楊家連身藤牌とは
連身藤牌の技術体系は、その基本を「換牌(かんぱい)」とする。※中心技法は、「連身牌」。
この換牌をもって、盾の操法を磨く。連身藤牌は清朝末式八卦掌の術理の影響を受けるため、基本の出発点も、単換刀の「翻身旋理」と「刀裏背走理」から出発する。
連身藤牌法で使う藤牌はアームシールドであるため、戦闘中、盾の持ち手を変えることはできない。よって練習する際は、左持ち、右持ち、両方を同程度練習し、どちらの手で盾を持っても攻防できるようにする。
藤牌兵の刀は、いたずらに大きな物ではなかった、と考えられる。虎衣藤牌兵の演武でも、昔日の虎衣藤牌兵の絵でも、太く大きな物は使われていない。長さが90センチ程度、そして細身の物が使われていたと考えられる。
藤牌は、直径が90センチ近くにもなる大きな盾である。しかしローマ帝国の重装歩兵が持っていたような、鉄製の重たい盾ではない。藤牌兵軍団には、機動力を活かした戦法が役割として与えられたため、盾は歩兵の機動力を損ねない軽い物でなければならない。
しかし、藤で編んだだけでは強度に不安が残ることから、野生の樹の樹液などから抽出した油を盾表側に塗って強度を上げていたので、軽いと言っても、ある程度の重さを持っていた。
現代は、クラフト強化紙(日本国内でも販売されている「クラフトバンドテープ」などの紙製のカバン作成用テープ)を使用して「コイリング編み」で編み、表面に防水性と表面強度を増す保護ニスを塗布することで、刃物による斬撃程度なら防ぐことができる藤牌を作成できる。
コイリング編みの技術が必要となるが、それほど難しくない技術である。クラフトバンド製カバンなどを作成するサイトなどで、その技法を習得できるので、お気に入りの色で編み、自宅などに護身用でおいておくと良いだろう。
下の藤牌は、クラフト強化紙で組んだものである。直系は65センチ程度。取っ手は、介護用品向けの取り付け用持ち手を使用した。腕を通す部分は、アウトドア用のナイロンベルトを使用し、より一体感をもって腕を固定できるように工夫した、現代版「藤牌」である。
八卦掌の盾術である以上移動遊撃戦となるため、両手にある程度重量のある物(藤牌と刀)を身体で操って機動力を保つ必要がある。
よって、身体移動で刃先と藤牌を動かして、敵の攻撃をワイパーが動いて弾くかのように防ぎ、時に攻撃したりする。手首の返しで藤牌と刀を動かすことはできないと考えた方がいい。
よって連身藤牌でも、換牌によって身体で盾・刀を引っ張るようにして使用するのが基本功となる。
中国の盾術は、機動力を活かし、その場にとどまらない技術体系を持つものが多いため、盾を頻繁に動かす。つまり、盾内に常に身体を隠すことにこだわらない。
特に連身藤牌では、移動で防御し、その補助として敵とぶつかる際、盾や刀で弾く、という考え方を採用している。
西洋盾術を修める者が、中国盾術を見て、「身体が盾の外から飛び出している」と批判するが、そもそも西洋の盾術と東洋藤牌兵盾術の戦法の違いを考慮してない批判である。盾内に身を隠して移動するのは、戦場において前方敵陣に突撃する時だけである。
楊家連身藤牌のように、八卦掌の機動力で戦う盾術で、盾内に身体を収め続けることは、大変な無理を生じさせる。盾内に身体を収めて身を守るよりも、敵の攻撃射程から離れての防御に重点を置き、盾を時に武器として使う方が良いと考えたのである。
藤牌兵刀は、転掌刀術(八卦刀術)で使用するものより短い刀となる。全長は70センチ~60センチ程度。片手に大きな盾を持つため両手は使用できないので、取り回しがしやすいように刀長が短いものを使用した。
参考までに「虎衣藤牌兵刀」は、主要武器が刀であり、精鋭部隊で刀術の技量も高かったため、虎衣藤牌兵刀は90センチ強で、細身の刀を使用した。
換牌(かんぱい・かんはい)
楊家連身藤牌の「基本功」的型となる。身体操作の基本を、清朝末式八卦掌刀術の「単換刀」とする。
片方の手づつで、刀・藤牌を動かす練習である。単換刀の理である「翻身旋理」「刀裏背走理」を意識して練習する。
つまり、斜め後方スライドの転身によって盾・刀を引っ張って動かす。両道具とも、取り回しのしにくい道具である。片方にもう一方の道具を持った状態で、身体に沿って動かすことに慣れるための、重要な練習となるのだ。
特に藤牌は、その面積が大きいため、慣れないと己の身体に衝突しかねない。敵の圧力にさらされた状態で、面積の大きい道具を扱うには、事前の準備にて、「身体にぶつけてしまわない技術」を習得して置く必要がある。
楊家連身藤牌では、使用する盾がアームシールド形式であるため、戦闘中持ち替えることはできない。よって、左右交互に盾の持ち手を換えて、同程度練習しておくこと。
藤牌を頭上に上げながら、身体をくぐらす。くぐる際、藤牌は、背中の後ろをクロスしながら上がり、そして下がる段階へとつながっていく。
藤牌を下に下げたら、今までの円弧移動と逆方向への移動に沿って、翻身発力をもって藤牌を翻り打ち、円弧軌道移動の速度に勢をつける。藤牌が腕に固定されているため、手のみの場合と違い、腕を大きく拍打できないが、藤牌の抵抗力があるため、力を込めて拍打しやすい。
連身牌(れんしんぱい・れんしんはい)
楊家連身藤牌の、中心技となる牌法である。
「連身」の字のごとく、刀身と牌身をすぐ近くに近づけて、連なるように回し、まわし斬り、まわし打ちをする。
動画では、斜め後方敵に差し出した牌の下から、上弦半円にて刺突攻撃をする。刺突攻撃した刀を、そのまま身体移動で上方へ刀先をひるがえすことによって、展開攻撃をする。
展開攻撃は大変予測しにくものであり、接近戦の意図で近づいた敵はたいがい、この展開攻撃でダメージを受ける。
動画では、「藤牌下からの刺突攻撃」となっているが、その他の攻撃方法も使用できる。その意味で後述する「サイ牌」は、連身牌の変化型ととらえることもできる。
藤牌上から、藤牌をまたぐようにして刺突する攻撃は、盾術では一般的な攻撃方法となるため、主要型になったと考えられる。
按牌(あんぱい・あんはい)
藤牌にて、逆袈裟斬りの要領で、去り打ち(去り叩き)をする動作を練習する。
上から逆ハの字で押さえつける感じで打ち下ろす。
連身藤牌は手返しのよさを発揮する武器術ではないため、何歩も歩きながら行うと、攻撃対象に効率的に攻撃できる。
按牌とサイ牌では、積極的に藤牌で攻撃をする。換牌と連身牌では、刀攻撃の際の防御・補助攻撃の意味合いが強かった。
按牌による、後ろ敵攻撃に対する打ち方は、手刀攻撃の要領で行う「逆袈裟斬り」となる。八卦掌は「袈裟斬り・引き込みの拳法」ではなく、「逆袈裟斬りによる去り打ち」なのである。。
サイ牌(さいぱい・さいはい)
盾術で頻繁に用いられる攻撃方法を採用した単式練習型である。
藤牌の上をまたぐように敵に刺突攻撃をする動作だが、この動きは、後退スライド時の翻身旋理によって急速に肩を入れる際の動きと連動させる意識を持つ。
そのようにしないと、刃先先行で攻撃できない。
弱者生存の護衛護身武術を極めたい方へ~清王朝末期頃のままの八卦掌「清朝末式八卦掌」を国内で唯一伝える水野先生の道場「八卦掌水式門」入門方法
1.八卦掌水式門~清朝末期成立当時の原初スタイル八卦掌「清朝末式八卦掌」を国内で唯一指導する稀代の八卦掌家・水野先生の道場
八卦掌水式門で八卦掌第7世を掌継させていただいた、掌継人のsと申します(先生の指示で仮称とさせていただきます)。掌継門人の一人として、八卦掌水式門の紹介をしたいと思います。
八卦掌水式門は、清朝末期成立当時のままの原初スタイルの八卦掌「清朝末式八卦掌」を国内で唯一伝える八卦掌専門道場です。「単換掌の術理(単換掌理)」による「弱者使用前提」・「生存第一」の技術体系からぶれず、成立当時の目的を一心に貫く伝統門です。
八卦掌第6世の水野先生の伝える八卦掌は、強者使用前提・対一人・対試合想定の近代格闘術的八卦掌が主流となっている現代において、対多人数移動遊撃戦による弱者使用前提の撤退戦を貫いた極めて異色の存在となっています。
先生の伝える八卦掌の最大の特徴は、「単換掌の術理(水式門で先生は、「単換掌理・たんかんしょうり」と略して指導しています)」に徹している点です。
「単換掌の術理」とは、敵と接触を極力さけ、敵の力とぶつからない斜め後方へスライド移動しながら対敵対応をする、「相手次第」を排し「自分次第」にシフトした術理です。
間合いを取り、敵と力がぶつからない場所へ移動しながら「去り打ち」することを正当な戦法としているため、女性やお子さん・お年を召した方にとって極めて現実的な護身術となっています(※よって水式門では、私を含め、女性の修了者さんが多いです)。
単換掌の術理を理解するには、修行の初期段階に、術理に熟練した指導者による対面での練習を通して対敵イメージをしっかりと構築することが必要不可欠、だと先生は言います。
『八卦掌は「勢(せい)」が命の武術。前に向かってひたすら進み続けることで勢を維持せよ。後ろ敵は勢があれば追いつけない。横敵には単換掌の術理・斜め後方スライドで対応せよ。電撃奇襲をすることで、守るべき人に手を出させない、囮(おとり)護衛による中国産護衛護身武術なんだ』は先生の「口癖」化した説明ですね。
相手の侵入してくる角度や強度、そして敵動作に対する自分の身体の使い方を、先生の技を受け、または先生を試し打ちをしながら自ら身体を動かして学んでいきます。 先生は、「私の技を受けるのが最も上達する近道となる。しっかりと見てイメージを作り、独り練習の際、そのイメージを真似するんだぞ。」と語り、常に相手になってくれます。 それは初心者には果たせない役割。水式門では、先生はいつでも技を示してくれます。相手もしてくれるし、新しい技を指導するとき、使い方もしっかりと見せてくれるから、一人の練習の時でも、イメージが残るのです。
よって最初から全く一人で行うことは、リアルな敵のイメージが分からない点から、大変難しいものとなります。この問題は、私がこの場で、先生の指導を受けたほうがといいと強くすすめる理由となっています。
私も石川県在住時は遠隔地門下生でした。先生が富山に来たときは、集中的に相手になってもらいました。石川県という遠くであっても、先生の教え方のおかげで、ブレずにここまで来ることができました。
単換掌の術理に基づいた弱者生存第一の八卦掌を指導する八卦掌の教室は、日本国内では水式門だけです(それか、公にしていません)。
弱者使用前提がゆえの現実的方法で自分を守る武術に興味がある方。力任せの攻撃にも負けない護身術や八卦掌を極めたいと思う方は、水式門の扉を叩いてください。水式門なら、弱者が生き残る可能性を生じさせる八卦掌中核技術を、明快に学ぶことができます。
2.八卦掌水式門は、仮入門制の有る純然たる「伝統門」道場
八卦掌水式門は、代表である水野先生が、八卦掌第5世(梁派八卦掌第4世伝人)である師より指導許可を受けて門を開いた、純然たる「伝統門」です。それゆえ、入門資格を満たしているかを判断する仮入門制(仮入門期間中の人柄・態度を見て本入門を判断する制度)を、入門希望者すべての方に例外なく適用しています。もちろん私も仮入門期間を経て本入門しました。
水野先生が指導する八卦掌は、綺麗ごとのない護衛護身武術。一部に当然殺傷技法が伝えられ、昔の中国拳法と同じく実戦色が強い八卦掌。誰それ構わず指導することはいたしません。
特に先生は、拳法を始めた動機も真剣。他者への思いやりに欠ける人間に伝えてしまい、それで人が傷つけられてしまう事態を招くことを、心から心配しています。
よって各科に掲載された「入門資格」を満たした人間だと判断した場合にのみ、先生は本入門を認め、受け継いだ技法をお伝えしています。「八卦掌の伝統門として、門が負うべき当然の義務と配慮」。これも先生が常に話す口癖ですね。
水式門には『弱者生存の理で貫かれた護衛護身術「八卦掌」を日本全国各所に広め、誰もが、大切な人・自分を守る技術を学ぶことができる環境を創る』という揺るぎない理念があります。
先ほども触れたように、他者への思いやりに欠ける人間に伝えてしまうことは、技法が濫用され第三者が傷つく事態を招き、理念実現に真っ向から反する結果を生んでしまいます。
水野先生は、門入口を無条件に開放して指導し門を大きくすることより、たとえ仮入門制を設けて応募を敬遠されたとしても、他者への思いやりに欠ける人間に伝えてしまう事態を避けることを重視しています。
ここまで書くと、なかなか入ることのできない難しい道場だと思うかもしれませんが、そんなことはありません。仮入門制はありますが、一般的な常識と礼節、思いやりがあれば、心配する必要は全くありません。
指導を受けてみれば分かるのですが、先生はいつも、門下生のことを考え、熱心に指導してくれ、怒鳴ったりもなく、笑顔です。安心してください(無礼な態度や乱暴なふるまいには、ベテラン・初心者関係なく厳しいですが)。
仮入門期間を経て本入門となった正式門下生には、「誰もが大切な人、自分を守ることができる清朝末式八卦掌」の全てを、丁寧に、熱心に、真剣に教えてくれます。
迷ってるあなた。水式門には、積み重ねるならば、弱者と言われる者でも高みに達することができるシンプルで明快な技術体系があります。先生の温かく熱心な指導で、「守る」強さを手にしてみませんか。