
八卦掌が八卦陰陽理論の影響を受ける前の「転掌」と呼ばれていた時代の主要転掌式を元に構成された刀術を、「転掌刀」と呼ぶ。
清朝末期成立当時の八卦掌を伝える八卦掌水式門では、刀術も当然、原初時代に成立した刀術を伝えている。
その特徴は、単換掌・双換掌の身法・主要転掌式の身法・術理を用いた、斜め後方スライドの移動斬り刀術である。対武器戦ゆえ、一刀一刀ごとにとにかく移動し距離をとり、徹底的の敵の集団の外に外に出て、生存を図る刀術となる。
その斬り方は、移動推進力を利用したぶつけ斬り・下がりながらの下ろし斬り・下がりながらの引き斬りを主要な攻防技法としている。
現在、八卦掌水式門の代表・水野は、この転掌式が成立が早かったか、遊身大刀が成立が早かったか研究中である。しかし現時点で分かっていることは、両方の技法も、力の弱い身体的資源不利者が使用前提となっている、倒すよりも生存を第一とした刀術であるという点である。
このように密接に結びついた両技術は、互いの技法を会得する際の術理を腹落ちさせる時点で役立つものである。あなたにとってもう一人の先生「刀術先生」となろう。
転掌刀の内容
転掌刀の成立過程
転掌刀における術理
転掌刀術「陰陽上斬刀」解説
転掌刀術「按刀」解説
弱者生存の護衛護身術を極めたい方へ~昔日(清王朝末期頃)の八卦掌を伝える水野先生の道場「八卦掌水式門」入門方法
転掌刀の内容
転掌刀術は、八卦掌が「転掌」と呼ばれていた頃に行われていた、転掌式をもとに作成された刀術となる。
転掌時代は、八卦陰陽理論の影響を受けていなかったため、技の数を「8」にこだわることは当然なかった。
よって、転掌刀術における主要型は
- 陰陽上斬刀
- 按刀
- 上翻サイ刀
- 背身刀
の4つとなる。※名称は、師の口伝による
これらに、八卦掌の源泉的刀術たる「単換刀」、陰陽上斬刀の変化型たる「叉子刀」、上翻サイ刀の別法たる「扎刀「を加え、八卦掌の修行期間中を通して学習する。よって刀術として練習する型は、実質7つとなる。
※撩陰刀は、遊身大刀における撩陰大刀を練習するときに、一緒に習う。
転掌刀の成立過程
戦場における藤牌兵の戦場刀術
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単換刀
創始者(董海川)が経験したことのある武術(戦場における刀兵の刀術)と、宮中内で宦官や女官が習得可能な技術体系を創る意図が合わさって、転掌の原型たる単換刀が生まれる。
宮中内御用達武術として採用されるために、「弱者使用前提の囮護衛・対多人数想定・対強者想定・対武器想定」を満たす技術「斜め後方スライド撤退戦対敵身法」が生まれ、それを支える土台術理「翻身旋理・刀裏背走理」が明確となる。
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単換掌
目指すは徒手(素手)による護衛術であるため、徒手ならではの手返しの良さを採り入れ、単換刀から「単換掌」が誕生し、「単換掌の術理」を原則とする「転掌」が産声を上げる。
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双換掌
単換刀は、全身を使って敵に背を向け翻り、移動斬りをする身法であるため、その身法を徒手技法に採り入れるため、「双換掌」が誕生する。
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主要転掌式(下搨掌・推掌・托天掌・陰陽魚掌・仙人観棋掌 ※諸説あり)
技法の洗練化。真後ろの敵に対する防御として、顔を進行方向に向け勢を落とさず進み続けるための「移動時基本姿勢走圏」・「ショウ泥歩・抓地牢(そうちろう)による対敵走圏」の両走圏技法、ななめ後方から猛接近する敵に対するいくつかの対処法として、「転掌式」が生まれる。
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転掌刀・双匕首
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遊身大刀
遊身大刀の方が、転掌刀より先に成立した可能性もある(両手にて大刀を持ち移動しつづけるため、身体で移動斬りをする意識がより一層求められるから)。今後の研究により、成立過程が前後する可能性がある。
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双身槍
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定式八掌
八卦陰陽理論の引用による「八卦掌」への名称変更と、他門派との交流試合に勝つための格闘術化により、対一人想定の型が加わって、転掌式が8つとなり「定式八掌」となる。
転掌刀における術理
清朝末式八卦掌の術理の根幹は、単換掌の術理である。単換掌の術理は、その動作の典型的流れより、「斜め後方スライド撤退戦対敵身法の術理」となる。
斜め後方スライドは、敵に背を向けないで行う「内転翻身斜め後方スライド」と、敵に一瞬背を向ける「外転翻身斜め後方スライド」に分かれる。
徒手における基本技「単換掌」は、徒手ならではの手返しの良さから、内転翻身を採る。しかし転掌刀術をはじめとする武器術は、その手返しの悪さと間合いの大きさから、外転翻身を原則・基本とする。武器術に見られる外転翻身の身法を、徒手の型に反映させたのが、八卦掌のもう一つの大基本技「双換掌」である。
外転翻身も、斜め後方スライドの術理である以上、単換刀で学ぶ、斜め後方スライドを無駄なく勢を落とさず実行するために術理「翻身旋理」と「刀裏背走理」の両理を根本とする。
「翻身旋理・刀裏背走理」については、清朝末式八卦掌全伝 における単換刀で学ぶ清朝末式八卦掌原点術理|翻身旋理と刀裏背走理 を参考にしてもらいたい。
転掌刀術においては、それは当然「転掌」を元にした刀術であるため、単換刀でしっかりと両理を学習したうえで、転掌刀の学習に入ることになる。
転掌刀術「陰陽上斬刀」解説
陰陽上斬刀は、徒手における3大基本型の一つ「双換掌」の身法をそのまま用いた型となる。
単換刀に含まれる、刀裏背走理による末端手の体軸上くぐり動作(蓋手掌・がいしゅしょう)を、持ち替えた手による刀によって行う。
よって修行者は、陰陽上斬刀を学習する前に、所属する門派の双換掌を学習するのが良い。もしくは、転掌式の陰陽魚掌でもよい。
単換刀・按刀と違い、敵へのけん制を出した瞬間に、持ち手を換え、そして刀を背負うようにして上斬りする。よって『上斬』との名がついた。
学習の際は、必ず、一刀ごとに3~4歩歩くこと。移動による防御は、対武器戦における命綱である。敵の眼の前にとどまって手先だけで防いでいたら、瞬く間に敵の刃先が当たり、失血死となる。
転掌刀術「按刀」解説
ここでは、後方スライド撤退戦(単換掌理)対敵身法の基本である、「内転翻身斜め後方スライド」身法を利用した刀法の基本技「按刀(あんとう)」を解説する。
昔日術理の移動遊撃戦八卦掌の転掌刀術では、手先の動きや手首の返しによって斬りつけるのではない。
使用する刀(もしくは棒)は、重たくて手入れもされていないものが前提である(もしくは周辺に落ちている棒)。その移動推進力によって斬りつけ動作を発し、威力を出し、移動という名の防御をし、重たい刀を下ろして下ろし斬りし、敵の足を止め、けん制し、突出した敵の部位を斬って殺傷する。
昔日術理のショウ泥歩にて前方向を見て移動し続け、通り抜けながら斬り、移動を止めないまま斜め後方スライド身法にて向きを変え、敵の斬撃の射程照準をずらしながら移動攻防をする。
按刀は、振り向きざまに刀を出して敵の攻撃を受け、もしくはけん制し足を止め、身をひるがえす動作とともに刀を持ち替え斬り下ろす。
単換刀と違い、手を持ち替えることで射程距離が少し伸びるため、後方の敵の突出した部位に斬撃が当たりやすくなる。
按刀は、振り向きざまに刀を出して、そのまま振り上げ、敵の攻撃を受けることよりも足を止めることを目的とする技である。そして、けん制し足を止めた敵に対し、上に振り上げた状態で刀の持ち手を替え、斬り下ろす。持ち替えることで単換刀と違いが生じる、単換刀の変化型的基本技となる。
武器を持ち替え、肩を入れて後方へ去り斬りと抑え斬りをする動作は、双短棒(双匕首・そうひしゅ)や双身槍で頻繁に見られる動きとなるため、頻出術理を含んでいることになる。
つまり按刀は単換刀から出た変化型ながら、変化型だけで収まらない重要性がある。上記の重要術理を武器にて初めて本格的に学ぶ刀術型なのである。 繰り返すが、移動しながら「受け」と「けん制」を同時に行い、上方へ刀を持ち上げ斬り上げ、刀を持ち替えおさえ斬る動作が、清王朝末期頃の転掌期の術理を採る徒手転掌・転掌刀術の根幹基本であるため、しっかりと術理を意識し学習したい。
最初は定歩にて手法を学習し、「按」にて斬り下ろす際の肩付近の要訣をからだに覚えさせる。
手法を定歩で体現できるようになったら、足を動かし、ショウ泥滑歩による移動の中で敵のイメージをもって全ての要訣を実行できるよう繰り返す。
按刀は、後方から来る敵に、振り向きざまに刀を出して動きを止めけん制し、身をひるがえす動作とともに刀を持ち替え斬り下ろす技となる。斬り下ろす動作も含め、すべてを斜め後方スライドの移動身法と共に行うこと。
両足をそろえ、前に置いた刀を横方向へ斬り開き、からだの展開とともに手を返し刀を持ち上げ、頭上で持ち替え、そのまま半円を描いて振り下ろす。
斬り下ろす時、肩を開き得る目いっぱいの軌道で斬り、後方敵への去り斬り攻撃を意識する。
八卦掌水式館 館長・転掌八卦門 開祖 水野義人のプロフィール

水野義人(活動名:水野式人)
八卦掌水式館館長。八卦掌第6世。楊家伝転掌第8世掌継人。転掌八卦門開祖。弱者生存の理「単換掌の術理」を用い移動遊撃戦で戦うことを特色とする、清朝末期頃成立当時のままの八卦掌原型武術「転掌」を、世界で唯一公に伝える、転掌グランド・マスター。
転掌八卦門の開祖である館長の、転掌マスター養成ブログ更新中。転掌・八卦掌修行者のみならず、すべての武術において達人となることを夢みる方に有益な、館長の語録を随時更新中。
「転掌マスターへの道~転掌八卦門開祖・水野の達人養成ブログ」へ








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