老八掌「背身掌」動作解説
特徴~多種多様な技をみっちりと詰め込んだ総合型。双撞掌に至っては、危険技ながら打つタイミングやアプローチ方法まで示している
背身掌は、数多くのパターンで構成された型です。
他の老八掌が、各パートごとに分かれていてもそれぞれがある程度の関連性を持っているのに対し、背身掌のパートには、あまり関連性がありません
背身掌には、大きく3つのパートがあります。まず一つ目は、相手の手を引いて態勢を崩し、双撞掌~白猿托桃式~左右按掌とつなげるパート。
二つ目は、馬歩の姿勢のまま円の中心を見つつ左右の手を外から内へ螺旋をかけながら払う動作を左右2回づつ行うパート。
そして三つ目が、撩陰掌~進歩穿掌~推磨式へ至るパートです。
時間をかけて背身掌を練習し続ければ、各パートごとをうまく連環させることも可能ですが、初学のうちは、それぞれをパートをじっくり確実に分けて、着実に動作を覚えていきます。
練習の際のポイント
推磨掌~双撞掌~白猿托桃式~左右按掌
推磨掌~双撞掌
双撞掌に入る前に行う、推磨掌をより一層ねじらせきってから反動として一気に戻す動作は、それ自体だけで相手を引き倒し得る実戦技となっています。しかしここでは、より一層双撞掌を相手にかけやすくするための準備動作として取り入れられいます。
この構成は、双撞掌を決めやすくするため、先人から贈られたヒントだととらえていきましょう。双撞掌は、まともに決まると相手に大きなダメージを与える技ですが、基本的に前動作が大きくタイミングも難しく、双撞掌の動作だけで相手の脇腹に掌を打ち付けることは至難の業です。
推磨掌から引き回す動作があればこそ、双撞掌のような大技がかかりやすくなります。これは双撞掌を賭ける場合だけに限らず、他の技をかける際のヒントにもなるでしょう。てのひらで相手の手首や腕などをつかんで相手の態勢を崩すことは、八卦掌の実戦攻防において地味ながら大きな意味を持っているのです(八卦掌が掌で戦う大きな理由ともなっている)。
双撞掌を打つ際は、ひざを曲げ重心を両脚にすえ、相手の下方からわき腹を狙います。胸をくぼませ(含胸・がんきょう)、肘と肩を下げていからせずして下げ(沈肩墜肘・ちんけんついちゅう)、両腕の前腕部はピタッとあわせ、打つ際、両目は両掌を追います。
白猿托桃式~左右按掌
双撞掌を打ったらすかさず、くっつけている両掌をそのまま上に挙げていきます(白猿托桃式)。イメージとしては、下方から相手のあごを合わせている両掌でアッパー攻撃する感じです。
白猿托桃式を決めたらすかさず、円の内側の足を扣歩して転身、身体の全面を円の中心に向けて腰をおろしつつ、両掌を左右に広げます(左右按掌)。
左右按掌を決めた際の姿勢は、上体を左右どちらかに傾けないことです。左右に両掌を広げて打つ、といっても、腰を下げつつ両掌を内から外へ広げる、という表現の方がいいでしょう。
内から外へ広げる際の展開力で相手に攻撃を加えるのです。打つ場所は、相手の腰と足の付け根部分を、上から下へ押す感じで打ちます。
「馬歩の状態で、手を外から内へ螺旋をかけながら半円を描き寄せる動作を左右2回づつ行う動作」
手を左右から半円を描いて寄せる際は、しっかりと腕に螺旋負荷をかけている状態を維持させながら寄せてきます。
そうすることで、意識の張りと螺旋の張りが伴った強い寄せ腕ができあがり、敵の強い攻撃もしっかりと横に払う事ができるようになるのです。
寄せてくる際は、しっかりと両目で腕の動きを見つめながら寄せてきます。
撩陰掌~進歩穿掌
左右それぞれ2回行ったら、最後の寄せ腕はそのまま上から下へ半円を描きながら下へおろしてまた上にあげます。あげた腕の肘に、もう一方の手を添えます。
前足を一歩踏み出し、すかさず後方の足をさらに一歩踏み出して、進歩穿掌。そして推磨式へとつなげます。
撩陰掌の際は、側面から来る敵にけん制を与えるイメージで。そして、けん制によって動きが止まった敵にすかさず攻撃を加えるつもりで、一気に穿掌を放ちましょう。
老八掌「背身掌」の用法解説
双撞掌・実戦技法
双撞掌を打つ際は、背身掌のように、相手の腕や手首をつかんで態勢を崩してから入ると、うまく決まります。
双撞掌は名前の通り、両腕・両掌を合わせて脇腹や腹部を打つ技ですが、両手をうまくそろえられない場合もあります(むしろそろえられない方のが多い)。敵をつかんで崩している場合、崩しに使った手はいまだ敵の手をつかんでいる場合も多いため、両手をそろえられないのです。
その場合は、臨機応変に片手だけ双撞掌の形をもって打ちます。掌を立てて打つのではなく、掌を寝かせて打つのです。中段(腹部周辺)を打つ場合は、掌を寝かせて打った方が打ちやすいのです。
白猿托桃式・実戦技法
白猿托桃式は、相手の腹部を双撞掌で打った後に繰り出す設定で、背身掌で組み込まれています。
この設定の状態で打ちますと、実に接近した状態で打つ技ということになります。実際、白猿托桃式を成功させるには、相手と接近(ほぼ密着)した状態で一気に突きあげるように打つことでしか、なかなか成功させることが出来ません。型の編集者は、そのこと知って、双撞掌を打った直後に白猿托桃式を組み込んだ可能性があります。
よって白猿托桃式で敵のあごや上体を攻撃する場合は、接近短打の間合いからより一層密着し、そこで一気に打ちあげるようにします。
その場合、敵のあご付近にキレイに決まらなくても問題ありません。それだけ密着した状態であれば、相手のどこかしらの部分に当たるからです。
左右按掌・実戦技法
左右按掌で打つ箇所は、腰と脚部分の付け根あたりです。この付近を、上から押すようにして打ちます。
そうしますと、相手は割と簡単に態勢を崩され、斜め下方向へと崩れていくことになります。
打つ際は、左右に両腕を広げる際の「開く力」を敵に伝える感じで打っていきます。
「馬歩の状態で、手を外から内へ螺旋をかけながら半円を描き寄せる動作を左右2回づつ行う動作」・実戦技法
手を外から顔前に半円を描きながら螺旋をかけて寄せる動作は、そのまま、敵の攻撃を外から内に腕をねじりつつさばく防御技になります。
このように防御した際は、受けた手を戻さず、そのまま相手の手をつかんだり、受けた場所から相手の手の上をスライドさせて顔を手刀で不意打ちしたりします。
老八掌「背身掌」の滑歩練習
滑歩練習においては、『推磨掌~双撞掌~白猿托桃式~左右按掌』の流れと、『「馬歩の状態で、手を外から内へ螺旋をかけながら半円を描き寄せる動作を左右2回づつ行う動作」~撩陰掌~進歩穿掌』の、大きな二つの動作の流れがあります。
初学のうちは、それぞれの流れが滑らかに行うことができるように意識して練習しましょう。各パートごとが終わるまでは、一気に行う事です。
実戦八卦掌をより深く学んでみたい方へ。代表・水野より。

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