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中国拳法(八卦掌)の練習に集中できる練習場所を探す方法

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中国拳法やその他の武術で戦うことができるようになるためには、基本動作の練習を毎日地道に行い、いざというときに必要な動作が無意識・反射的に出るようになるまでになることが求められます。

ブルース・リーやジャッキー・チェン、ジェット・リーなどの功夫スターの映画のおかげで、中国拳法の認知度は高い水準にあると言えるでしょう。しかしその反面、派手で躍動感あふれる動作が独り歩きし、実際の中国拳法の身体を作るような基礎の練習方法はほとんど知られていません。

空手や柔道などと同じく、中国拳法にも各門派ごとの独特の基本練習があるのですが、基本練習の動作が傍目に変わったものが多く、どうしても通行人等の好奇の目にさらされることになります。人からの視線は、こちらが相手の方を向いていなくとも、注目を浴びている修行者にはわかるものです。これでは練習に集中できません。よって、毎日の練習場所を確保することは強くなるために大きな影響を与えるのです。

練習場所の確保は、達人へのアプローチとしては直接関係ないように感じるかもしれません。しかし昔日の達人はすべからく毎日、己の生活圏のごく身近な場所で練習を積み重ねています。ほぼ毎日練習することは、達人になるための不可欠要件であり、練習場所を開拓しておくことは、毎日の練習をストレスなく積み重ねていくうえで大きな事前準備となるのです。

当ページでは、管理人の長年の練習経験から、どのような場所が練習場所として望ましいかについて紹介をしていきたいと考えています。

中国拳法の練習が「どこでもできる」とはならない理由

 中国拳法は、カンフー映画の影響で、日本国内では高い知名度を持っていると言えるでしょう。しかし「中国拳法」という名自体が知名度が高いだけで、実際の中身について知っている人はほとんどいません。太極拳や少林拳以外の門派名など、日本国内では全くといっていい程知られていないのが現状です。

 一部のゲームで、中国拳法を使うキャラクターが居て、彼らの存在のおかげで流派名が知られていることもあります。しかし現実の戦い方を再現しているものはほぼ存在しません。当然、平素に求められる門派ごとの練習の様子など一般人が知るはずもなく、中国拳法の各門派の独特の練習方法が、知らない人の目には奇異に映ります。それゆえに時に冷やかされ、時に警察に通報され、「どこでも練習できる」ことを難しくしているのです。

 そのあたりの事情をもう少し詳しく説明します。事情を知って、その対策を立てることにつなげましょう。毎日着実に練習を積み重ねていくための、第一歩となります。

柔道や空手にない独特の動き。映画の中の動きが人の興味を引く。

 中国拳法の動作は、私たちの日常生活の中でほぼ目にすることのない動作であると言えます。それは、我が身を守り、もしくは敵を殺傷するための動作であるため、私たちの日常の中に存在しないのです。

 公園等で運動している人達の動作は、走る・跳ぶ・ボールを蹴るなどの、おなじみの動作ですが、中国拳法の動作は全く違います。激しく跳んだり、ある方向に突き(パンチ)をしたと思ったら、全く違う方向に向きを変え蹴り(キック)をし、体当たりや肘打ちをします。

 突きや蹴りがメインの練習であるならば、それは空手や少林寺拳法の練習であると認識されるかもしれません。しかしそれ以外の動作(入り身・体当たり・掌打ちなど)を流れて行う様は、空手などとは少し趣を異にし、踊っていると誤解されたりもします。正直、日本では人と違ったことを、たった一人で行っていると、好奇の目の対象になる傾向があります。

 人が多い公園で、たった一人で練習する場合は、不特定多数の視線を受けることは必至です。その視線に耐えながら練習することは、心臓に毛でも生えてない限り難しい。人によっては「ジロジロ見るなんて」という怒りの気持ちすら湧いてしまうでしょう。そのような心の状態では、技を練ることに集中はできません。修行の年数を重ねれば重ねるほど、練習中の意識は研ぎ澄まされていきます。人目を気にする余計な感情は、技を練るうえでの大きな妨げとなります。

 よって、公園で練習する場合は、一般人のあまりいない早朝や夜に時間をずらす必要が出てきます。時間をずらすことのできない人は、必然的に人のいない場所で練習する選択に行き着きます。

中国拳法の基本の反復練習が、傍目に何をしてるか不明で、不審がられることがある

 中国拳法には、各門派ごとに必ずと言っていいほど、長時間かけて取り組む「最重要基本」というものが存在します。その「最重要基本」の特徴を、おおまかに挙げてみましょう。

  • 修行開始と同時に教えられる
  • 単純・単調な動作に見えるが、様々な注意点が存在するため難しい
  • 体力的にきついものが多い
  • 全修業期間を通じて取り組むものとされている
  • 一回の練習時に、長時間取り組むことを要求される
  • 日常生活中によく見られる動作ではない

 「最重要基本」が、「突き」・「蹴り」のような、傍から見ていて武術・武道であると認識しやすい動作であればいいのですが(それでも不審がられることがある)、そうでないものが結構存在します。ある門派には、ひたすら歩く・ひたすら立つ・ひたすら腕を振る、といったものが存在し、そのような動作を独りもしくは多人数で長時間繰り返していると、一般の人には何をしているのか判断できず、怪しく見えてしまうです。

 私の修行する「八卦掌」では、円周上をひたすら歩く「走圏(そうけん)」という最重要基本があり、横から見ていると、とても中国拳法の練習をしているようには見えません。形意拳の源流と言われる心意六合拳には、中腰でひたすら鶏のように歩く練習「鶏行歩(けいこうほ)」があり、これもまた、中国拳法の練習には見えません。王向斎先生の創始した意拳には、特定の姿勢で立ち続ける「站椿(たんとう)」があり、傍から見るとただ立っているだけにしか見えません。

 中国や台湾では、公園などの公の場で、市民が太極拳等の武術の練習をすることは一般的であり、通行人らは日常にない動作を練習する人間に見慣れています(中国の公園では、様々な人が大道芸の練習や武器の演武など、いろんなことを楽しんでいる)。

武器(器械)を使った練習も多く、警察・施設管理者に警戒される

 中国拳法には、武器(器械)を使った練習が当たり前のように存在します。そして、武器を使った練習は、修行過程におけるかなり早い段階で取り組むことも多いのです。

 別の機会で触れますが、武器の練習をすることは、中国拳法の修行過程において非常に重要です。中国拳法の考える実戦には、正々堂々潔く一対一で、などという美学があまり存在しません。「勝利」よりも「生存」、「過程(どのように戦ったか)」よりも「結果(生存できたか・護ることができたか)」を重視します。

 生き残るために、武器や身の回りのものを当たり前に使います。携帯できる隠し武器も使います。それらのものは、当然平素より練習しておかなければ、極限の実戦では使うことなどできません。よって常日頃から、基本動作とともにこれらの武器を練習をしていくのです。

 武器の練習は実に目立ちます。修行者の中にはお気に入りの模造刀を振る人もいますが、そのような行為は一般人には大変目についてしまうものです。一般人には、模造刀は本物の刀にしか見えません。恐怖心や警戒心を与える確率は高く、通報されることにつながります。

 即座に警察が来て職務質問されてしまうことでしょう。場合によっては武器を没収されてしまいます。あるいは、武器を使用した練習自体の自粛を要求されるでしょう。

 中国や台湾では、このようなリアルな道具を使って練習するのも一般的ですが、日本では考えられません。日本の武道は、ほとんどが室内で練習します。素手の練習ですら公園で練習する習慣はありません。武器の練習頻度が高い修行形態と武術を取り巻く文化の違いが、中国拳法の練習場所の確保を難しくしています。

 練習場所の確保が難しい理由が分かったうえで、中国拳法の練習場所としてふさわしい条件と具体的候補地を以下で挙げていきたいと思います。練習場所開拓の参考としてください。

中国拳法の練習場所としてふさわしい条件と具体的候補地

中国拳法の練習場所として成り立つための条件とは?

 中国拳法の練習場所として使える場所は、下の条件を満たしていることが望ましいでしょう。

  • 人の往来が少ない場所
  • 学生集団が滅多に来ない場所
  • 車が通らない場所
  • 地面が土や芝生である場所
  • やぶ蚊の少ない場所
  • 不良のたまり場でない場所

 ここで挙げた条件は、私や先生・先輩方の修行経験の中での苦い体験がもとになっています。それぞれの条件が挙げられる理由を述べていきましょう。皆さんの練習場所選定の参考となれば幸いです。

人の往来が少ない場所

 練習場所として最も基本的な条件が、人の往来が少ない場所、という条件です。

 「人が全く来ない場所」というのは、山奥や無人島にでも行かないと不可能です。しかし人の往来が少ない場所であれば、探してみればいくつか見つかります。

 地元の人が散歩等で通り過ぎる程度の場所であれば、条件はクリアでしょう。ただ最初はそれでも珍しがられ、幾日が練習していると「何してるの?」なんて興味本位で声をかけられることもあるので、その時は誠実に余すところなく、拳法の練習をしていることを伝えておきましょう。できれば「お手数でなければ、ご近所のみなさんにも、アナウンスしておいてください」なんて言えると、最高です。

学生集団が滅多に来ない場所

 学生の通学路や、学生が大挙して訪れる可能性のある場所は、避けておいた方が無難です。練習をしていて、最も不快に感じる出来事で一番多い原因が、「集団の学生からの嘲笑・暴言」だからです。特に中学生・高校生の嘲笑行為は悪質で、残念ながら、こちらが叱っても聞く耳などもちません。

 大きな運動競技施設のある公園周辺の道路では、学生が集団で訪れることもあり、そのような時に一人や塾生らと練習していると、十中八九嘲笑の対象にされてしまいます。

 普通の真面目そうな学生であっても、そのような残念な行為はするのです。一部の学生がするのではありません。今まで自分や塾生に対し集団で暴言を吐いてきた学生集団の引率教師に、苦情を言ったこともありましたが、「子供のすることだから」という回答が多く、呆れかえったものです。

 苦情も言うことができない。当事者の学生を叱ることもできない。ただ我慢するだけであり、遊びでやってるのではないこちらとしては、実に腹立たしいものです。よって、自然と学生が来る場所では練習をしないようになりました。

車が通らない場所

 車が頻繁に行き来する場所は、安全性の観点から、当然に練習場所としてふさわしくありません。

 しかし、道幅が広くて、かつ車の往来が滅多にないような場所は、練習場所として成り立つことがあります。車を停め、その前後で練習をすれば、立派な練習場所となるでしょう。しかし、車には十分気を付け、通行の妨げにならないように注意してください(下図参照)。

『道幅が広くて、かつ車の往来が滅多にないような場所で練習する方法』の画像

地面が土や芝生である場所

『地面が土や芝生である場所』の画像

 太極拳の練習にしろその他の拳法の練習にしろ、地面がアスファルトやコンクリートのような固い場所では、身体にかかる負担が大きくなります。

 以前ある拳法漫画の影響で、震脚(しんきゃく。地面を激しく踏みつける動作)が流行っていたようですが、そのような動作をコンクリートの上で行おうものならば、早晩ヒザなどを痛めてしまうでしょう。このような練功法がある拳法に取り組んでいる方は、要注意です。

 様々な地面において練習し、どの地面においても普段の動作ができることが望ましいでしょう。私も、普段は土の上で練習し、雨や仕事の都合で場所を変えなければならない場合は、都合のいい場所の地面で練習しています。

やぶ蚊の少ない場所

『不良少年(青年)のたまり場』の画像

 公園・草がたくさん生えている場所・普段人がよく居る場所には、暖かくなるとやぶ蚊が発生します。站椿(たんとう)のような、ほぼ動きのない練習をする場合は、このような場所では集中できません。

 実はこのやぶ蚊問題は、切実なのです。夏になると、虫よけスプレーを用意しないといけません。私は、やぶ蚊の少ない場所で、水で薄めたハッカ油(左写真)を肌にスプレーして防虫対策をしていました。しかしそれにも限界があります。

 どうしてもこのような場所でしか練習できない場合は、じっとしている練習(站椿や気功など)は家の中で済ませ、動き回る練習だけをこの場所で行うようにします。私も夏場は、八卦掌の下盤走圏と中盤走圏などのゆっくりと動く練習は家の中で済ませ、それ以後の上盤高速走圏などの激しく動く練習を外でするように工夫しています。ハッカ油は、汗であっという間に流れてしまうからです。

不良少年(青年)のたまり場でない場所

『不良少年(青年)のたまり場』の画像

 練習場所として、不良少年(青年)のたまり場は最悪です。中国拳法のような、練習が一風変わったものには、確実に何らかのアクションを起こしてきます。

 私自身、不良少年らに絡まれた経験は数えきれないくらいあります。にらまれる、からかわれる、応戦してにらみ合うなど、内容も様々です。

 そのような輩には、近づかない方が一番いいです。よく、不良あたりを拳法でやっつけるシーンが、映画やドラマでカッコよく描かれますが、多人数戦は極めてこちらに不利であり、命の危険にさらされます。また、このような輩を万にひとつ拳法で倒すことができたとしても何らのメリットもありません。

 彼らの溜まりそうな場所は、夜の公園や、管理されていない公園などです。基本的に彼らは、人の全く来ない場所には滅多に来ません。自らの派手派手しい行為(それを彼らは誇りに思っている)を不特定多数の人に見せつけ目立ちたいと思っている連中ゆえに、人の来ない場所には行く意味がないからです。

 彼らが来るような場所には、コンビニあたりで買ったゴミが多く散乱し、スプレーかなんかで描かれた意味不明なアルファベット系の落書き(ウォールアート)が無軌道に描かれたりしています。そのような場所では、夜間は練習しない方がいいでしょう。命にかかわります。

中国拳法の練習場所・・・具体的な候補地

河川敷

 キング・オブ・練習場所です。皆さんの家の周りにもある、定番の練習場所候補地です。

 河川敷は人の滅多に来ない場所、とは言い切れませんが、来る人間は、散歩している地元住民がほとんどです。たまに営業途中の会社員などが来ることもありますが、彼らから練習の邪魔をされた経験はありません。

 地面も、背丈の低い草であったり土であったりして、身体に対する負担も少ないでしょう。少々荒れている状態でもありますが、歩き回る練習でもない限り、問題は少ないでしょう。

 欠点は、大雨による増水の可能性があることです。私のメインの練習場所は河川敷ですが、そこは大雨になると増水・浸水し、地面が荒れてしまいます。そのようなときは、そこで練習するのは避けます。

管理された公園(早朝)

 管理されている公園は、練習場所としては望ましい場所でしょう。トイレや水飲み場があるため安心でもあります。しかし、それがために昼間(8時~)からは多くの人が訪れます。特に土日は不特定多数の人が来るため、人目があり、練習はしにくいでしょう。

 よって、管理された公園では、早朝や夜が練習タイムとなります。夜は人も意外と多いため、人の滅多にいない早朝がおススメです。管理された公園では、早朝4時くらいからウォーキングしに住民の皆さまも来られ、安心です。

市境の車通りの少ない道路幅の広い道路

 市と市の境あたりは、調整区域となっており住宅が少なく田畑が多く、人も少ない特徴があります。そのような場所で道幅の広い場所があるならば、そこに車を停めて練習するのもいいでしょう。

 田園地帯では、農繁期になると多くの人が作業で来るため、邪魔にならないように注意します。

家の庭

 拳法の練習が、場所をほとんど取らないものであるならば、家の庭や部屋の中も有力な練習場所となります。站椿の練習がメインの意拳や、場所を取らない手技の練習が多い詠春拳などは、家でも練習ができる代表的拳法です。

 あなたの取り組む拳法の練習方法を一工夫して、家の中でも練習できるようにすると、より一層練習場所の選択肢が増えるでしょう。

毎日の練習場所を確保するための知恵

 上記の条件をすべて満たすような場所を探すのは至難の業ですが、それに近い場所・季節や時期で条件を満たす場所をいくつか候補として持っておくことはできます。そして、いくつかそのような場所を持っておくことで、当日にベストな場所を選ぶことができます。

 例えば、「やぶ蚊の少ない場所」という条件は、11月~5月初旬までは、考えなくていいでしょう。他の条件をクリアしているが、やぶ蚊が多いことがネックな場所では、やぶ蚊が発生していない時期においては、条件をすべて満たしていることになります。「学生集団が滅多に来ない場所」という条件だけを満たしていない場所は、土日や夏休み・春休み・冬休み以外の、学生が集団で移動することがない時にはすべての条件を満たす場所だと言えます。

 土日は公園周辺は人や学生集団が多いから、田園地帯の道路幅が広い場所で練習。平日は公園周辺に人が少ないから、公園の一角で朝早くに練習・・。雨が降った時は、公園に人が少ないから、大きな木の下で雨を避けつつ練習・・・。

 このように、自分の中で、天候・時間・時期・曜日によって、決まった選択パターンを決めておくのですね。そうすることで、当日に「どこで練習した方がよいか?」などと、余分な悩みを持つことがなくなるのです。

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