単招式・遊歩連捶|前敵スライド離脱攻撃(順勢掌理)による解説:はじめに
遊歩連捶(ゆうほれんすい)は、後方から迫る敵(複数の場合を想定している)を、敵に一瞬背を向けて後退スライドし離脱する単換掌理技の外転翻身斜め後方スライド身法で振り切った後、目の前に現れた敵にスライド離脱して衝突を避けながら、横向きに連続した捶を打つ単招式となる。
口で説明しても分かりにくいため、まず『はじめに』の動画を見てほしい。
振りかぶるような大きな動作から始まっているはずだ。あれは、敵の手を下からすくい上げるようにして払っているのだ。
払った勢い利用して後退スライドして間合いを作り離脱し転身→前に現れた敵に円孤を描くスライド離脱の軌道の上で、連続した捶により電撃攻撃をするのである。
連続した捶の部分についてもう少しふれてみよう。
前の敵に対し円孤を描きスライドして離脱しながら、近付いてくる敵の半歩前を進むことで引き込み、射程圏内に入ると同時に捶で側面部を連続攻撃して足を止め、離脱する。
振り払いスライド離脱の後に、転身して前敵の前に不意に移動し、奇襲を仕掛けるスタイルである。振り向いた直後に前方向にいる攻撃照準に対し、態勢を崩してでも攻撃できる体幹力が必要となる。
この一連の動作を体得するため、遊歩連捶では、遊歩で連続した捶を打ち、転身後攻撃する型練習と、目標物を置いて目標に向かって転身時に奇襲する練習の、ふたつをおこなうんだ。
単招式・遊歩連捶|前敵スライド離脱攻撃(順勢掌理)による解説:基本型による動作習得練習
遊歩連捶は、「うしろから迫った敵を後退スライドで振り払ったついでに、眼の前に現れた敵を攻撃する」シチュエーションを想定して練習しよう。
このパターンは、対多人数の戦いにおいて非常に多いからだ。
よって基本型の練習段階から、(1)単換掌理の外転翻身斜め後方スライドの動作、(2)遊歩にて連続した捶を横打ちする動作、(3)進行方向へと攻撃する動作、の3つをおこなう。
日頃することのない動きではあるが、むずかしくないし、バク宙などのアクロバティックな動作をおこなう才能もいらない。ただ、単純な動作を、あきれるくらい繰り返して、「その時」が来たときに無意識に身体がうごくようにしておくことだ。
考えてから動いていたのでは間に合わない。
とがったモノが目の先に来たら、目をつぶるだろう?目をつぶる、金的などの急所を攻撃された時に、無意識に内またになる、などの無意識の防衛反射の速度には、私たちがどれだけ練習してもその速さでかなわない。
その防衛反射がおこなわれるような箇所への攻撃はさけ、それ以外の場所を、こちらは練習の果てに体得した無意識レベルの動きで攻撃する。目・金的以外なら、無意識レベルの動きに高めた攻撃速度で、十分攻撃が可能だからだ。
ショウ泥滑歩の練習では、円孤に沿ったスライド離脱で連捶するが、基本型では、捶を打つ動作と前敵に捶を打つ動作に集中して流れを覚えよう。そこから、無意識レベルへの旅が始まる。きっとできるから、まず基本の動きから覚えよう。
斜め後ろから攻撃してきた敵の手を下からすくい上げて防ぐイメージで、身をひるがえし始める。
すくい上げた手を止めず、そのまま我の後方へと回しながら、身体も一気に転身させる。
ひるがえったあと、遊歩で横方向へと移動しながら、進行方向側の手から捶を連続して、敵側面部へと打ち込む。
2発目を打ち終わったあと、進行方向へ身体を開きながら、前方向にいる敵に向かって捶を打つ。
単招式・遊歩連捶|前敵スライド離脱攻撃(順勢掌理)による解説:移動し(歩き)ながら打つ練習
普通の速度で歩きながら打つ練習
歩きながら打つ練習では、「後方スライド身法にて、後から迫った来た敵の手を、下からすくい上げるようにして引っかけ身をひるがえす」動作からしっかりとおこなうこと。 振りかぶって連捶に移る前のこの動作の段階は、君の身を守る動作。八卦掌という中国拳法は、攻撃よりも我が身の防御の方に重点を置いた、少し変わった拳法なんだ。後方敵の攻撃の手をしっかりと振り払う意識を持って練習しよう。実はここが、かなり重要な点でもある。
振り払って離脱したことをイメージしながら(斜め前に)移動し、自分の目の前に現れた敵に、またもスライドしながら離れつつ、横向きの姿勢のままで掌底突きである連続した捶を打ちこむ。
ショウ泥滑歩の練習に移る前に、実際に君が歩く速度で行うこの段階での練習にて、「歩き横打ち」の動作に慣れておこう。八卦掌では、この動きが、対多人数を戦う場面で欠かすことができない。
ショウ泥滑歩で移動しながら打つ練習
ショウ泥滑歩による練習では、「前の敵の手前で円孤を描いてスライド離脱し、追撃のため寄ってきた敵を振り切りながら側面部に向かって連捶」のイメージでおこなう。
歴史に詳しい人なら分かるが、これは、日露戦争の時の「日本海海戦」で、日本艦隊がロシアバルチック艦隊の眼前にておこなった艦隊操船行動(T字戦法・東郷ターン)と似ている。
史実のように進行方向を完全に反対側へ向けてしまうようなターンはしない。しかし敵に近付きながら円孤に沿って旋回することで敵が寄ってきて並走状態になり、敵より一歩前に出たところで連捶を放って敵の足を止め、通り過ぎる一連の身体操作は、本当によく似ている。
敵直前でカクカクとした滑らかさのない動きでスライド離脱を開始しても、動きの途切れた瞬間瞬間で、敵に捕まってしまう。そうではなく、敵のかなり手前からスライド離脱することで、敵は思わず引き込まれるように寄ってきて、みずから(こちらが出向くことなく)連捶の射程圏内に入ってくるのだ。
敵が射程圏内に入ったと想定して、横向き移動を変えることなく敵に並走するイメージをもってその動作の中で連捶し、スライド離脱を加速させながら安全圏に走り去る。
単招式・遊歩連捶|前敵スライド離脱攻撃(順勢掌理)による解説:目標物を使った対人想定練習
遊歩連捶の対人想定練習をしよう。平穿掌にしろ双按連捶にしろ、単招式では、必ず目標物を使った練習をおこなう必要がある。必要な理由とは・・・「独りで型を練習しているだけでは、得られない体幹力を養うため」だからなんだ。
拳法にしろ、野球にしろ、スキーにしろ、そのスポーツを実際におこなうシチュエーションにて動きを体験しないと、実際の場面(試合や実戦)で「磨き抜かれて洗練された動き」で動くことができない。
野球ならば、ピッチャーの投げた球を打ち、走る、飛んできたボールを捕り、返球するなどの動作を、人との練習の中で体感し、経験を積み、足らない点などを向上させて洗練させていく。スキーも同じ。実際に雪の上を滑って、転んで、ターンして、走って(クロスカントリー)などして、動きを磨いていく。
拳法は、人を傷つけ、人を戦闘不能もしくは戦意を喪失させ、我が身を守る技術体系。人を殴ることは、昔でさえも激しくできなかったため、約束組手や、寸止め練習などで実戦の模擬体験がおこなわれてきた。
しかし八卦掌は、「間合い(まあい)」が大変重要な拳法。間合いというのは、寸止めや約束組手ではなかなか習得できない(人が必要なため、回数をこなすことができないという原因も大きい)。そこで、目標物を使った対人想定練習が必要となる。
遊歩連捶は、振りかぶって、うしろから迫る敵を振り切り、からだが不安定になった状態で前の敵に対し打つことが多い技。そして前方で立ちふさがる敵に「勢い」を落とされないで、通り過ぎる必要のある技。「身体バランスが崩れても命中させる能力」と、「進行方向をふさがれ勢いがそがれないよう、敵に攻撃がとどくギリギリの位置で離脱の円孤軌道をきざむ能力」、のふたつが要求される。
よって遊歩連捶は、対人想定練習が特に重要となる。ひたすら目標物横を通り過ぎながら打つ練習を繰り返す必要があるんだ。動画で、ひたすら打ち去っている場面をアップしているのはそのため。動きを君の脳内に焼き付け、同じように練習してみよう。
最初は、「空打ち練習」の繰り返しから始める、振り払って身体が振れている状態でも、安定して敵側面部へ突きを打ち込むことができる能力の基本が身についてくるだろう。
空打ち練習である程度の命中率を得たら、次は実際に目標物を打つ練習をおこなう。ここからが本番となる。実際に目標物を打つまでの動作を行っても、自分の身体がコントロールできるように、動きに慣れていこう。
実際に打つ練習で重視するのは、「掌底部分がなんとか届く円孤軌道を確認しながら、間合いをからだで覚えていく」こと。
捶は掌底打ちのため、八卦掌の穿掌と違って射程距離が15センチほど短くくなる。不利ではあるが、しっかりと強い力で押し打つことができるメリットがある。
よって、当たる当たらないは、大変重要なこと。射程距離が短くとも、対人想定練習による実打練習を繰り返すことで、何も練習していないいじめ連中の防御の手の横をすり抜けて、押し当てることができるようになる。
当たるか当たらないかの絶妙な間合いを保ったうえでスライド離脱をおこないつつ命中させることが出来るようになったら、「離脱しながらも、敵の半歩前の位置をたもって並走しながら攻撃している」感覚を実感できるようになる。この感覚こそ、八卦掌の達人の持つ感覚なんだ。ワクワクしながらその境地を目指していこう。
弱者生存の護衛護身武術を極めたい方へ~清王朝末期頃のままの八卦掌「清朝末式八卦掌」を国内で唯一伝える水野先生の道場「八卦掌水式門」入門方法
1.八卦掌水式門~清朝末期成立当時の原初スタイル八卦掌「清朝末式八卦掌」を国内で唯一指導する稀代の八卦掌家・水野先生の道場
八卦掌水式門で八卦掌第7世を掌継させていただいた、掌継人のsと申します(先生の指示で仮称とさせていただきます)。掌継門人の一人として、八卦掌水式門の紹介をしたいと思います。
八卦掌水式門は、清朝末期成立当時のままの原初スタイルの八卦掌「清朝末式八卦掌」を国内で唯一伝える八卦掌専門道場です。「単換掌の術理(単換掌理)」による「弱者使用前提」・「生存第一」の技術体系からぶれず、成立当時の目的を一心に貫く伝統門です。
八卦掌第6世の水野先生の伝える八卦掌は、強者使用前提・対一人・対試合想定の近代格闘術的八卦掌が主流となっている現代において、対多人数移動遊撃戦による弱者使用前提の撤退戦を貫いた極めて異色の存在となっています。
先生の伝える八卦掌の最大の特徴は、「単換掌の術理(水式門で先生は、「単換掌理・たんかんしょうり」と略して指導しています)」に徹している点です。
「単換掌の術理」とは、敵と接触を極力さけ、敵の力とぶつからない斜め後方へスライド移動しながら対敵対応をする、「相手次第」を排し「自分次第」にシフトした術理です。
間合いを取り、敵と力がぶつからない場所へ移動しながら「去り打ち」することを正当な戦法としているため、女性やお子さん・お年を召した方にとって極めて現実的な護身術となっています(※よって水式門では、私を含め、女性の修了者さんが多いです)。
単換掌の術理を理解するには、修行の初期段階に、術理に熟練した指導者による対面での練習を通して対敵イメージをしっかりと構築することが必要不可欠、だと先生は言います。
『八卦掌は「勢(せい)」が命の武術。前に向かってひたすら進み続けることで勢を維持せよ。後ろ敵は勢があれば追いつけない。横敵には単換掌の術理・斜め後方スライドで対応せよ。電撃奇襲をすることで、守るべき人に手を出させない、囮(おとり)護衛による中国産護衛護身武術なんだ』は先生の「口癖」化した説明ですね。
相手の侵入してくる角度や強度、そして敵動作に対する自分の身体の使い方を、先生の技を受け、または先生を試し打ちをしながら自ら身体を動かして学んでいきます。 先生は、「私の技を受けるのが最も上達する近道となる。しっかりと見てイメージを作り、独り練習の際、そのイメージを真似するんだぞ。」と語り、常に相手になってくれます。 それは初心者には果たせない役割。水式門では、先生はいつでも技を示してくれます。相手もしてくれるし、新しい技を指導するとき、使い方もしっかりと見せてくれるから、一人の練習の時でも、イメージが残るのです。
よって最初から全く一人で行うことは、リアルな敵のイメージが分からない点から、大変難しいものとなります。この問題は、私がこの場で、先生の指導を受けたほうがといいと強くすすめる理由となっています。
私も石川県在住時は遠隔地門下生でした。先生が富山に来たときは、集中的に相手になってもらいました。石川県という遠くであっても、先生の教え方のおかげで、ブレずにここまで来ることができました。
単換掌の術理に基づいた弱者生存第一の八卦掌を指導する八卦掌の教室は、日本国内では水式門だけです(それか、公にしていません)。
弱者使用前提がゆえの現実的方法で自分を守る武術に興味がある方。力任せの攻撃にも負けない護身術や八卦掌を極めたいと思う方は、水式門の扉を叩いてください。水式門なら、弱者が生き残る可能性を生じさせる八卦掌中核技術を、明快に学ぶことができます。
2.八卦掌水式門は、仮入門制の有る純然たる「伝統門」道場
八卦掌水式門は、代表である水野先生が、八卦掌第5世(梁派八卦掌第4世伝人)である師より指導許可を受けて門を開いた、純然たる「伝統門」です。それゆえ、入門資格を満たしているかを判断する仮入門制(仮入門期間中の人柄・態度を見て本入門を判断する制度)を、入門希望者すべての方に例外なく適用しています。もちろん私も仮入門期間を経て本入門しました。
水野先生が指導する八卦掌は、綺麗ごとのない護衛護身武術。一部に当然殺傷技法が伝えられ、昔の中国拳法と同じく実戦色が強い八卦掌。誰それ構わず指導することはいたしません。
特に先生は、拳法を始めた動機も真剣。他者への思いやりに欠ける人間に伝えてしまい、それで人が傷つけられてしまう事態を招くことを、心から心配しています。
よって各科に掲載された「入門資格」を満たした人間だと判断した場合にのみ、先生は本入門を認め、受け継いだ技法をお伝えしています。「八卦掌の伝統門として、門が負うべき当然の義務と配慮」。これも先生が常に話す口癖ですね。
水式門には『弱者生存の理で貫かれた護衛護身術「八卦掌」を日本全国各所に広め、誰もが、大切な人・自分を守る技術を学ぶことができる環境を創る』という揺るぎない理念があります。
先ほども触れたように、他者への思いやりに欠ける人間に伝えてしまうことは、技法が濫用され第三者が傷つく事態を招き、理念実現に真っ向から反する結果を生んでしまいます。
水野先生は、門入口を無条件に開放して指導し門を大きくすることより、たとえ仮入門制を設けて応募を敬遠されたとしても、他者への思いやりに欠ける人間に伝えてしまう事態を避けることを重視しています。
ここまで書くと、なかなか入ることのできない難しい道場だと思うかもしれませんが、そんなことはありません。仮入門制はありますが、一般的な常識と礼節、思いやりがあれば、心配する必要は全くありません。
指導を受けてみれば分かるのですが、先生はいつも、門下生のことを考え、熱心に指導してくれ、怒鳴ったりもなく、笑顔です。安心してください(無礼な態度や乱暴なふるまいには、ベテラン・初心者関係なく厳しいですが)。
仮入門期間を経て本入門となった正式門下生には、「誰もが大切な人、自分を守ることができる清朝末式八卦掌」の全てを、丁寧に、熱心に、真剣に教えてくれます。
迷ってるあなた。水式門には、積み重ねるならば、弱者と言われる者でも高みに達することができるシンプルで明快な技術体系があります。先生の温かく熱心な指導で、「守る」強さを手にしてみませんか。