敵も追撃してくるので、敵を横目でとらえ続ける・・・という攻防動作を一人でイメージしながら行うのだ。
その際に用いられる身体操作方法が以下の3つの身法となる。
- 斜進翻身法(しゃしんほんしんぽう)
- 外転翻身法(がいてんほんしんぽう)
- 内転翻身法(ないてんほんしんぽう)
迫る敵と等間隔で追撃されながらも等間隔で歩く身体操作は、主に「斜進翻身法(しゃしんほんしんぽう)」で行われ、円孤に沿って歩き続けるための維持動作として、目に見えにくい「外転翻身法(がいてんほんしんぽう)」と「内転翻身法(ないてんほんしんぽう)」が用いられる。
※斜進翻身法だけでは、円孤に沿って歩くことが難しく遠心力によって円孤から身体が離れてしまうため、外転翻真法と内転翻身法の切り込み動作とひるがえし動作で遠心力に対抗する。
3身法を実行・維持するための力の発し方(三発力法)
「三発力法」とは、以下の3つである。
- 遊歩発力(ゆうほはつりょく)
- 扣擺発力(こうはいはつりょく)
- 翻身発力(ほんしんはつりょく)
発力には、他門派における「発勁(はっけい)」に相当する「敵への力の伝え方」と、遊撃戦時の慣性を克服し八卦掌の3身法の動きを助ける「操身法」がある。
【遊歩発力】
斜進翻身法で多用される。
対多人数移動遊撃戦では、敵のいないところに移動して、その途中で近寄って来る敵の側面を通り抜けながら攻撃する。攻撃のために移動の際に動作を割くのではなく、あくまでついでに攻撃するだけなのだ。
足を交差させて(交叉歩・こうしゃほ)横移動をすることで速度を落とさずに敵側面を斜めに横切っていく。その際に、前進するベクトルと、側面に押し広げるベクトルを上手く対抗させてそこから生じる張りの力を突く動作に加え、より大きな威力とする。
【扣擺発力】
外転翻身法で多用され、内転翻身法でも動作の起動元となる。
扣歩によって生じた身体のねじれを、擺歩で展開・解消し、その際の展開力を敵に伝えるもの。
身体を転身する際の速度を速めるためにも当然に扣擺発力は用いられる。扣歩によって身体が内に縮まり(縮・しゅく)、それを擺歩によって展開する。これはイメージが持ちやすい。
【翻身発力】
内転翻身法で多用され、敵から離れず食い下がる際にも大きな役割を果たす。
初学の際、内回りの身法(内転翻身法)は、敵に一瞬背を向けて転身する転身動作(外転翻身法)に比べて速度が出しにくい身法となる。
内転翻身法の速度を速め、身を翻して攻撃する際の動きを助ける際の身体運用方法として翻身発力が用いられる。
走圏では発力法中における「敵への力の伝え方」の方をメインで意識して練習する。一歩一歩歩くたびごとに、遊歩発力・扣擺発力・翻身発力によって力を伝えている意識をもって歩くことで、対敵を想定した充実した練習ができるようになる。
弱者生存の護衛護身武術を極めたい方へ~清王朝末期頃のままの八卦掌「清朝末式八卦掌」を国内で唯一伝える水野先生の道場「八卦掌水式門」入門方法
1.八卦掌水式門~清朝末期成立当時の原初スタイル八卦掌「清朝末式八卦掌」を国内で唯一指導する稀代の八卦掌家・水野先生の道場
八卦掌水式門で八卦掌第7世を掌継させていただいた、掌継人のsと申します(先生の指示で仮称とさせていただきます)。掌継門人の一人として、八卦掌水式門の紹介をしたいと思います。
八卦掌水式門は、清朝末期成立当時のままの原初スタイルの八卦掌「清朝末式八卦掌」を国内で唯一伝える八卦掌専門道場です。「単換掌の術理(単換掌理)」による「弱者使用前提」・「生存第一」の技術体系からぶれず、成立当時の目的を一心に貫く伝統門です。
八卦掌第6世の水野先生の伝える八卦掌は、強者使用前提・対一人・対試合想定の近代格闘術的八卦掌が主流となっている現代において、対多人数移動遊撃戦による弱者使用前提の撤退戦を貫いた極めて異色の存在となっています。
先生の伝える八卦掌の最大の特徴は、「単換掌の術理(水式門で先生は、「単換掌理・たんかんしょうり」と略して指導しています)」に徹している点です。
「単換掌の術理」とは、敵と接触を極力さけ、敵の力とぶつからない斜め後方へスライド移動しながら対敵対応をする、「相手次第」を排し「自分次第」にシフトした術理です。
間合いを取り、敵と力がぶつからない場所へ移動しながら「去り打ち」することを正当な戦法としているため、女性やお子さん・お年を召した方にとって極めて現実的な護身術となっています(※よって水式門では、私を含め、女性の修了者さんが多いです)。
単換掌の術理を理解するには、修行の初期段階に、術理に熟練した指導者による対面での練習を通して対敵イメージをしっかりと構築することが必要不可欠、だと先生は言います。
『八卦掌は「勢(せい)」が命の武術。前に向かってひたすら進み続けることで勢を維持せよ。後ろ敵は勢があれば追いつけない。横敵には単換掌の術理・斜め後方スライドで対応せよ。電撃奇襲をすることで、守るべき人に手を出させない、囮(おとり)護衛による中国産護衛護身武術なんだ』は先生の「口癖」化した説明ですね。
相手の侵入してくる角度や強度、そして敵動作に対する自分の身体の使い方を、先生の技を受け、または先生を試し打ちをしながら自ら身体を動かして学んでいきます。 先生は、「私の技を受けるのが最も上達する近道となる。しっかりと見てイメージを作り、独り練習の際、そのイメージを真似するんだぞ。」と語り、常に相手になってくれます。 それは初心者には果たせない役割。水式門では、先生はいつでも技を示してくれます。相手もしてくれるし、新しい技を指導するとき、使い方もしっかりと見せてくれるから、一人の練習の時でも、イメージが残るのです。
よって最初から全く一人で行うことは、リアルな敵のイメージが分からない点から、大変難しいものとなります。この問題は、私がこの場で、先生の指導を受けたほうがといいと強くすすめる理由となっています。
私も石川県在住時は遠隔地門下生でした。先生が富山に来たときは、集中的に相手になってもらいました。石川県という遠くであっても、先生の教え方のおかげで、ブレずにここまで来ることができました。
単換掌の術理に基づいた弱者生存第一の八卦掌を指導する八卦掌の教室は、日本国内では水式門だけです(それか、公にしていません)。
弱者使用前提がゆえの現実的方法で自分を守る武術に興味がある方。力任せの攻撃にも負けない護身術や八卦掌を極めたいと思う方は、水式門の扉を叩いてください。水式門なら、弱者が生き残る可能性を生じさせる八卦掌中核技術を、明快に学ぶことができます。
2.八卦掌水式門は、仮入門制の有る純然たる「伝統門」道場
八卦掌水式門は、代表である水野先生が、八卦掌第5世(梁派八卦掌第4世伝人)である師より指導許可を受けて門を開いた、純然たる「伝統門」です。それゆえ、入門資格を満たしているかを判断する仮入門制(仮入門期間中の人柄・態度を見て本入門を判断する制度)を、入門希望者すべての方に例外なく適用しています。もちろん私も仮入門期間を経て本入門しました。
水野先生が指導する八卦掌は、綺麗ごとのない護衛護身武術。一部に当然殺傷技法が伝えられ、昔の中国拳法と同じく実戦色が強い八卦掌。誰それ構わず指導することはいたしません。
特に先生は、拳法を始めた動機も真剣。他者への思いやりに欠ける人間に伝えてしまい、それで人が傷つけられてしまう事態を招くことを、心から心配しています。
よって各科に掲載された「入門資格」を満たした人間だと判断した場合にのみ、先生は本入門を認め、受け継いだ技法をお伝えしています。「八卦掌の伝統門として、門が負うべき当然の義務と配慮」。これも先生が常に話す口癖ですね。
水式門には『弱者生存の理で貫かれた護衛護身術「八卦掌」を日本全国各所に広め、誰もが、大切な人・自分を守る技術を学ぶことができる環境を創る』という揺るぎない理念があります。
先ほども触れたように、他者への思いやりに欠ける人間に伝えてしまうことは、技法が濫用され第三者が傷つく事態を招き、理念実現に真っ向から反する結果を生んでしまいます。
水野先生は、門入口を無条件に開放して指導し門を大きくすることより、たとえ仮入門制を設けて応募を敬遠されたとしても、他者への思いやりに欠ける人間に伝えてしまう事態を避けることを重視しています。
ここまで書くと、なかなか入ることのできない難しい道場だと思うかもしれませんが、そんなことはありません。仮入門制はありますが、一般的な常識と礼節、思いやりがあれば、心配する必要は全くありません。
指導を受けてみれば分かるのですが、先生はいつも、門下生のことを考え、熱心に指導してくれ、怒鳴ったりもなく、笑顔です。安心してください(無礼な態度や乱暴なふるまいには、ベテラン・初心者関係なく厳しいですが)。
仮入門期間を経て本入門となった正式門下生には、「誰もが大切な人、自分を守ることができる清朝末式八卦掌」の全てを、丁寧に、熱心に、真剣に教えてくれます。
迷ってるあなた。水式門には、積み重ねるならば、弱者と言われる者でも高みに達することができるシンプルで明快な技術体系があります。先生の温かく熱心な指導で、「守る」強さを手にしてみませんか。